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魔力操作

まず気を右手に集中するようにイメージする。目を閉じて集中したので最初は分からなかったけど、自分の右手が光り輝いて見えた。さっきも見えた気がしたけど、これは私の魔力か。

「リン姫様、魔力が大きすぎます。それだけの魔力を放出すると下位ゴブリンの仮面では耐えきれません。それにリン姫様への負担も大きい」

ふむー、私自身への負担というものは集めただけでは全然感じないけど、相手側が受け止めきれないのでは意味がない。魔力を絞ってみる。


「だいぶと小さくなったようですね。けれどもそれでも下位ゴブリンには不安です」

食事を終えた他の神官たちもこちらにやってきた。

「ハイゴブリンの仮面なら大丈夫でしょうが、我らの仮面で試してみますか? 我らのはハイゴブリンの中でも大きい」

ギグがそんな提案をしてくれた。練習できるならしておきたい。ガギも頷いて賛同してくれた。

「ではまずリン姫様からの賜り物を我ら五神官から賜ることとしよう」

贔屓なような気もするけど、練習は大事だし、私がいなかったら彼らがトップだからいいよね。

「少々お待ちを。わたくしが監督しますわ」

私の仮面の調整をしてくれたため、食事が遅れていたゲゴを待つ。魔力だから本来はゲゴの領分なのだろう。


待たせてはならぬと、ゲゴは手早く食べ終わって、私の隣にくる。

「お待たせしました。ではまず誰から行きますか?」

「私からいこう」

ガギが最初になったようだ。実際ガギは最初に出会った人物ではあるので、他の神官より馴染みがあって、なんというかいい感じだ。

「魔力操作の説明は難しいのですが、そうですね、口に水を含んで、ピュッピュっと少しずつ吹き出すようなイメージなどはどうでしょう? イメージが大事なのです」

そんなことを言われたから自然と口をとんがらせてしまったが、仮面のおかげで見えないのでセーフ。指先から魔力がちょろっと出るようにセーブする。

「もっと絞ってくださいませ」

んー、これ以上は難しそうだからイメージを変えるか。量を少しずつ出すイメージ……、生クリームを絞り出す感じ? んーそれでも口が大きそうだ。スポイトで落とす感じはどうかな?。

「いい感じです、それぐらい絞れていれば良いかと。今のイメージを覚えておいてください」

この指先から溢れた魔力を、ぽいっとガギの仮面めがけて投げる。イメージとして基礎化粧品が肌に浸透する、みたいに染み渡る感じで。

「魔力量も程よく、また効率よく仮面に魔力が供給されたようです。他のものに魔力を分け与える場合はそれなりのロスがあるものなのですが、あまりロスを感じませんね」

ガギが褒めてくれた。イメージが良かったようだ。

「大変素晴らしいです。飲み込みが早くてリン姫様は魔力が大きいだけでなく優秀ですのね」

なんかえらく褒められて照れる。私のイメージは大量の便利道具があった世界を知ってるからだろうし、私個人の力量ではないんだけど、やっぱり褒められると嬉しいよね。……ここで調子に乗ると痛い目にあうというのはよくあることなのでかえって引き締めなければ。


他の五神官たちの仮面にも魔力を供給する。全員うまくいった。

「これでしたらもうゴブリンの仮面に魔力を貸し与えても問題ないかと思います」

「練習に付き合ってくれて、ありがとうございます」


「いやぁ、わしなどはこういうの苦手ですから、リン姫様がお得意のようで助かりますわ」

「だめですよ、ギグ。最初だけですよリン姫様が全員に行うのは」

技巧のギグが言語のゴガに窘められてる。

「普段は直下の者たちに我らが手分けして貸し与えておるのですが、私とギグはどうも小さな魔力操作が苦手でして」

グゲがそんな言い訳?じみた説明をしてくれた。普段は直属の上司である彼らが行うのね、助かった。ジュシュリに来た時、かなりの数のゴブリンを見かけたからなぁ。


その後、謁見の前に念の為顔以外にガギから追加でもらった緑色を塗って、昼ごはんまでずっと謁見を行った。まじゴブリン多い。そして見分けが全くつかない。いや、全くってわけじゃないんだけど。なんか手足の大きいゴブリンが一部にいるのよね。仮面も普通のゴブリンよりは大きくて顔全部を隠してるから顔の変化はわからないんだけど、大きい分仮面の文様が違うので、手足の大きいゴブリンたちなら今後見分けもつきそうだ。


