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魔導通信

「え? 魔導通信?! 実用化できたの?」

「はい、リン姫様が出撃なされてから三日後に、開通しました。最初の通信が姫たちの未帰還でした……」


げっ、皇帝陛下にもう知られちゃってるのか。ケインさんの処刑どうこうってのは、これのことか。あとで、できるだけ早く陛下に謝って事情を説明しないといけないっぽいな。どうせパサヒアス様のことで話をしないといけないし。


「ラキウスは待たなくていいかな? 皇帝陛下にまた説明する機会作らないとだから、いいかな」

「はい、それでよいかと」


ガギは私の横に立ったままだ。ケインさんは着席してくれた。グゲやゲゴも座ったまま黙っている。私に全部任せた、といった表情だ。


「まず、レニウムにとって大事なことを。予想されていた通り、最果ての霧は人間を殺してしまう恐ろしい霧でした、がこれは人族に対してだけです」


「どういうことですか?」


「すなわち、人族という種族のみに効果があり、見える霧だったということです。実際に私達人族ではないジュシュリの者に霧を見たものはおりませんし、最果てに突入した私達に何の影響もありませんでした」


「なるほど、帝国には人族以外はほとんどいませんので分かりませんでした。各砦の人員も全て人族だったはずですし」


「それと他にも重大な報告があります」


「これ以上のものが?!」


「はい、霧の向こう、最果て、元々ミリシディア王国と言ったらしいですが、生存者がいて、支配者もおりました。もちろん人族ではなかったのですが、彼らも巨人と敵対しておりました」


ケインさんとゲントさんの反応は大きく、報告し甲斐がある。人族以外、サキラパさんや五神官たちの反応はそれなりだ。私の口からへんな報告を受けるのに慣れているのか、霧の影響を受けないので実感がないのか。


「そして彼らと協力関係を結んできました。すぐにジュシュリが出撃して、霧の発生を抑えに行くつもりです。そうすれば人族の皆さんも最果て、ミリシディアに行けるようになりますから」


「リン様、また出撃されるのですか? それは皇帝陛下がお許しになるかどうか……」

陛下にやり込められたらしいケインさんが私のせいでびびってしまっているようだ。


「はい、ジュシュリだけだと私の戦力もバカにならないはずですから。陛下の説得は私自身がしますので、ケインさんに累が及ぶことはないと思います」

「そ、そうですか。ということは最果て攻略のきっかけが生まれた、ということですね。延々と防衛のみでしたので帝国が疲弊するだけでしたが、とうとう反撃できるのですね」


ずっとここで防衛の指揮をとっていたケインさんやゲントさんには思うとことも多いだろうね。


「はい、そのためにもジュシュリが出撃し、解決せねばいけないのです」


「そうですか、了解いたしました。後詰としていつでもレニウム防衛隊が出撃できるよう準備しないといけませんね」


「あーそうですね、でもたぶんジュシュリがほとんど討ち果たすつもりですので、都市の占領や工作部隊の準備の方がありがたいかもです」


「え? ジュシュリ単独で、あいつらを討ち果たされるおつもりなのですか? 相当な数がいるのでは? それに都市の占領?」


「こちらからはジュシュリ単独ですが、ミリシディアからも戦力を出してもらう予定なのです。現在のミリシディアのトップはすごくこちらに協力的なのです。帝国に隣する、人族がいなくなった都市を周辺の土地ごと譲ってもいい、との言質も得ていますので」


「?! なんと割譲の話まで?! それは陛下に話をしないといけませんね。幸い魔導通信がありますから時間かけずにいけそうですが。工作部隊はともかく都市占領の部隊はさすがにレニウムにはいないので、上に相談しないといけませんね」


「はい、そのへんはケインさんたちにお任せしたく。あとジュシュリを整えるためにいくつかお頼みする事があるかもしれません」


「そうですね、ジュシュリは防衛特化でしたので、進撃するとなるといろいろと入用でしょう。できる限りのお手伝いはいたしますので遠慮なく申し付けください」


「うちはついていけるんやろ? ついていってええか?」


「え? サキラパさんが、なぜ?」


「さそり型ゴーレムちょっと改造したんでな、その動きとか見ておきたいし、うちだってそれなりに武器持って戦うこともできるで」


「そうなんですね、確かにサキラパさんはハイドワーフですから大丈夫だと思います、が私以上に皇帝陛下がお許しにならないのでは?」


「大丈夫や、まかしとき。うちが言い出したら聞かへんのはエドワードもよう知っとるはずや」


「そう、そうなんですね。確かに戦力は一人でも欲しいところですが」


「戦力に数えてもらってもええで。そらここにいるハイゴブリンには負けるやろうけど、並のハイゴブリンには負けん程度はあるはずや」


まあ錬金術師のサキラパさんに負けていては五神官は務まらないはずはずだし、むしろ他のハイゴブリンには勝てるのは凄いと思う。自慢じゃないが、グゲが鍛えていたハイゴブリンたちだからね、グゲほどではないにしろ戦技が使えるものもいたはずだし。


そんな話をしていると、通信に行ったはずのラキウスが会議室に飛び込んできた。


「会議中失礼します。皇帝が、皇帝陛下がもうすぐの予定の補給部隊に便乗して、ここレニウムに来られる、とおっしゃっています。急ぎ準備をお願いします」


「えー?!」


ケインさんなどは驚きのあまり立ち上がってしまっている。通信があるのにわざわざ来られるとは思わないものね。私もびっくりだよ。……もしかすると、と思ってたのは内緒だ。


「リン様、会議はこれでひとまず終了でよろしいでしょうか? 急ぎ受け入れ体制を整えませんと」


「ええ、ええ、そうですね。これでひとまず終わりましょう。また何かありましたらご連絡させていただきます。ジュシュリに手伝えることがあれば遠慮なく申し付けください」


「そ、そうですね。広場から迎賓館までの道を掃き清めてもらえますか? 雑用で申し訳ありませんが、おそらくそこまで兵士を出す余裕はなさそうですので……」


「分かりました。ガギ、ゴガ、その手配や会談中のこと、頼めますか?」


「はい、皇帝陛下が来られるのはおそらくリン姫様のせいでしょうから、ジュシュリも手伝わないと筋が通りませんしね。手が空いているゴブリンが幾名かいるはずです」

「私の配下も出しますね」


「ギグは護衛用のゴーレムの手配をお願いします。私とグゲ、ゲゴは身を清めましょう。おそらく陛下の御前に出ることになりますから」

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