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仮面

「それは、いったい? リン様、ガギ?!」

おじさんのギグが驚きの声をあげる。四人は騒然とした雰囲気になってる。予想だにしていなかったという感じだ。

「落ち着け、ギグ。リン様は特殊な病を発症されているらしいのだ」

「特殊な……発症……?」

「去年、真っ白な子が生まれたであろう? 残念なことにすぐに亡くなってしまった、あの子の症状を色素欠乏症という。リン様はあの子同様に肌に色がないのだ」

ギグは頭の中で何かが巡ってる感じで私の白い手とガギの顔を見比べている。


「お、おう……?」

「色素欠乏症は生まれつきのもので肌に色がなくそれ故に肌が弱いのだ。だからあの子が生まれてから急いで作った薬があったのだが間に合わなかった。今リン様はその薬を塗っているのだ。それに最初から白い肌を晒しても良い結果にはならぬと判断した」

普通の色素欠乏症、アルビノには色素自体がないため、目の色も髪の色もないはずなんだけど、それは言わないようだ。実際ガギ以外の、もしかするとガギにもその知識はないようだし、保身のためにもわざわざ言う必要はなさそうだ。


四神官は顔をお互いに見合わせて頷いた。

「片足がなく肌が弱いとは、なんとお労しや……」

彼らは私を心配してそう言ってくれた。騙してる感じだからすごく罪悪感はある。けどガギの狙い通り、その説明のほうが良いとも思う。


「その代わりなのかもしれないが、リン様は我らハイゴブリンから見ても大きな魔力をお持ちだ。片足は隠しようがないから皆に見せたが、肌は当面、五神官周辺の者と側仕えのみとしたい。このような状況なので、しばらくでもリン様の秘密を隠しおおせる側仕えをつけたい。今日のところは我らが側仕えの真似事をすることになるが、なるべく早急にリン様専属の側仕えを揃えたいのだ。皆の協力を頼んでもいいかな?」

「口が堅い以外の条件はありますか?」


「そうだな、五名は欲しいかな。うち二名は護衛だ。口が堅く強い者を、片方は女性がいいだろう。残る三名は身の回りを世話をするものだ。一人はハイゴブリンの方がリン様も安心だろう。あとは年が若いものと経験豊富なものだな。残りの一人は男でも構わんかな」

「すぐに思いつくのはデゥズですね。彼女は経験豊富でかつ色素欠乏症の子の母親でした。きっとリン様に誠心誠意尽くしてくれるでしょう」

言語のゴガが早速提案してくれた。


「確かにデゥズは良いな。デゥズは早速採用しよう。我らだけでは心配であった。しかしデゥズはゴガの側使えであろう? 良いのか?」

「はい、わたしには他にも側仕えがおりますし、色素欠乏症に理解がある側仕えがいるとリン様も安心できましょう。確かに寂しくはなりますが、デゥズも喜ぶことでしょう」


では、さっそく、と仮面をつけ直してゴガは退出していった。それに合わせて皆も仮面をつける。わたしもつけたほうが良いのかな? 軽いからいいんだけどずっと持ってるの面倒なんだよね。それに真横に置いてるとはいえ、片足では取りに行くのも面倒だし。


とカバーをちらちら見ながらためらってると、ガギに跪かれた。

「たいへん言いにくいことなのですが、仮面を他人が触るのは禁忌となっております。お手を煩わせて申し訳ないのですが、ご自分で仮面をお取りいただくよう……」

そうなんだ、めんどくさいなぁ。今回は仕方ないとして今後もずっとこうだとしんどいなぁ。どうにかならないかな。

そう思いつつ、椅子から降りて仮面を持つ。両手を塞ぎながら片足立ちって結構難しいのよね。なんとかこなして椅子に座り直すことが出来た。その様子を見ていたガギが、技巧のギグを呼ぶ。


