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4、俺はもうモテる気がしない

 翌日、タンドレス宅で朝食を済ませた俺達は魔法の森保護管理局に向かった。観光目的が強い施設は、現代的で小綺麗な外観をしていた。


 サンティエは受付窓口に向かう。数名の受付員が横並びしてる中で、彼は焦げ茶色の三編み女性がいる方に直行した。


「ルーチェ、おはよう。今日は朝からバイトなんだね」


 サンティエの声は非常に明るかった。


「ええ、そうよ。

 サンティエは、確かリーダーと朝から打ち合わせよね」


 ルーチェはニコッと俺の方にも笑顔を向けた。

 ほんのり焼けた健康的な肌に、潤んだ大きな焦げ茶色の瞳。瞬きする度に豊かな睫毛が動く。


「小会議室に案内するわ」

 ルーチェは窓口カウンターから出てきて俺達を別の場所まで連れて行った。


 サンティエはルーチェと横並びで歩き雑談している。

 ベージュ色のキュロットスカートを履いている彼女の膝裏をジーッと見ながら、俺は黙って会話を聞いていた。

 2人は幼なじみで、お隣さん同士らしい。赤いドアの家が彼女の自宅のようだ。彼女は大学卒業したら魔法の森保護管理員になることが決まっていて、今は研修を兼ねたアルバイトをしてるそうだ。

 サンティエの態度はバレバレで笑いを堪えるのが大変だった。エリート美青年で絶対モテるはずなのに、都会のキャンパスガールじゃなくて、地元の幼なじみが本命なのか。


 質素な内装の部屋に入り、俺達は着席して待つ。ルーチェは会釈して受付に戻っていった。その様子をサンティエが寂しそうな目で見ていた。


「仕方ないだろ。あの子はまだバイトなんだから打ち合わせには参加出来ないさ」


「わ、分かってますよ! 当たり前です!」


 サンティエは俺の言わんとしていることを察したらしく、慌てて返した。


「……ドーファンさんて、割と鋭い方ですか?」


「まぁ人並みかな。これでもお前くらいの年齢の頃には、付き合ってた女もいたし」


「……相手が物凄く鈍いタイプだと、どうしたら良いんでしょうね?」


「さっきのルーチェって子か? 確かにお前からのアプローチを天然スルーしてたな。

 お前は懸命に合格祝いを誘ってたのに、あの子は悪気無く家族ぐるみとしか考えていなかった」


 サンティエはガクンと頭を長机に落とした。俺は慰めの意で彼の背中をポンポンと叩いた。

 甘酸っぱい感じが微笑ましかった。前の彼女と別れて3年は経とうとしている俺にはもう無縁のヤツだ。


■■■■■


 しばらくして壮年の黒人男性が入室した。保護管理員の制服であるベージュ色でポケットが沢山ついたジャケットとズボンを履いている。つばの広いベージュ色の帽子を取り、俺達に挨拶した。


「やぁ、サンティエ。今回は協力感謝するよ」


「こちらこそよろしくお願いします。

 彼は武器防具鍛冶師兼冒険者のドーファン・エストラゴンさんです」


「はじめまして、ギドンです。フロンティエールの魔法の森保護管理員のリーダーを務めています」


 ギドン氏はサンティエよりも更に背が高かった。ふんわり膨らんだ髪の毛に灰色が混ざっている。


「早速だが始めよう。未確認地点探索についてだが……」


「え!? 素材収集じゃないんですか?」


 俺の反応を見て、ギドン氏は不思議そうな顔をする。サンティエがサッと解説し始めた。


「そうだよ。ここの魔法の森の最後の未確認地点に棲息していると言われている一角モグラを捕獲するんだ。保護管理員は探索、僕らは収集を同時にやるんだよ」


「でも、いくら保護管理員同伴でも、魔法の森未確認地点に入って良いのかよ?」


「その点はご心配なく。むしろ我々が超危険なエリアに立ち入る際の安全対策として、サンティエに協力を願っているのですよ」


 ギドン氏の言葉を聞き、俺は耳を疑った。しかし深呼吸して考え直す。サンティエが規格外な魔法使いであろうことは納得しているからだ。


「サンティエは子どもの頃から定期的に魔法の森(ここ)で魔法トレーニングをしている。我々は彼の実力を知っています。ずっと前からお願いしていたのですが、学業優先ということで了承してもらえなかったのですよ」