彼らが何なのか近くに控えてくれているガギに聞いてみた。

「彼らも通常のゴブリンですが、メジャーワーカーと呼ばれております。通常の親からも生まれてくる者たちでその大きな手足で力仕事や戦闘などに特化したものですね」

メジャーワーカーって蟻ですか。あーでも私の元の世界でのホブゴブリンみたいなものなのかもしれない。


「だいたい半分ほど終わりました。お疲れはございませんか?」

「はい、特に疲れてはいません。少々飽きてきただけですね」

謁見という形だからいちいち挨拶があるので、すごく時間がかかるのだ。まあこちらとしては何回もだけど、向こうとしてはただの一回、しかも貴重な一回らしいから仕方ないと言えば仕方ない。元の世界ではそっち側だったしね。


「さすがの魔力ですな。これからお昼休憩に入りますが、午後は私の代わりにゴガが控えます。少々用件が出来ましたので」

「そうなのですか、ガギが側にいてくれたら安心できたのですが」

これはお世辞でもなんでもなく本心である。

「ありがとうございます。ご心配なされなくてもリン姫様はご立派に務めを果たされております。私でなければならぬ用件ですので、申し訳ありません」

「そうなのですが、仕方ないですよね」


昼ごはんにはフォークとスプーンが出来ていた。ありがたい。すでに緑色塗ってたからあの素手で食べるには抵抗があったし。

お昼を食べてから後半の謁見を再開してしばらく。

「リン姫様、大変申し訳無いのですが、今からの残りの謁見を延期にしてもよろしいでしょうか?」

とグゲが聞いてきた。


「どうされたのですか?」

「はい、先程湖にヒュージクラブが現れたようなので狩りに行こうと思うのですが、謁見がまだなのは私の配下が多いのです」

「ヒュージクラブ?」

「はい、たいへん巨大なカニです。ジャイアントクラブと比べると大味なのですが、それでも美味ですので」

おー、カニ! カニ食べるのね。それの狩りに行くのね。

「それは私がついて行っても大丈夫なものですか?」

グゲが大げさに驚いた。


「え? あー、まあ、問題はないかと思います、がリン姫様は狩りにも興味がお有りで?」

「カニは大好きですので、どんなものか見てみたいとは思いました。迷惑でなければ」

「分かりました。念の為警備を厳重にしましょう。ゲゴにも着いてきてもらいましょう。今ガギはいませんからね」

「ジュシュリの守りは大丈夫なのですか?」

「はい、実は言語のゴガや技巧のギグもかなりの戦闘力がありますので、問題ないかと」

へー、ギグは分かるとしてゴガも強いんだ。


正直、頼んだときは自分の足のことを忘れていた。ずっと座ってたからなぁ。あとで慌ててどうしようとか思ってたらゲゴがゴーレム出してくれるとのこと。……迷惑かけちゃったかなぁ。

「ゲゴ、ゴーレムの術は難しいのですか?」

グゲが率いるヒュージクラブ狩猟隊はかなりの人数だった。そんな彼らの後方にゴーレムに乗せてもらって付いていく。隣に付いて歩いているゲゴに聞いてみた。


「いえ、リン姫様のように大きな魔力がありましたら、それほどは難しくはないかと」

「私にできそうですか? 私が移動するたびにゴーレムを出してもらうのが心苦しいのです」

知的好奇心もあるのも確かだけど心苦しいというのも確かだ。以前がそうであったので自分ひとりで行動できないのはストレスになる。

「少々お勉強の時間がかかるかもしれませんが、リン姫様ならそれほど難しくなく覚えられると思います。謁見が終わりましたらしばらくはリン姫様の学習時間とさせていただきましょう」

「ありがとうございます、ガギには私からも言っておきますね。よろしくお願いします。ゲゴ先生」

「せ、先生などと……」

うろたえた感じでゲゴは少し離れた。仮面のせいで表情が見えないのは不便だな。嫌がっているんじゃなければいいけど。

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