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補給

だめだだめだ会議に集中しなくては。

「レニウム砦から周囲の支砦へ補給を行っているのですが、先日実地テストとしてジュシュリの協力の下、牛型ゴーレムを利用しての補給を支砦の一つ、ビスマスへ送ってみました。ビスマスへは片道約八時間の距離です。このテストの結果はたいへん素晴らしいものでした。細かくは主題ではありませんので省略しますが、まとめますと省力化、時間短縮、兵糧消費量減少などの効果がありました。欠点としては牛型ゴーレム自体が小型なため、一機では多くの物資は運べないということです。馬車だと人間一人でも大量に運べますからな」

砦長が地図のある地点を指揮棒で指しながら説明してくれた。仕方ないのでまたガギに抱えられて地図を見る。指し示した地点がビスマスという支砦のようだ。地図上ではそんなに離れていないように見えるからかなり大きな範囲の地図のようだ。すぐに下ろしてもらう。


「現状は【最果て】に対して我がレニウム砦が一番突出しております。ですから当砦を襲ってくることが多いのですが、まれに支砦のある場所に敵が来ることもありますので支砦は欠かせません。しかしながら補給に関しては我が砦の転移陣に頼っておりますので、当砦から各支砦への補給を行っております」

砦長が砦の形をした駒を地図に並べていく。砦で結ばれたラインが出来る。

「もっとも遠い支砦であるハッシウムまで休憩なしの強行軍で約二日かかります。途中の支砦が大きいところでしたらそこを集積所にもしておりますので、全ての支砦へ直接我が砦が補給部隊を送っているわけではありませんが、補給部隊の維持にはたいへんな労力と費用がかかっております。ですのでジュシュリの皆様がその補給部隊を担ってくだされば牛型ゴーレムも相まって、たいへん助かるのです」

確かにこのレニウム砦の規模に対して兵士の数が少ないと思った。周辺への補給に人手を取られてるのね。


「補給部隊が【最果て】のモンスターに襲われることはあるのですか?」

うちのゴブリンたちを出すなら最低限確かめておきたいことを聞いてみる。

「まれではありますが、過去に戦線に入り込んできた敵に補給部隊がたまたま遭遇したことはあります。かといってそのたまたまを避けるために迂回路を行く余裕はさすがになく……。しかしながらあやつらに補給線を狙うという知恵はないようです」

比較的安全というわけかな。


「早急に検討、取りまとめたいこととは以上の前提を持ってのことでした。簡単に装飾抜きで言いますと、独立部隊ジュシュリに各支砦への補給部隊へのご協力と、馬型ゴーレムの開発、でございます」

「馬型? 理由をお聞かせ願えても?」


「はっは、ちょっと省略しすぎましたね。実地テストのところで申しました通り、従来の牛型ですと小回りが効くのはいいのですが、大量の物資を運ぶにはやや不向きなのです。ですので従来どおり馬車による輸送が欠かせないと考えるのですが、その馬をゴーレム化できればさらに良いのでは?と考えた次第です」

ああ、なるほど。ジュシュリに車輪の技術自体はあったものの、それを有効活用できる場面がなかったから牛車もなかったので考えもしてなかった。けどこの要請、意外と難しい要請な気がする。


「なるほど、確かに馬型のゴーレムもあると、ここでは便利そうですね。しかし馬車を引っ張れるほどの力がいるのですよね。頑張って開発してみますが、すぐに出来るかどうかは分かりません」

「そうですか。馬のための飼葉は大量にいりますので、馬そのもののゴーレムが出来ましたら革命になるかと思いますし、我らも助かります。出来ましたら前向きに早めに検討していただけると幸いです」

難しい、がなんとかしないと大型ゴーレムの発展もないだろうし、頑張ろう。


「はい、馬型ゴーレムの開発はお受けします。ジュシュリの補給部隊への支援ですが、これは持ち帰っていいですか?」

「もちろんでございます。ただ周期的にそろそろ【最果て】の襲撃があると思われるので、できるだけ兵員を残しておきたいのが正直なところです。すでにいろいろと助けていただいているのになんですが、何卒前向きにご検討お願いいたします」

砦長もいろいろとやりくりが大変なのかもしれない。まあそれはそうだよね、相手は湧き出てくる敵でこちらが得られるのものは敵モンスターを倒したときの素材ぐらいなのに、相手の主力であるジャイアント系は何の素材にもならないしね。ヒュージアントはこっちでも有用なようで死骸を回収してたけど。

「検討のために、補給部隊は今何部隊編成されているのですか?」


「少しややこしい編成をしておりますので、部隊数がいくつとは言いづらいのですが、小規模短距離補給が三、大規模長距離補給も三必要となっております。今回テストしたのは小規模短距離でしたので、牛型でもあまり問題はなかったのですが、大規模長距離となると牛型ではいくらあっても厳しそうでして」

地図上に各砦を配置して見せてくれた。集積場所として使える大きめの支砦は三つあるようだ。ガギに再び手早く抱っこしてもらって地図を見て、だいたいの配置をしっかり記憶した。


なるほどね、これは至急相談しておきたいね、砦長の立場としては。

「分かりました。持ち帰って検討させていただきます」

とガギに抱っこされたまま言ってもかっこつかないよねぇ。しかし砦長は大真面目な顔のままで返事してくれた。

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