11.私と夏休み
私の通う『弥生大学』の前期日程が終わり、昨日から夏休みが始まった。
そして今日、私は姉と二人で自宅から比較的近場に新しくできた大型ショッピングモールにやって来ている。そんな新しくできたショッピングモールの第一印象としては、デカい・・・という言葉が適切で、その他の表現がみつからない。
私は、店内を物色する前からとてもわくわくしていた――
「お姉ちゃん、今日は一緒に来てくれて有りがと。私ね、お姉ちゃんと来れて嬉しいの。お姉ちゃんは?」
「そうね、私も楓と一緒に一度くらい来てみたいって完成する前に思ってたから今日、こうやって二人で来れてよかったわ・・・」
私は、姉のそんな言葉を聞けて嬉しかった。
「ところで、お姉ちゃん、最初は何から見る?私は、『4coins』から行きたいなって思うんだけど・・・」
「あー・・・あれよね。そのお店に置いてある商品は全部四〇〇円っていう・・・」
「そう、そうなの。お姉ちゃんの好きそうな商品とかがインターネットで閲覧してたらいくつもあるみたいでね、まずは・・・そこから行きたいなって」
「じゃあ、まずは楓の行きたいお店に向かうとして、その次は私が行きたいところでいいかしら?」
まじまじと私の顔を見つめながら言ってくる姉に対して、私は頷いてみせた。
・・・そして、私と姉は『4coins』の目の前までやって来た。
店内の様子を軽く見渡してみると、かなり質の高そうな商品が数多く陳列されているようで、私は真剣な眼差しを商品に向けていた。
姉も、私と同様に多くある商品を目で一つずつ追って気になる商品は細部まで確認しているようであった。
「・・・お姉ちゃん、何かよさげなのあった?」
「えぇ。南米の方で伐採された木材を使用した食器らしいのだけど、彫りが丁寧で素敵だなって・・・」
「どれ・・・って、これかー。確かに装飾がいきいきしてるように感じられるね。けど、家の食器棚には入らないと思う。おばあちゃんが結構な量の食器やコップを新しいのに買い替えたばかりだし、それらが空きスペースをなくすくらいところせましとあるから・・・」
「んー・・・そうなのよね、おばあちゃん、何か思いたったら即実行しちゃうからね」
「うん・・・。だからさ、食器とかは買うのやめとこ、お姉ちゃん・・・」
「まぁ、見てるだけでも楽しいし、店内を見に行きましょ・・・」
それから、私と姉の二人は魅力的な品の数々がところせましと置かれている『4coins』の店内をぐるりと一周してみることにした。その後は、特に何かを購入することもなく店を後にした。
「あー・・・どれも魅力的だったね、お姉ちゃん・・・」
「そうね、楓。今度は、おばあちゃんとじっくり話し合ってから食器とか買いに来ましょう・・・」
「そうだね。まずは収納スペースの確保とかしないとだもんね・・・」
私と姉は、そんなことを言い合ったのち、次に姉の行きたいお店に行くことにしたのだ。
「・・・で、なんだけど、お姉ちゃんが行ってみたいお店ってなんてところ?」
「二階にある洋服屋で、たしか名前が『GG』とかだったと思うわ。なんでも調べたところによると安いのに細部まで作りこまれた衣服が多いみたいなのよ。」
「へー・・・それは気になるね」
「でしょ!だから、行きたいのよ・・・」
そんな会話をした後、私と姉は店内に何ヵ所か設置された地図を頼りにして『GG』へと向かった。
『GG』のある二階へは、エスカレーターを使用して向かったのだが、高齢者や子どもに配慮しているのかエスカレーターの上昇速度がゆっくりだった。
