19.私と姉だけの秘蜜(前編)
今回は、最終話直前の前編です<(_ _)>・・・
あの日以降、私と姉は正式にお付き合いする仲となった。
『あの日』とは、実に約七年ぶりに母と父が海外から日本の自宅へと戻ってきた晩のこと。
そこでは、姉からいつの日かにした私からの愛の告白に対しての返事があったのだ。そして、その返事は『Yes』だった。
私も、それを聞いた最初は自分の耳を疑うしかなく、本当なのか、はたまたからかわれているだけなのか区別がつきそうになかった。だが、その後の姉の言葉を聞くうちに姉の私に対する思いが判然と伝わってきた。
現在、当時のことを思い出すと、本当によかった、以外の言葉がみつからない。
また、私と姉は互いの友人、家族や親戚一同に内緒にすることを前提として付き合っている。
――そして今、私と姉の二人はいつかの休日を利用して一緒に訪れたショッピングモールへと久しぶりにやって来ていた。
「お姉ちゃん、今日は何か買うの?」
「まぁ、そのうち分かるわよ。けど今は、ひ・み・つ♪」
「もぅ~・・・ケチだなー・・・。秘密って何さ、素直に教えてくれたらいいのに」
「・・・そうだ、楓。とりあえず何か食べましょ?お昼まだ食べてないし・・・」
姉は、私に都合の悪い質問をされたためか明らかに話しを逸らそうとしてきた。
「わかったよ、お姉ちゃん。それで、お姉ちゃんは何を食べるつもり?私は今のところまだ決まってないけど・・・」
私は、姉が話題を変えようとしてきたことに対して、のっかることにしたのだ。そして、
「そうねー・・・私は、楓のことが食べたいわ♡」
「んなっ?!何をいきなり言い出すの、お姉ちゃん!?私のことだったら一昨日たっぷり食べたでしょ?」
「そうだったかしら?それより、そういった話しは、こういった公共の施設とかでは口にしない方がいいわよ。不快に感じる人がいるのだから・・・」
「わかったわよ。先に言ってきたのは、お姉ちゃんだってのに・・・」
私は、姉のこういった意外な一面?も含めて好きになってしまったのだからしょうがないとは思うが、姉は夜になると私以上に激しくなる。ここでは特に言及するつもりもないが。
「んっ?何か言ったかしら、楓?」
「なんでもなくはないけど、とにかくお姉ちゃんは、何が食べたいの?正直に答えて・・・」
「そうね、私は楓と同じ料理を注文するわ」
「えっ・・・なんで?」
「なんでって、それは、二人で同じ料理を頼めば美味しさとかが共有できるかなって・・・」
「いや、それだったらむしろ逆だって。二人とも違う料理を頼んで食べさせあい・・・とか、少しずつ分けあった方が一度に二つの味が楽しめるし、相手の料理の味だって知れるじゃん」
「それもそうかもね。なら、私は楓とは別の料理を頼むわね」
「うん、そうして・・・」
それからほどなくして、私と姉はショッピングモール内に併設されているフードコートエリアへと向かうのだった。
ショッピングモール内のフードコートエリアには、いくつもの料理店が並び、ファストフード店から和食のお店、デザートや軽食にもってこいのクレープ専門店、麺類を扱う料理店など種類が豊富である。
そして、私はそこで『和風たらこのクリームパスタ』とセットドリンクの『ジンジャエール』を注文。
姉は、『かま玉うどん』と糖の吸収を穏やかにするとかいう『お茶』を注文していた。
――その後、私と姉は注文していた料理を受け取ると、通路側の空いている席に腰を下ろしたのだ。
「・・・楓、一口ちょうだい?私のも食べていいから」
「わかった。はい、あーんして・・・」
私は、フォークにパスタを巻き付けると姉に口を開けるように促した。それに対し姉は口を開くと――
「楓、いいわよ・・・」
と、言ってきたので私は、パスタを器用に巻き付けたフォークを姉の口の中へと入れたのだ。
「どう、お姉ちゃん?」
私が味の感想について尋ねると姉は、