「なるほどね……」

 俺は苦笑いするしかなかった。ブルードラゴンもあながち現実的に思えてきた。


■■■■■


 打ち合わせは順調に進んだ。翌日朝出発が決まり、俺達は昼前に管理局を出た。サンティエが仮申請していたとはいえ、簡素化されていてストレスが無い。悔しいが魔法の森保護管理のシステムは優秀だ。


 かつては世界中で盛んだった冒険者ギルドは時代と共に少しずつ衰退していった。エテルネルもその一例だ。国が公務員として魔法の森を保護管理する専門職を作ったことで、冒険者ギルドが管轄していた魔法の森が国管理となった。その為、これまで国内クエスト扱いだった魔法の森案件が保護管理局直行となり、国内クエストはほぼ消滅した。現在は、国外クエストをギルドが必死に集めて冒険者達に提供している状態だ。

 ユルティムズのようにほぼ冒険だけで食っていけるだけのパーティーはエテルネルでは非常に珍しくなった。大半が趣味や副業程度でランクの低いクエストばかりが消費されている。

 冒険者にとって最悪の事態の言えるが、国が適切に魔法の森とその中の動植物を管理するようになったことで、貴重な魔法素材や観光資源の獲得に繋がった。隣の敵国ヴィータとの戦争を続けながらも、経済が安定していたのは、保護管理局の存在が大きい。


 未確認地点探索&一角モグラ狩りに参加するメンバーは4人。内訳は俺とサンティエ、保護管理員のリーダーギドンとオタリーという女性保護管理員だった。


 俺はクエスト参加時と同じ格好で挑んだ。胸元から膝まで覆うエプロン・両肘下を覆うカバーと手袋。すべて特殊な魔法加工が施された革製だ。リュックを背負いリュック上部には愛用の大槌を乗せている。一応戦闘時の武器も兼任している。腰まである長い髪は上手い具合に槌と一緒にリュック上部に乗せたりかけたりする。

 邪魔なんだが、長髪はエストラゴン一族の習慣みたいなもので、俺も扱いは慣れたものになった。


 ギドンとオタリーは保護管理員の制服に帽子と俺よりもデカいリュックを背負っている。制服と帽子は特殊加工されていて下手な防具よりも頑丈と聞く。


 そしてサンティエは丸首の長袖シャツの上に尻が隠れる丈の袖無しチュニックを着ている。チュニックの上からベルトをつけており、ベルトポーチ以外の荷物は持っていない。足元は裾を入れ込んだハイキングブーツだが、観光客の散策と変わらない。俺は思わず口出しした。


「だって動きにくいと困るから。動きやすい防具を作ってくださいね、ドーファンさん」

と返されてしまった。


 魔法の森は「森」と称しているだけで、実際の地形は様々である。俺達は二山程越えて下山していった。夕方になり、ギドンが適当な場所を見つけ、キャンプの支度を始めた。


 ユルティムズにいた頃は、寝床と食事の準備は俺の仕事だった。俺は戦闘タイプではない。クエスト参加はメンバーに代わって細々とした雑務を請け負うことが条件だった。しかし、今回の俺達はお客様みたいなもので、移動以外のことは全て保護管理員の2人がやってくれた。

 俺は焚き火を見つめながら、身体を休ませられることに感動していた。


「明日の天候を考えても、この調子なら明日には目的地に到着するでしょう。

 一角モグラ狩りは日没が一番のチャンスです。頑張ってくださいね」


 ギドンがデザート用の焼きマシュマロを俺達に配りながら言った。

【お読みくださりありがとうございます】


ブクマ・いいネ→つける・外すはいつでもどうぞ。

☆マーク→加点・減点・変更・取消、いつでもご自由にどうぞ。


もちろんどちらもスルー可です。読んでもらえただけで物凄く感謝です(*´ω`*)これからも頑張ります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 好きなのに家族・幼なじみ以上には思ってもらえないのは悲しいですな。 鈍いから、もっとストレートにアタックしなくちゃならんのかも。
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