近くて遠いあの人は
「席後ろだね」
新学期が始まり、小学校高学年。
僕は新しいクラス環境に不安や期待感でそわそわしていた。
前の席は、友達が多いやんちゃな男子。隣の席は、絵が上手だが少し身だしなみが汚い女の子。どの方向を見ても今まで仲良いと呼べる人は居なかった。
まぁ,誕生日を基準に出席番号で座っていたので仲良い人が近いというのはあまりなかったかもしれないが。
そんな時、彼女が声をかけてきたのである。
「誕生日1日違いだよね。海未っていうの。よろしく」
こちらこそ。と握手を返した。どちらかといえば僕は友達が少なかったので彼女から声をかけてくれたのは純粋に嬉しかった。
彼女は色んなことを教えてくれた。
知らないこと全て全てを。
彼女は僕のはじめてだった。
気づいたら僕はおかしくなっていた。彼女が居ないとどこか苦しくなるのだ。はじめは気のせいだと思っていた。
海未が誰かと話すのを見るたび、他の人と遊ぶ約束をしているたび、家族の話をしているたび...その黒い渦は
治まるを知らずどんどん大きくなっていく。
しばらくして分かった。この気持ちは、この苦しみは
「きっと 束縛心....あぁ。僕 嫉妬してるんだ。 」
その笑顔もそのダメなところも、その顔も、
あれも、これも。
僕以外に向けられるのが嫌だった。怖かった。
この気持ちに気づいたからには、これ以上彼女と
関わるべきではない。そう思った。
僕の気持ちが、僕の行動が君を邪魔してしまうのならば
壊してしまうのならば 僕はここから離れよう。
涙が出た。ずっとずっと。
走馬灯のように彼女との思い出が次々と流れ込んでくる
嗚呼、出来ることならもう一度名前を呼んで欲しい。
許されるのならもう1度だけ、手を繋ぎたい。
その笑顔をその仕草を....。
僕は君の汚い部分まで愛せるから。
私のことも見てほしい。愛して欲しい。必要として欲しい。
ただ振り向いてほしかった。
どれだけ願っても帰ることはない。
それ以降彼女が僕を見ることは二度となかった。
隣の教室で君を見た。
同じ名前だけど、顔も仕草も同じだけれど
君は君じゃなかった。
あの頃の海未を思い出そうとした。
だけれど、どれだけ探っても出てこなかった。
髪切ったんだね。
いい友達ができたんだね。
君は、笑っていた。
あの頃とは全く違う笑顔だった。
すこし変わってしまっていた。
僕の大好きだった友達はそこにはいた。
「さようなら。海未 もう僕とは関わらないで」
もう海未はどこにもいなかった。
こうして僕の隣には誰もいなくなった。
「席となりだね」
入学式、緊張する私を見て声をかけてくれた。
嗚呼、どれだけ幸せだろうか。
今はたくさんの人が僕を探してくれる
海未のことを私は決して忘れない。
忘れたくても忘れられない




