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欠落した満月と冷酷な太陽  作者: 武臣 賢
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第四十四話

 ボクはお酒は少ししか飲まない、もちろん法律で定められている訳でもないから、高等学院生がお酒を飲んで悪いとは言われない。食事の前などは食前酒が出されるし、晩餐会などでもお酒は振る舞われる。

 しかし、なんというか、ボクは酔っぱらいが嫌いなのだ。それでも、ギルドの酒場にたむろしている連中に少しお酒を奢ってやると、いろいろと噂を話してくれる。真偽のほどは定かではないので、その判断はこちらに委ねられるわけだが……。


「ねえ、スミタマ、もっとこう、胸が踊るような大冒険って感じの依頼はないのかしら? それだったら私、もっともっと張り切っちゃうんだけどな」


 ユリスの認識にはちょっと誤解も混じっているようだ。


「たしかにそんな依頼があれば即受けるんだけれど、総長も言っていたようにあそこにはBランクの冒険者までしかいないんだ」


 だから、とボクは説明を続けた。


「世間の認識では、Bランク相当までしかあそこではこなせないと思われているから、依頼が集まらないんだよ。ボクたちSランクはまだ認知されていないんだ。なので細かな依頼を受けつつ、噂を拾い、さらに噂を広めてもらっている途中という訳さ」


 ふうん、いろいろと大変なのね。

 ユリスはまるで他人事だが、他人事でいてくれたほうが面倒は少なそうだとボクは悟った。


 その依頼は唐突だった。

 オルガスがユリスの顔を見に屋敷に立ち寄った時に、近いうちに、大学院が冒険者ギルドへ依頼を出すが、Aランクのものなのでぜひ受けてほしいと耳打ちされたのだ、ユリスには聞こえないほどの小声で。

 翌日、学院の帰りがけに掲示板を覗いてみると、確かにAランクの依頼が掲示してあった。ただし定員は一人。となるとボクだけしか受けられない。実質名指しに近い。そこまでオルガスは教えてはくれなかったが、知っていてそうしたのか、そもそも知らなかったのかは、ボクには分からない。

 早速に、その依頼の掲示を剥ぎ取ると、件のアバズレ受付嬢の元に提出し、正式な依頼状を受け取った。期限は二週間とある。ざっくりとしたところは掲示板に張り出された案内に書かれてあったが、洞窟内調査のようだ。詳細は手元にある依頼状を見ないとわからない。別に今夜中に出発するわけではないので、とりあえずボクは依頼状を持ち帰った。


 屋敷に戻ると、ユリスは早々にお湯を浴び、さっぱりとした様子だった。外出も来客も予定がないため、服ももうすでにパジャマなのはいかがかと思うが、それすら着ずに下着で寝ているボクに苦情を言える筋合いはない。

 そのユリスにひらひらと依頼状を振って見せた。


「Aランクの依頼を拾ってきた。早速に明日にでも行ってみようかと思っている。ただし……」


 定員は一人なので、ボクだけで行ってくる。

 学院も休まないといけないからね。ユリスは今回はお留守番だよ。

 ユリスも一緒になって依頼の詳細を確認する。


「なるほどね、最近見つかった洞窟の内部調査ってわけね。遺跡などがあれば、それもある程度調査をして報告をしなくちゃならないのね。いいな、スミタマは冒険旅行に行くのか」


 ユリスは残念そうだ。

 洞窟の近くには村や街はなく、入り口近くに屯営が設けてある。兵士が詰めているが、一般人が内部に入るのを防止するためと、モンスターが内部にいる可能性が濃厚であるため、万が一の状況に備えているためでもあるらしい。

 その屯営で宿泊しつつ、内部の状況を可能な限り詳細に報告する、というのが今回の依頼の内容だ。本来であれば大学院からも調査員が同行するのだろうが、まだ中に何があるかも分からない現状では、かえって足手まといになる。一般の兵士はもちろん、冒険者でもかなりの危険が伴う依頼だ。

 ユリスも自腹で付いて来る勢いだったが、屯営での泊まりもあるし、学院を休まななければならないからダメだときつく釘を刺した。行方不明になった猫を探すのとは訳が違うのだ。もし内部に何かあれば、次の調査もあるはずだから、そのときは二人用の依頼にしてもらって、一緒に調査にいけばいいのだ。

 ボクは、ジュンシに、冒険者ギルドからの依頼で、しばらく屋敷を空けると伝えると、着替えなどの準備のお願いをした。ちょっとしたハイキング程度になるかもしれないけれど、一応洞窟調査なので、そのつもりで服は見繕ってほしいとも付け加えた。

 そして、ユリスには移動用の馬を一頭貸してほしいとお願いする。性格はおとなしい馬ほどありがたい、とも。

 

 翌朝、まずは朝一番で学院に赴き、二週間の休学手続きを取った。別に隠す必要もなかったため、冒険者ギルドからの依頼で、洞窟の調査に行くと告げた。ボクがライデル杯の報酬で冒険者ギルドのSランクをもらった話しは、学院でも知れ渡っていて、しばしば依頼をこなしているのも知られている。普段、学院を休まず、成績も優秀で、単位を落とす心配もない。しかも、今回の依頼は、大学院からのものでもあるので、休学の申請は、そう問題なく認められた。

 いよいよ大掛かりな依頼が舞い込んだので少し興奮もしているが、時間も比較的ゆったりと組まれているので、そう急ぐ必要はない。

 執事長などは、馬車を仕立てましょうか、とも言ってくれたけれど大げさになるのは避けたいからと、やんわり断って、ボクは単独行動を選んだ。

 洞窟の場所は西に二日から三日ほど街道を進み、北に入って行く。街道は比較的安全でもあるし、途中休憩できる村もある。なにより、官営の駅舎があり、士爵でありSランク冒険者でもあるボクなら無条件で利用できる。

 往復に一週間弱かかるとして、内部の調査には五日から六日は掛けられる計算を立て、ボクは馬に揺られて出発した。ちなみにジュンシが用意してくれたのは、厚手の綿でできたカーゴパンツに、同じ素材でできたジャケット、そして頑丈そうなブーツだ。これならば洞窟内でも不自由なく動けるはずだ。

【拙い文章ですが、最後までお読みいただきありがとうございます。ちょっと堅めだけど、こういう小説嫌いじゃない、先がちょっとだけでも気になっちゃったという方、評価などを頂戴できればありがたいです。感想もお待ちしています。作品の参考にさせていただきます】

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