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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

その他短編

異世界=異界=ログ

 あなたは今からとある異界に異世界転生してもらいます。

 

 現地の環境ですが、気温は摂氏500℃、地面は常にマグニチュード7クラスで振動していています。

 

 もちろんその環境に耐えられる身体に作り替えてあげますよ。

 

 まず現地の知的生命体と会話できるように電波の送受信器官を脳に増設します。

 

 なに、痛みはありませんよ。

 

 ちょっとその過程で自己の存在が崩壊するような気分的なアップダウンがあるだけです。

 

 常人なら発狂するレベルのショックがありますが、大丈夫です。

 

 発狂してもすぐに元に戻します。

 

 発狂後に勝機に戻す過程を数年かけて五十三回繰り返すことで適応手術は完了しま……。

 

 え?

 

 そんなのいやですって?

 

 はぁ…………あなたもダメですか。

 

 仕方がない。適当なハーレム異世界に転生させてあげましょう。

 

 異界には向かわずに済みます。

 

 ああ、なるほど。そんなに嬉しいですか。

 

 矮小な精神ですね……いえ、失言でした。

 

 あなたは生前まったく異性から好意を受けることがありませんでしたからね。

 

 その不足をどうか十分埋め合わせてください……それでは、いってらっしゃい。

 

 ……ふう。どこかに自分から喜んで異界に出向いてくれる人はいないでしょうか。

 

 *****

 

 こんにちは。

 

 ふふ、何度目でしょうね。あなたは何度も異世界で転生しています。

 

 そう、何度も……。

 

 もう、500回はゆうに超えていますね。

 

 え? 異世界はもう飽きたって? チート能力、ハーレム、転生、生まれるたびにその世界の悪の実力者を倒し、国を立てては統治を行い、1000年の繁栄をもたらして旅に出る……。

 

 そんな一生をもう500回も。

 

 ふふ、素晴らしいですね。

 

 え? 異世界はもう飽きたからもっと別の場所に転生させてほしいって?

 

 あなたのような方を待っていました!

 

 それでは異界にご招待しましょう。新たな、あなたが見たこともないような転生先です。

 

 そこは……え?

 

 事前説明は要らないですって?

 

 そうですか……それはあまりオススメしませんが。

 

 なんですって? 今まで得た全てのチートを網羅して習得した最強の状態で送ってくれって?

 

 ……わかりました。

 

 私がオススメする身体で転生した方が良いかと思いますが……なるほど。

 

 今までの全ての能力があればどんな世界だろうと全く問題ない、と。

 

 そうですか。あなたがそう言うのなら……。

 

 すぐに送れですって? わかりました。

 

 後悔しても知りませんよ? さあ、おいきなさい。

 

 ……向こうに着いたようですね。

 

 あ、もう正気レベルが発狂段階にまで悪化してしまいました……。

 

 ふむ。

 

 完全不老不死のせいで自殺もできないようですね。

 

 魂の絶叫がここまで伝わってくるようです。

 

 おや、苦痛レベルが私の持っている尺度では計れないほどに振り切れています。

 

 恐ろしいですね。

 

 もう個体としての意識すら保てないようです。

 

 困りましたね。

 

 精神結合を解除しますか。もう何もしてあげられませんから。

 

 ……彼はこれから永遠に苦しむことになるようですね。

 

 おお、恐ろしい……。

 

 さて、今回もダメでしたね。次はもう少しちゃんと準備させてあげますか……。

 

 *****

 

 はじめまして。

 

 二十一世紀世界からようこそ。

 

 ここはハザマの世界。

 

 あらゆる世界に通じている場所……。

 

 ああ、あなたは現世では言語学者!

 

 なるほど。これは期待できそうです。

 

 では次の異界に行ってはもらえませんか? 

 

 まだコミュニケーションに成功した例がなく、とても困っているのです。

 

 まずは初級の単語をご紹介しましょう。

 

 

 

 あまけ

 な ゃ (嫉妬と後悔と憧れがないまぜになった感情を表す)

 おごじ

 

 ※発音方法:ひらがな8文字を同時に三つの口で発音しつつ、発音していない口の中の舌を十本絡ませつつ息を音速の半分の速度で吐き出す。

 

 

 

 え?

 

 耳が壊れるかと思ったって?

 

 そうですね。その身体では理解はおろか聞き取ることもできないでしょうね。

 

 身体改造手術をさせてください。

 

 なぁに、ちょっと口を5つ、舌を67本、聴覚神経を8兆倍に増やすだけですよ。

 

 どうしました? そんな声をあげて。

 

 え? 痛みはないのに死ぬほど苦しいって?

 

 仕方ありません。

 

 身体改造の痛みは魔法で消せるのですが、精神の変容の過程で生じる発狂レベルの気分のうねりだけはどうしようもありません。

 

 え? わかった、ですって?

 

 何がわかったんですか。

 

 ああ、たしかにこの精神の変容の過程で、人格が15に分裂した後、また統合されますが、その時の哲学的閃きはたしかに97%の確率で極めて長期の瞑想に陥ってしまう副作用がありますね……。

 

 ……ああ、黙ってしまいましたね。

 

 何も反応がありません。

 

 精神変容の過程で元々の精神では処理しきれない情報が流れ込んでしまったようです。

 

 この状態からコミュニケーション可能な状態に戻るまでおおよそ80那由多年がかかるようですね……。

 

 流石にこのハザマの世界の寿命がもちません。

 

 この者は適当な虚無の空間に放り込んでおきますか。

 

 はあ、なかなか適当な人間が来ませんね。

 

 まったく、2000億年もこれを繰り返していますが、何度宇宙を作り直しても、異界へと侵入できる人材は出てきませんね……。

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