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模擬戦後編

「次、教導部隊、いけ」

次に出てきたのは、元私の専用機だった一号機を改造した訓練用大型ゴーレムに戦闘用牛型ゴーレム、とそれらの護衛だった。

訓練用は鎖鎌のような武器を振り回している。魔導線に絡まないように、後方の術者を巻き込まないよう、器用に分銅付き鎖を振り回している。戦闘用牛型はサソリ型の後方に回り込もうとしている。

さそり型は遠くで振り回しているだけで近づかない訓練用を無視して、戦闘用牛型に回り込まれないようにその場で回ろうとする。けど信地旋回は出来てるけど、超信地旋回はできていないようで、牛型に旋回が追いつけていないばかりか元いた位置からずれてしまっている。


自ら訓練用に近づいてしまっさそり型は訓練用が投げた分銅に片方のはさみが絡み取られて旋回が止まってしまい、牛型に真横に回り込まれてしまった。牛型が何かを投げた。投槍じゃないようで、両端に分銅がついた鎖だった。それが回り込まれた方の足に絡みついて、さそり型は足を動かせなくなってしまう。

さそり型は尻尾と動かせる方のはさみで抵抗するものの、牛型の突進が動かせるはさみのわきに決まって、尻尾しか動かせなくなったところで、ギグが模擬戦を止めた。


さそり型はまだ抵抗は出来ただろうけど、時間の問題だった。訓練用がじりじりと近づいていたからね。それに牛型の護衛を尻尾では捉えられてなかったみたいだし。


「あんなん反則ちゃうか? モンスターがあないな武器使ってくるんか?」

サキラパさんが的を射ているようで射れていないことを言ったので、私が説明しようと前に出たら、先にグゲが出てきた。


「使ってこないとも限りませんから。あのような鎖でなくとも物理拘束系の魔法や特性、蜘蛛の糸やスライムなどに弱いとわかりましたゆえ、そこが改良点ですね。食らっても大丈夫にするか喰らわないように素早く動けるようにするか、牛型の動きにすらついていけていませんでしたからね」


戦闘のプロ中のプロに正論を言われてグヌヌとサキラパさんは黙った。サキラパさんは賢い人だからグゲの説明だけでだいたい察してくれたようだ。


「超信地旋回も出来ていませんでしたしね。虫の足なら出来ると思うんですが」

「ちょう……なんやて?」

「ちょうしんちせんかい、です。簡単に言えばその場周りですね」


「え? その場周りやったら出来とったやん?」

「いえ、あれは超じゃない信地旋回ですね。片方の足が止まってましたから」

超信地旋回なら両方の足を逆に動かして中心をぶらさず回転できることを指すからね。


「なるほどな。足の関節をもう少し柔軟にして、あとは術者の経験やな、たぶん。そのちょうなんちゃらの仕方がわからんかったんやと思うわ。虫の動きをちゃんとしろって言われても並のやつじゃなかなかな。今回の術者はわたしの弟子やったんやが、特に戦闘にも虫にも詳しいわけやなかったしな」


ああ、そういうこともあるかもしれない。大型ゴーレムは人型だし、牛の動きが想像できない人はあまりいないけど、さそりの動きとかなかなか想像できるものでもないしね。

……あ、そういえば虫のさそりには出来ないはずの動きをさそり型ゴーレムできていたな。尻尾を曲げて頭の前以外を打ち付けてた。虫のサソリの尻尾の構造考えたらまっすぐにしか打ち下ろせないはず。そもそも尻尾の先は針だからそんなに強く叩きつけるってのも無理なはずだし。モデルになったものが出来ないことが出来てる? 今までの人型、牛型、馬型は動きを知りすぎてて、こんな動きは出来ないと思い込んでいた? よく考えると牛型の尻尾腕もそうだし、そう動くと信じていたら、結構無茶な動きも出来るのかも。となるとトリガーを引くとかの小さな動きならその生き物にないものでも出来るかもしれない。これは大きな発見かもしれない。


私が頭の中で一人で盛り上がっていると、さそり型の復旧が終わり、最後にグゲとの一騎打ちを始めていた。グゲはゴーレムは使わず生身で戦うようだ。

グゲは普通に歩いてさそり型に近づいていく。さそり型がはさみでグゲを捕まえようとするけど剣ではさみを弾かれていた。グゲが持っている剣は一般ゴブリンも持っている数打ちのただの剣だ。それなのに何倍も重いはずのはさみが弾かれている。さそり型はあとずさって尻尾をグゲに向かって振り下ろす。けどそれもグゲには当たらず弾かれてしまった。しかも弾かれた勢いでさそり型が浮き上がったように見えたぞ?

結局その模擬戦はグゲに近づかれてさそり型の頭にグゲが手を置いた時点で一方的にグゲが終了を宣言した。けど見ていた誰もが納得した終わり方だった。


グゲって強いとは聞いてたけど、その強さをはっきりと見たのは久々だったし、ここまで強いのかと思ったのは今回が初めてだ。今まで見てたのは相手が弱かったんだなとすら思えた。逆にいえばさそり型はグゲに完敗したけどそれなりには強いってことなのかも。教導部隊にも負けたけどあれも負けても仕方ないって感じだったしね。

それに良い負け方をしてくれたのでさそり型の弱点や改良ポイントがよく分かったいい模擬戦だったと思う。

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