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三魔将

分からなかったのは一瞬だ。パサヒアス様の見た目が大きく変わっていたのだ。



真ん中の頭はガギのままだけど、左右にあった頭部、ライオンと山羊の頭部がなくなっている。その代わりにライオンだったところにたぶん鳥の鷲、山羊だったところに犬? 狼かな? の頭部に変わっていた。それに尻尾もとかげではなく蠍の尻尾になっていた。



「おはようございます、パサヒアス様。なんだか姿がお変わりになられているようですが、いかがしましたか?」


『おはよう、リン。なぁに、魔力が不完全ながら戻ってきたので、調子が良くてね。思わず眷属、魔将を三体も作ってしまったよ』


ええ? 何事?



思わず固まっていると、パサヒアス様の後ろからジャンプして私の前に立ったライオンヘッド、空間を裂いて湧き出てきたような山羊ヘッド、その隣にじわーっと出現する、これはカメレオン?ヘッドの三人がパサヒアス様の前、私の前でもある、に並んで出現した。



三体とも体は毛の生えた人間っぽいけど、それぞれの頭の動物の特徴が出ている体になっている。ああカメレオンヘッドは鱗っぽい肌で、山羊ヘッドだけ腕が四本だ。尻尾もそれぞれにあったものが生えている。


『この者たちが今後私の部下として、主にリンのやりたいこと対策に動くことになる。真ん中の山羊はベフォセット、君から見て右がルオンだ。左の名付けはリンにしてもらおうと思ってね』



ライオンヘッドが一歩進み出てきて片膝をつく。


名前つけとか苦手なんだよー。ゲームとかでもいつもデフォルトネームでやってたし。実家の猫とかミィだった。ライオンだし、レオでいいか。



「では、レオ、で」


「我が名はレオ! 魔将! パサヒアス様の命により、名付けであるリン様のお役にも立ってみせます!」


イメージ通りの野太い声でそんな宣誓をするライオンヘッド。



「我輩はベフォセットなり、魔将である。パサヒアス様の命により、リン様の影に沈み、闇となりて、敵を討ち滅ぼしましょう」


山羊ヘッドもなんか闇を吹き出しつつ、私にアピールしてくる。



「我は魔将ルオン。我はどこにでもいて、どこにもいない者。パサヒアス様の命により、我はリン様の道具でもあり。我が能力、リン様にも使いこなせましょう」


現れてからもゆらゆらと揺れて見えるルオン。そこにいるはずなのに存在感がほとんどない。カメレオンのような目が色んな方向を見ている。


『とまあ、のりのりな三人だが、私がリン、お前のために作った魔将どもだ。使いこなしてやってくれ』


のりのり、って。まあ確かにのりのりにしか見えないけど。特にベフォセットが中二くさい。



『で、この者たちにリンのことを教えてやってくれ。でないと何から守るべきか、何が味方なのか分からぬからな。彼らの頭に一瞬手を置くだけでいい』


そういうと私よりずっと大きい三体が跪いて私に頭を差し出す。



『リンに三体同時に付き従えるのは、この地でのみだ。リンが元いた地に戻ったならパサヒアスの指輪から一体だけ召喚を可能としよう。ただしそれなりに魔力は食うと思う。この地ミリシディアだったか、ここでなら魔力はいらぬ。私がいるからな。レオはリンに名付けてもらったので魔力はあまりかからぬし、有能な護衛となろう』



三人の頭に順番に手を載せていく。三人ともそれには動かずじっとしていた。


『彼ら三人は半自律型だ。大概のことは己の判断で動くが、大きな役目を与えぬと何も出来ぬ。その命令は抽象的なものでも動きはするが、なるべく具体的であったほうが良いだろう』



「それは気を使って先回りでことをなしてくれることはない、ということですね?」


『そんな感じだ。目的を達成するためならそういうこともするけどな。たとえリンや私のためになると分かっていることでも命令以外のことは何もせぬから注意するように』



「半自律型があるということは自律型や制御型があるんですか?」


『そうだ。どうも初期に作った自律型が悪さをしているようなのだ。初期に作ったから弱々しく、縛りも甘かったのかもしれん。自律型は自律しているゆえ、私のことは基本的に生みの親程度にしか考えておらんはずだからな』

以前に作った自律型は三体だそうだ。



『ちなみに制御型は一字一句正確な命令を与えるかルーチンを与えなければ、ほぼ何も出来ないタイプだ。任せたことは臨機応変に対処するがな。兵隊に使ったりするし、リンのいうアリクネが制御型だ』



「分かりました。本日は相談というか提案をしに参ったのでした」


『ほう、何かな?』


その頃には前回の説明しづらい外観の召使いが、テーブルと椅子、お茶を持ってこっちにきていた。


わたしが召使いに案内され席につくと、前回通り召使いが見事な手腕というか触手で右足の義足をとってくれて、テーブルの足に立て掛けてくれた。



それにあわせて、魔将たちは位置を変えた。レオは私の斜め後ろに片膝立ち、ルオンは斜め前に片手を胸の前に置いて頭を軽く下げて立っている。存在感はほぼないのでずっと見ていないとそこにいるとわからなくなってしまう。

べフォセットはわたしの影に潜ってしまって見えない、と思ったら頭だけ出して、キョロキョロしている。傍目には床から山羊の頭が生えてキョロキョロしているというホラーなように見えているだろう。

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