「うん、なかなかの味よ。ありがと・・・楓」
そう述べた。
「そっか、お姉ちゃんの口に合ったならよかったよ・・・」
「じゃあ、次は楓の番ね。ほーら・・・口を開けてごらんなさい。食べさせてあげるから・・・」
「いや、自分で食べるから・・・うん。大丈夫だから・・・」
私にとって、姉にうどんを食べさせてもらえるのは嬉しい以外の何ものでもなく、せっかくだし姉に食べさせてもらえたらどんなに気分がいいだろうか、と思ったが、食べさせてもらう瞬間を想像してしまうと私が思っていたよりも恥ずかしい行為のように感じられてしまったのだ。
「えー・・・と、楓?うどんじゃ嫌だったというか、私のは、いらなかったかしら?」
そう、小首を傾げて聞いてくる姉に対して私は、
「その、えー・・・っと、そういうことじゃなくて、あの・・・」
「もっと、ハキハキと言ってちょうだい、楓。そしたら私も理解できると思うから・・・
「・・・あのね、お姉ちゃん。私にうどんを食べさせてくれるのは凄い嬉しいんだよ?だけどね、なんかされる直前になってみると恥ずかしさの方が勝っちゃってさ・・・」
「そういうことだったのね。でも、それだったら夜の私達の方が周囲からしてみれば恥ずかしいと思うわよ?なんなら、ここで実演してみる?」
「はっ・・・?!なに変なこと言うの、お姉ちゃん?さっきについでまたも。とにかく、一口もらうから・・・」
「ふふっ・・・それでこそ楓よ。じゃあ早速だけど、あーんしてちょうだいね・・・」
私は、姉にうどんを食べさせてもらうことにした。それにしても、どうして姉はいきなり夜の私達のことについて話題にしようとしたのだろうか。そんなの、恥ずかしすぎるし、『一口あーん』してもらう方が数十倍マシなのは明らかであった。
・・・・・・
「どうかしら、楓?」
「うん、普通においしい。なんならもう少しだけつゆが濃くてもいいかなって思うけど・・・」
「そうなのよ。私も、もう少しだけ味つけが濃くてもいいように感じたのよ。そう考えると、楓のが総合的に美味しいわね・・・」
「えっ・・・?私の方がおいしいって何?どういうこと?もしかしなくてもまた卑猥な表現か何かなの、お姉ちゃん?」
「いいえ、卑猥でもなんでもないわよ。ただ、普通に楓の注文したパスタの方が美味だな・・・って
「あっ・・・そういうことね、なるほど。私、てっきりまたお姉ちゃんが何か変なつもりで言ったのかと思っちゃったよ。ごめん、ごめん・・・」
「まぁ、楓の誤解がとけたのならよかったわ。けど、楓の頭の中、大丈夫かしら?」
「・・・大丈夫だし、何の問題もないから。とにかく冷めきる前に食べ終えちゃおうよ」
「分かったわ・・・」
その後、私と姉の二人は食器の上に盛られた半分以上残っている料理を黙々と食べ進めていく。
二人とも、ほぼ無言で食べ進めていったため、ものの数分で皿の上から食事がいなくなっていた。
フードコートエリアで食事を終えると、私は姉に手を引かれるままに付いて行った。
・・・姉に手を引かれ連れてこられた場所は、宝飾品を扱うジュエリーショップだった。
透明なガラス製のケースの中には、ピンからキリまでの様々な値札のつけられたプラチナの指輪や純度の高い金のネックレス、『S925』として広く認知されている銀の純度が高いイヤーカフ、H&Cのダイヤモンドを使用したブレスレット等が数多く陳列されていた。
私は、誰かへの贈り物ないし自分への日頃のご褒美か何かで購入するつもりなのか・・・と思っていた。すると、
「ねぇ、楓・・・。楓だったら、どんなのが好いと思う?ネックレス?それともブレスレット?女子なら誰しもが一度は憧れるであろうダイヤの指輪?」
姉が私に対してそんなことを聞いてきたのだ。私は、姉がそんなことを聞いてきた理由がさっぱり判らなかった。けれども、私の意見が少しでも姉にとって参考になるのなら、と思い・・・
