依頼
金髪エルフは淡々と説明を始めた。
この世界樹を中心とした一帯の森は、金髪エルフが大狼と呼んでいたあの狼の縄張りらしい。今俺たちが座ってキャンプもどきをしているのに魔物に襲われないのは、大狼が俺に見逃されたことにより、大狼が俺に攻撃するなと命令しているからじゃないかと言う。確かに金髪エルフを大狼から助けてやってからここにくるまで、一切獣に襲われなくなっている。今まで散々襲われていたのに。
そして金髪エルフは俺に頼みがあると言う。自分を世界樹のふもとまで連れて行って欲しいと言うのだ。俺が大狼に認められた?ので、俺と一緒なら世界樹のふもとまで襲われずに行けるだろうから、一緒に世界樹まで行って欲しいと言うのだ。その報酬として、街まで案内するし、街にスムーズに入れるように協力すると言ってきた。
「足んねえな。俺は別に困ってない。その程度の報酬じゃやってらんねえよ」
「水や食料もないのだろ?街に帰る分まで含めて、貴様の分も用意しよう」
「必要ねえな。やっぱり頼みは聞けない」
こいつから飯をもらうと言うことは、こいつの前で鎧を脱ぐと言うことだ。正直俺はまだまだ疑っている。
この鎧が国宝レベルと言うならば、俺が鎧を脱いだら俺から鎧を奪えば良いのだから。どんな用事であの天まで届きそうなほど馬鹿でかい世界樹まで行きたいか知らないが、国宝の鎧より価値はないだろう。であるならこの女の第一目的は、俺から鎧を奪うことと言うのが1番可能性が高い。現実には鎧の能力があるから奪えないとしても、攻撃される恐れはあるし、怪我しようものなら致命的なことになりかねない。
「そこをなんとか頼む」
「お前はここまで一人で来たんだろ?なら一人で行けば良いじゃねえか」
「……」
「ほかにツレがいたのか?」
「いや、私一人だ……」
「てことは、一人で何とか出来ると考えて、一人で来たんだろ?なら最後まで一人でやれよ。甘えんな」
「……」
金髪エルフは黙り込んだ。我ながらちょっとキツいことを言っていると言う自覚はある。だが俺は金髪エルフとの話で街の場所の予測もついた。世界樹の逆に進めば良いのだから。だから俺にはもう金髪エルフは本当に用無しだ、水も飯も必要ないし。
ん?どうやら金髪エルフは泣いてるみたいだな。馬鹿が、俺をマンガのチョロい主人公と一緒にするなよ?泣けば解決すると思ってるなら、世間の厳しさを教えてやる。
「……頼む。確かに私は見誤った。私一人で何とか出来ると驕った。だがどうしても世界樹に行かなければならないのだ」
「知るかよ、俺には関係ねえ。それに俺はお前の命を助けてやったんだぞ?まずそこに感謝しろよ」
「もちろん感謝している」
「言葉ではなんとでも言える」
「街に帰れば相応の謝礼を払うつもりだ」
「足りねえな」
「……、金貨1000枚払おう」
「足りねえんだよ」
「っ、1000枚ならば、城塞都市の一等地に豪邸が立つ金額だぞ?!」
「脱げ」
「……え?」
金髪エルフは呆けた。
「金なんて後からどうとでもなるし、いらねえよ。……お前も女だ、このくらいのことは予想ついてただろ?予想ついていたのにそれを口にしなかった。てことは絶対嫌だったってことだろ。脱げよ。俺に身体を差し出せ。そうしたら連れてってやる」
金髪エルフはポカンとした。なんだよ、こんなことも予想ついてなかったのか?