――それはさておき、肝心の洋服店はというと、限られた面積しかないのに衣服やアクセサリー等の数が多く、店内を一周するだけでもそれなりの時間を要してしまった。
また、姉は三着ほどの衣服を買ったのだが、私は気にいった服がなかなか見つからず今回は買わなかったのだ。
そして、この『GG』という洋服店は、時間があまりないときには全ての商品を確認することは難しいと思うが幸いなことに私と姉の二人には充分すぎるほどの時間があったためじっくりと見ることができた。
――洋服店を後にすると、私と姉の二人はフードコートエリアへと向かうのだった・・・。
「お姉ちゃん、そろそろお昼になるけど、なに食べる?」
「そうね、私は、パスタとかなんていいんじゃないかって思ってるけど。楓は?」
「私はね、ハンバーガーが食べたい気分なの。だから、あそこの『キングスバーガー』にしようかな」
「楓がそこにするなら私も・・・とは思わないし『東のパスタ』っていうところにしようかしら」
「じゃあ、それで決まりだね。で、どこに座って食べるの?」
「それは、先に注文を終えた人が座ってるところでいいんじゃない?」
「・・・ということは、つまり、私かお姉ちゃんのどちらかが座ってるところにしようってことだよね?」
「そういうことよ、楓。そうと決まればまた注文後にね・・・」
しばらくそんなやりとりをしたのち私と姉は各々、注文しに行った。
・・・・・・・・・・・・
「お姉ちゃん、こっちだよ・・・」
私は、テーブルに二つの水が注がれた紙コップを置き姉の方を見て手を振った。そんな私に対し姉は、すぐに気づいて歩いてきてくれた。
「注文したのを貰いに行くのも返却しに行くにもちょうどいい場所ね・・・」
私の座っている席まで姉はやって来ると、そんなことを言ったのだが、私は敢えて姉の言ったような都合のいい席を選んだのであった。
――私と姉が座ってから少し時間が経過すると、二人の手元に置いてある薄い装置のようなものがチカチカと点滅しながら振動し出した。注文していた料理が完成したという合図である。
「じゃあ、私が待ってるから先にお姉ちゃんからとってきなよ・・・」
ほぼ同じタイミングで私と姉の受け取った薄い装置のようなものが振動し始めたため、私はそのように伝えたのである。そして、
「そうね。先にもらってくるわ・・・」
姉が席を立ち、注文していた料理を受け取りに行った。
その後、姉がトレーに盛られた料理を持って戻ってきたのを確認すると私もハンバーガーのセットを受け取りに向かう。
・・・私は、二個のハンバーガーとポテトことフレンチフライとドリンクをのせたトレーを両手で持ち姉のところへと戻ってきた。
また、注文した料理の味は、とてもおいしくて互いに注文した料理を一口ずつ食べさせあったりしていたのだ。それは、はたから見れば恋人のようにも思われてしまったのかもしれない・・・。
「お母さん、そろそろ何か食べてこーよ・・・」
「そうしましょ、桃花・・・」
今日、私は夏休みを利用して最近オープンしたばかりの大型ショッピングモールに母親と二人で来ていた。そして、時間帯が昼食を摂るのにうってつけだったためフードコートエリアへとやって来ていた。
「桃花、あなたは何にするの?私は、そこにある『花園うどん』にしようと思ってるけど・・・」
「じゃあねー・・・私は、あそこのキングスバーガーにしようかな」
「そう。なら二〇〇〇円渡しとくから、この範囲内で買ってきなさい」
「ありがと、お母さん・・・」
母から昼食用のお金を受け取ると、私は『キングスバーガー』へと向かった。
(んー・・・なににしようかな?というか、どんなのがあるのかな・・・?)
