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忘れていた記憶、同窓会の誘い

「なんで忘れていたんだ?」


 休日の朝、俺はベッドに横たわったまま呻くように呟いた。そのまま手だけを伸ばしてサイドテーブルの葉書を取る。


 同窓会の案内状。夢の原因は恐らくこれだ。


 成人式の時に行われるはずだった同窓会は昨今の事情により延び延びとなり、やっとできそうだと改めて誘いがきたのが昨日のこと。すでに社会人一年目になっていた。


 大学進学を機に地元を離れてそのまま就職したせいで、実家にはもう随分と帰っていない。帰らなかったことに特に理由はない。強いて言うならこちらでの生活が忙しく楽しかったから。それに最近は流行りの感染症のせいもあって迂闊に帰省もできない世の中だったし。


 でも、それは俺の思い違いだったのか? 無意識に帰ることを避けていた?


 もう一度手を伸ばし、葉書を置いてスマートフォンを取る。小学生の頃から続いている数少ない友人に電話する。


「なぁ、同窓会の案内、きた?」

「きたきた。やっとできるな。お前も参加するだろ? さすがにお盆休みなら世の中も落ち着いてるだろうよ」

 脳天気な友人の声からは単純に同窓会ができることを喜ぶ様子しかうかがえない。俺は思い切ってたずねる。


「なぁ、学校に桜の木あったよな?」

「……桜? あったか?」

「校庭の片隅のプールの裏手にあっただろ。でっかい桜の木」

「そう言われればあったような。なかったような。ってか、それがどうした?」

「なぁ、小学生の時、そこに俺たち何か埋めたよな?」

「……!」

 電話の向こうで友人が息を飲む音が聞こえた。


「埋めたよな?」

「知らねぇよ!」

「埋めたよ。担任の先生が秘密だって」

「何言ってんだよ。桜の木だっけ? ねぇよ、そんなもの。お前、朝から寝ぼけてるんじゃねぇの?」

「そんなわけない!」

「とにかく俺は知らなねぇから! あっ、これから彼女くるんだ! 切るぞ! お前も変なこと言ってないで同窓会で彼女でも作れよ!」

「あっ! おい!」

 呼び止める俺の声を無視して電話は一方的に切れた。一瞬かけ直そうかと思ったが、やめた。恐らくでないだろう。

 電話を掛ける前は半信半疑だった夢の内容が、友人の様子によって急に現実味を帯びてくる。


「やっぱり本当……なのかよ」


 俺の掠れた呟きは一人暮らしの狭いアパートに空しく響くだけだった。

かつて桜の下に埋めたものは何だったのでしょう?


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同じタイトルで全く違うテイストの作品も書いています。こちらも短編なのでぜひ!
「満開の桜の下には死体が埋まっている」
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