しかしどうするかな。もちろんヤリたいのはヤリたいが、この女の前で鎧を脱ぐのは嫌だな。あー、そこいらの木に両手両足をくくりつけて、立ったまま後ろから犯せば安全かもしれない。そうだ、それならいけるだろ。
「……男に二言はないな?」
「ああ、約束は守る」
すると金髪エルフはニヤリと笑い、無警戒にイソイソと自身の皮鎧を外し出した。
「なんだ、そんなことで良いのか。ははっ。こんな簡単なことで良いとは」
「…………おい」
鎧を地面に置き、ベルトを外してズボンを下ろした。
「私は命を助けられたんだぞ?当然この程度はするつもりだった。だが、まさか、この程度のことで願いを聞いてもらえるとは……。すまなかったな、気づかなくて」
「……」
既に下半身はパンツ一枚、上半身はシャツのボタンを外し、Tシャツの裾に手をかけ、上へと捲りあげて脱ぐ。
「おい、待て」
「遠慮するな。エルフだからそこまで抱き心地は良くないだろうが、貴様がこんな当たり前のことで願いを聞いてくれるなんて────」
「待てってえの!!!」
金髪エルフはTシャツを脱ぎ、ブラのホックを外したところだった。小ぶりだが、確かに女としての魅力を確実に持っている。奴は今白パンツ一丁だ。
金髪エルフは首をかしげ、
「ん?どうした?」
「なんだそりゃ!いやいや、おかしいだろ!」
そんな「超よゆうぅ」みたいに脱がれたら、損した気分になるじゃねぇか!
「何がおかしい?欲望の吐け口にしたいのだろ?わかってる。好きにして────」
「待てやこら!!」
金髪エルフは話しながらパンツも足首までずり下ろした。なるほど、下も金髪か。……薄いな。
「……、あー、いや、やっぱりだめだ」
すると金髪エルフは顔を顰めた。
「二言はないと言ったが?」
「…………、実は俺は縛られている女としかしない性癖だ。やるなら木に両手両足をくくるぞ」
金髪エルフは目を見開いたが、ふぅとため息をつき、
「なるほど、変態だったか。だがその程度ならば要望に答えよう」
と、自分のリュックから長いロープを取り出し始める。
「持ってんのかよ!」
「ロープは意外と色々使い道があるからな。当然持っている」
「……」
どうする。やるか?縛ってしまえば安全だろ。確かに金髪エルフの体は綺麗だ。胸は小ぶりだが無乳でもないし、スタイルが良いと確実に言える。
しかしこいつは両手両足を縛られることが怖くないのか?……、あっ、魔法か!!魔法があったか!!俺が鎧を脱いだら魔法で殺すつもりだ!!
あ、危ねえ……、罠にかかるところだった……。
「だめだ、やっぱりナシだ。魔法も使えないようにしろ」
「……どういう意味だ?、まさか私に襲われると思っているのか?」
「……」
「見ろ、私は丸腰だぞ?!裸なんだぞ?!」
金髪エルフは両手両足を大きく広げ、丸腰をアピールする。全裸で。
「……」
「馬鹿な。そこまで異常者か」
「俺は馬鹿じゃねえ!」
「第一、こんな場所で封魔の魔導具なんてあるわけない」
「ないならだめだ。約束はナシだ」
金髪エルフは明らかに怒りを表し、
「……、それは通用しないな。私は約束を果たすつもりだし、既に裸体を晒している。貴様がどういうつもりで言っているかわからないが、私をひん剥いた後にナシは通用するわけがない」
「……」
「ほら、早くしろ。縛りたいならそこの木に縛り付けろ」
「……」
金髪エルフはため息をついた。
「しないならしないでも良い。だが約束は果たせ。男ならな」
クソが、俺が出来ない状況を作ってマウント取りやがって。イラつくわ、クッソイラつくわ!
俺はクズだ、自覚もある。だが約束事だけは大事にしてきた。ここまで煽られて約束を放棄するのは俺が俺にイラついてしまう。
良いだろう、ここは折れてやる。だけど、魔法無効の魔導具が街にいけばあるんだな?絶対後で犯してやる。
「……わかった。世界樹には連れて行く」
「ふっ。まさか女も抱けないヘタレとは」
「……」
クソクソクソが!このクソ女が!!絶対、絶対犯してやるからな!!