そんなこと考えながらキングスバーガーへと私は向かっていたのだが、私は知り合いを発見してしまったのだ。それも、連れと互いに一口ずつ料理を食べさせあう友人を。
(・・・よかったねとは、まだ心から思えないよ。ごめんよ・・・・・・)
私は、二人がもう付き合っている仲だとかそんなことは一切聞かされていなかったためどう反応したらいいのかわからなかったが、とりあえず二人に気づかれてしまうことのないように行き交う人にまぎれながらキングスバーガーへと向かうのだった。
大型ショッピングモールからの帰り道のこと。私は、お姉ちゃんと手をつないで歩いていた。
「お姉ちゃん、お昼を食べた後、どこにも寄らなかったけどよかったの?」
「えぇ。だって、気になってたお店は午前中に行ったあそこだけだったんですもの」
「そっか。じゃあさ、また今度何かが欲しくなったりしたら来ようね」
「そしたらまた一緒に来ましょ、楓。で、あれなんだけど家に帰る前にここからさほど遠くないところにある『オバーバックスコーヒー』で何か買ってかない?」
「いいね・・・けど、今日さ私、そんなにお金持ってきてなくて・・・」
「そういうことならお姉ちゃんに任せなさい・・・。もう少しで金のポイントも貯まるし出してあげるわ」
「・・・ってことは、お姉ちゃんのおごりなの?それにしても金のポイントって、お姉ちゃん結構通ってるでしょ?」
「まぁ、それなりにはね・・・」
私は、姉がいくらくらい『オバーバックスコーヒー』に使っているのか疑問になるも、おごってくれるというのなら言葉に甘えておごってもらうことにした。
・・・・・・・・・・・・
「えー・・・っと、私はフローズンキャラメルで低脂肪乳に変更してください。で、楓は?」
「わっ、私は数回来たことがあるかないかだから、お姉ちゃんに任せるよ・・・」
「じゃあ、柚子ティーをお願いします・・・」
『お客様、柚子ティーは温かいのでよろしいですか?』
「だってよ、楓。あったかいのでいいんでしょ?」
「うん・・・」
『では、柚子ティーは温かいのにしますね。それで・・・カップにスリーブは付けますか?』
対応してくれた店員さんもといバリスタがそう言うと、姉はこくりと頷いた。
――オバーバックスコーヒーにて注文を終えると、姉は店員さんが提示した価格をプラスティックのオバーバックスカードで支払った。
その後、間もなくして・・・
『えー・・・っと、はじめに柚子ティーの温かいやつをどうぞ』
「有り難うございます。はい・・・楓」
「有りがと、お姉ちゃん・・・」
私は、姉からカップにスリーブのついた柚子ティーを受け取った。
『では、最後にフローズンキャラメルの低脂肪乳に変更したやつをどうぞ・・・』
店員さんからフローズンキャラメルを手渡しで姉は受け取った。
『有り難うございました。またのご利用をお待ちしております。気をつけてお帰りくださいね・・・』
そんなことを言う店員さんに見送られながら私と姉は、オバーバックスコーヒーを後にした。
「・・・楓、飲んでみた?」
「うん」
「おいしいでしょ?」
「うん、柚子の果肉のさっぱり感とハチミツの甘みがマッチしてて飲みやすいね・・・」
「それは、よかったわ。もしよかったら私のも飲んでみる?」
「いいの、お姉ちゃん・・・?」
「もちろんよ、楓・・・」
私は、姉の注文したフローズンキャラメルを飲ませてもらうことにした・・・
「・・・うん、これはこれでキャラメルソースが濃厚で美味しい。けど、これってか、間接キ・・・」
「楓、それ以上は言わなくていいからね・・・」
姉の言葉を聞いた私は、顔の頬がほんのり赤く色づいたのが判った。
「楓・・・可愛いわね」
「えっ・・・?何、お姉ちゃん・・・」
「なんでもないわよ。さあさあ、私のフローズンキャラメル返してもらうわよ」
「ちょっ・・・待ってよ、まだストローのとこ拭きとってないから・・・」
そんな会話をしながら私は姉と自宅へ帰っていった・・・・・・。
最後までお読みいただき有り難うございました。次回から何話か夏休みの話しとなります。もうしばらくお付き合いしていただければと思います<(_ _)>。




