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おんぶ

城へ転移しときと同様の感覚があり、目を開けると転移前にいた広場に戻ってきていた。


さすがに時間が結構経っているので誰もいない、と思ったら、端っこの方でグゲとゲゴが、違う場所に白いうさ耳老人の村長と、猫耳少女のリルテがいた。待ってくれていた様子。


パサヒアス様は、いない。私一人を送ってくれたのか、来てすぐに戻ったのかまでは分からないけど。


「ご無事で!」

「おかえりなさい」


四人が駆け寄ってくれる。グゲとゲゴはさっと私の全身を見て、不具合がないかどうか確かめてくれている。ゲゴにいたっては私の手をとって魔力に異常がないか調べてくれたようだ。もちろんどっちもなにかされたわけじゃないので問題ない。魔力は一時的に枯渇して体力が削られたけど、回復した魔力は私のもののはずだし、疲れているだけのはずだから外見上はそこまで違わないはず。


「おかえりなさいませ。見ると若干お疲れのご様子。いったん休まれますかな?」


「出来たら、そうさせてください。お話は若干聞けましたので、後ほどに」

「そうですか、分かりました。リルテ、案内を頼む」


「はーい。昨日と同じところになりますが、すでに掃除は終わっているはずです。案内しますー」


すると、グゲが私に背を向けて座った。ん?と思っているとゲゴが私の後ろに回り、脇をもって持ち上げた。

「失礼します。グゲの背にのってお戻りください。その足でそのお疲れの様子では危のうございますから」


子供扱いするなー!と一瞬思ったけど、私子供だった。魔力枯渇と緊張感で疲れているのも確かだし、眠気もすでにきている。まるで遊び疲れた子猫のように一瞬でいつの間にか寝てしまう、という芸当もできそうなぐらいだし。


「さあ、どうぞ」

すぐに抵抗する気もなくなったのでされるがままにグゲの背中に乗って軽くグゲの首に手をかける。……おんぶされるのはいつぶりだろうか? 小学校の頃の運動会の競技以来な気がしないでもない……。お姫様だっこなら……。




すぐにグゲの背中で寝てしまったようだ。気づいたら昨日と同じベッドで寝ていた。外は暗くなっている。まだお昼過ぎだったと思ったけど、結構な時間寝たようだ。

すぐ手が届くところにいつの間には外されていた義足が置いてあり、足元には椅子に座りながら突っ伏して寝てしまっているゲゴもいた。グゲは見えない、たぶんつながってる別室にいるんじゃないかな?

すっかり寝てしまっているゲゴを起こすのも悪いかなと思ったので、静かに私にかけられていた毛布を取り、とりあえず義足を付けて、ベッドから降りてゲゴに毛布をかけた。


ほとんど音は立てていないはずなのにグゲがやってきた。


「お目覚めになられたのですね。すぐに誰か呼んで温かいものでも持ってきてもらいます。こちらにも椅子はありますのでどうぞ」

などとグゲにしては珍しい小声で言う。


グゲに導かれてグゲの部屋の椅子に座る。グゲは部屋から出ていった。


しばらくするとお茶セットを持ってきた猫耳少女リルテとともに温かそうな湯気をあげている食事をもってグゲが戻ってきた。

「雑穀のかゆのようです。つけあわせもあります」


「この村で体が弱った者が食べるものです。お茶も特別製の元気が出るお茶です! どっちもおいしいですよ!」

グゲが身振り手振りでリルテに頼んだようだ。あるいはリルテがすごく気を利かせてくれたのか。後者のような気がする。

向こうでゲゴが寝ているのを知らないリルテは元気だった。声が響いてしまったようですぐに慌ててゲゴも部屋にやってきた。


「も、申し訳ありません。わたくしも寝てしまいました……」

グゲがじーっとゲゴを見たあと、にやりとした。グゲがなんか激高したかのように声を荒げていろいろと言い出した。


「お二方の分も持ってきますねー」

食べている間にリルテはそう言って出ていった。私はグゲとゲゴの煽りあいをBGMとして聞きながら食事を頂いた。かゆは落ち着いた味でゆったりしたし、お茶はちょっと渋かったけど、確かに味は悪くないし元気になった気がする。


私が食べ終えるのと同じぐらいに二人の言い争いは終わり、リルテが二人の分の食事を持ってきてくれた。ゲゴの分は私と同じだけど、グゲの分は付け合せの代わりに焼き肉がのっていた。


二人共リルテには通じないけどお礼をいって、料理を受け取り、それぞれ食べ始めた。リルテはにこにこして私の食べた分を下げてくれようとしたので、二人のお礼を代わりに伝えて、もちろん自分の分のお礼も言う。


「いえいえー、お世話を仰せつかっていますのでー。村にいる間は存分に使ってくださいー。あーあともしよければ長はまだ起きてらっしゃると思うので、お話していただけるとありがたいですー。すごく気になされていたので」


リルテが片付けに出ていったあとに、グゲにそのお肉食べるの?と聞いてみた。

「はい、せっかく出してくれたものですし、数年この村の方々は食べ続けておられるのですよね? ならばまったく問題はないかと判断します。確かに元があれなのは悪印象ではありますが、見た目が悪い食材というものは他にもありますし、食べたくても食べれない、という時期がジュシュリにもあったと聞いておりますので、気に入らないから食べないという判断は俺にはありません」


ううっ、グゲに正論で返された。確かにそのとおりだ。同族でないなら当然の話だし、今や私にとっても同族ではないはずなのだ。ただ元日本人としては人型だったものを食べるのには忌諱感があるし、たぶん穢れ信仰も関わってるんだと思う。

けど嫌がってるのは私一人だし、積極的に食べはしないものの、出されたら食べるし、他の人が食べるのも邪魔はしないことにしよう。それとあの巨人肉をこっち側に広めるのもしないように。あれがパサヒアス様の力で変異した人間であったなら、今後増えることもないはずだしね。消えてなくなっていくものはずのものに頼ってはいけない。


二人共が食べるのを待ってから、リルテの案内でうさ耳村長の自宅へ赴いた。

村長のはずなのに想像以上にこじんまりとした自宅でちょっとびっくりした。


「リルテです、長。御三方が来られました」

少しだけ待ったら、うさ耳村長自らが出てきて、迎え入れてくれた。

「お気づきになられましたか。明日でも良かったのですが」


「はい、おかげさまで。なるべく早くにお伝えしたかったので」

「そうですか、ありがたいです。申し訳ないが私の一人住まい故、狭いし、椅子も足らんし、お茶の一つも出せそうにないが、よろしいかのう」

「はい、特に問題ありません。私は足がちょっと不自由ですので椅子がありがたいですが、こちらの二人は元々は椅子を使いませんので」

「そうですか、ではリルテも座るといい」


「私がお茶を入れましょうか?」

「お茶自体置いてないんじゃよ」


そう言われて、私とリルテが着席して、グゲとゲゴが私の後ろで床に直に座った。それらに向き合うようにうさ耳村長も座った。


「まず、村長に頼まれた伝言をパサヒアス様に伝えました。たいそう喜んでおられましたよ。態度でそうだろうと思っていたが、言葉で聞けるとは思わなかった、とおっしゃっておられました」

「おお……、ありがたいことじゃ~……」

ちょっとうさ耳村長が感涙している。


「それと素材は、パサヒアス様がなんとかするとおっしゃっていましたので、後日見に来たりするかもしれません。配下がくるかもですが」

「そうですか、ありがとうございます」


「あと、こちらにはその事自体はあまり関係のないことかもしれませんが」

「なんじゃろうか?」


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