「私だったら、そうだなー・・・ネックレスが好いかな。ネックレスだったら、服とかにさえ気をつかえば年中通して使うことも可能だと思うし、なにより指輪とかみたく着けてたらいつの間にかどこかで落としてたー・・・みたいなことには滅多にならないでしょ?」
私が姉にそう伝えると、
(指輪でも気をつけていれば、そうそうなくならないと思うけどね・・・)
なんてことを姉は考えていたらしいが、私に対してそんなことは一言も伝えてこなかった。
「へー・・・楓は、ネックレスが好いと思うのね。だったら、この中だとどれが一番のお気に入りかしら?」
「えー・・・っと、私だったらこの主張が強すぎない銀のやつとかかなぁ・・・って、やっぱり私の意見なんか参考にならないよ、お姉ちゃん。それに、自分で最初から選んであげた方が相手に渡すのなら気持ちが伝わりやすいと思うの。だから・・・」
「だから、なんだって言うの?まぁ、とにかく教えてくれてありがとね、楓・・・」
姉がそう言ったときのことである。私は突然の尿意に襲われたのだ。
「お、お姉ちゃん、まだ宝飾店にいて!私は、ちょーっと、お花摘みに行ってくるから・・・」
「分かったわ。場所は、そこの突き当たりを右に曲がって少し行ったとこらしいわよ。すぐそこに、矢印が出てるわ」
「有りがと・・・」
そう言うと私は、慎重に・・・でも、気持ちだけは急いで向かうのだった。
これは、私がいなくなってから比較的すぐのこと。
「えー・・・っと、じゃあこれと同じやつを二つください・・・」
「かしこまりました。では、二点で合計二万九八〇〇円になります」
「・・・じゃあ、三〇〇〇〇円からでお願いします」
「お客様、こちらの商品、無料ラッピングサービスは御利用なさいますか?」
「それなら、こっちの片っぽだけお願いします。それで、ラッピングのない方なんですけど、値札だけ取り外してもらってもいいですか?」
「かしこまりました。こちらのは、ラッピングサービスで、そっちのは値札の処理だけですね?」
「えぇ、お願いするわ・・・」
――その後、私が何かを購入し終えた姉のもとへと戻ってきた。
「おまたせー・・・って、あれっ?お姉ちゃん、もう終わったの?」
そんな私の言葉に対して姉は、こくりと頷いて・・・
「えぇ、ちょうど終わったところよ。それで・・・楓の方は大丈夫だったかしら?」
そう、言ってきた。それに対し私は、
「お姉ちゃん、私、もう立派な大人だよ!?だから、特に問題もなかったから子ども扱いしないでよ」
と、伝えたが内心では姉が気にかけてくれたことが嬉しくも思えた。
「それもそうね。楓は立派になったものね、昔よりは」
「昔よりは・・・って何さ。まぁ、いいけど・・・」
私は、少し頬を膨らませるようにして言った。それからほどなくして、
「ねぇ、楓?私の目的は終わったんだけど楓は、どこか見ておきたい場所とかあるかしら?」
「私が・・・見ておきたい場所は、今日は特にないかな。それに、今日はそもそもお姉ちゃんが見たいところがあるから・・・って言ったから私も付いてきただけだし。楽しかったけど・・・」
私が、最後に捨て台詞のように言葉を呟くと、
「そう。ならそろそろ帰ることにする?それにしても、顔、真っ赤よ・・・」
「んなっ?!なんでわざわざ言うの、お姉ちゃん?私だって、意図的にやってるわけじゃないのよ!?」
「分かってるけど、可愛かったから、つい・・・ね」
「そ、そう?別に言われて嫌な気持ちにはならなかったからいいけど・・・」
そんな会話があったのち、私と姉の二人は、ショッピングモールから帰宅することにした。帰宅の途中には、オバーバックスコーヒーで一休みしつつ・・・・・・。
先ずは、いつものことながら最後まで読んでくださり有り難うございました。この物語も残すところ、あと1話となりました。ぜひ、とまでは強く言えませんができれば最終話となる次話も宜しくお願いできたらな、と思います。
Have a good day!!