「ガギ、なんだ?」

五神官にも一応序列はあるみたいだったけど、あまり関係ないのかな。明らかにギグがガギより年上だからなのかもしれないけど。

「リン様の仮面はジュシュリのものではないので、不便なようだ。何か改修は出来ないだろうか?」

「裏の詳細を見せていただくことが可能であれば提案できるかと」

ガギにではなく私にギグは言ってきた。

「ええ、いいですよ。申し訳ないのですが私の後ろに回っていただけますか?」

私はハイゴブリンプリンセスらしいので、なるべく姫様と呼ばれるにふさわしい言動をしなくちゃ。そう思いつつ、丁寧に言った。まあ私の姫様の知識とか漫画とかアニメとかの知識でしかないんだけどさ。


ギグは私の後ろに回って私の後頭部越しに仮面の裏を見る。

「ほほう、取っ手がついているのですな。ふむ、なるほど。上にも使われていない取っ手がありますな。このような構造であるなら加工なしで部品を追加して魔法をかけるだけでなんとかなりそうですね。見た目よりずっと仮面は軽いようですし」

魔法! さすがファンタジー世界。やっぱり魔法あるんだ。さっきのゴーレムとかも魔法なんだろうな。思わず振り返ってニコニコしてしまう。

「そうなんですね、ありがとうございます。さっそくその部品とか魔法とかお願いしていいですか?」


ギグはたじろいた格好で一歩下がった? あれ、なんか悪いことした?

「その、たいへん光栄ではあるのですが、我らにあまりご尊顔を照らされるのは、その……」

ああ、そうだった。ジュシュリのゴブリンたちは顔を隠す文化なのだった。

「あ、はい、ごめんなさい」

しゃっと正面に向き直す。

「基本的に好きあったもの同士が顔を互いに見せ合うものなのです。例外的に貴方を全面的に信用しています、という意味で顔を見せるということもあります。今回はそれでした。それにそうでないとお世話するものをつけれませんからね」

ガギが解説してくれた。めんどくさいとも思うけど、文化なら仕方ない。


「すぐにでも部品を作らせていただきたく。頭の寸法を測りたいのでお御髪に触れてよいでしょうか?」

「ギグ、例え五神官であっても男の貴方が姫のお御髪に触るなど……。代わりにわたくしが測ります」

「ああ、そうだな、代わってくれるのならその方がいい、しかしゲゴに測れるのか?」

「バカにしないでください。わたくしとてゴーレム創造の際寸法は気にします」

おじさんが美人に気圧される図。まあ確かに私としても男性に頭触られるよりは女性の方が気が楽ではある。


そんなこんなでゲゴに頭のサイズを測ってもらった。頭に固定する部分を作ってくれるのだろう。ヘルメットの構造みたいな? 蒸れない感じだといいんだけど。

ゲゴに私の頭のサイズを聞いたギグは、さっそく制作するために出ていった。


「リン様のお世話はデゥズが来るまでわたくしがさせていただきます。ほら、あなた達は見張りでもしてなさい」

優しい声だけど有無を言わさない強い口調で残ったガギとグゲに言う。二人は文句を言うことなく、グゲは出ていき、ガギは杖を回収して側に控えた。

「風呂とお食事を用意させていますので、移動いたしましょうか」

そう言って、ゲゴは床に小さな石を置く。そして何やら唱えると、その小さな石がボコボコッと大きくなって人型になった。

「軽石で作ったゴーレムですわ。魔力はなるべく込めましたが、リン様の魔力をお借りするかもしれません」

ゴーレムがその大きな手を差し伸べたのでその手に背中を預ける。手が大きいのでお姫様だっことはいえないけど、似たような感じだ。


先にガギが建物から出て、ゴーレムにゲゴが着いてくる形で建物から出た。

外はすでに暗くなっていた。けど、まるで祭りのような感じで篝火がたくさん焚かれ、ゴブリンたちが飲み食いしていた。そこには私が持っていたイメージそのままのゴブリンたちがいた。彼らの大半は仮面といってもマスカレードマスクなので気軽に飲み食いできるようだ。私もあれでいいよ、とすら思う。ゴブリンたちはイメージ通り、木の実や生肉、しかも血がしたたってるようなのを喜んで食べていた。うへぇ、もしかしてゴブリンの食事って生肉なの?

と思ったけど、ある一団がハイゴブリンだけで構成されていたのでよく見てみると、焼いた肉を食べている感じだった。良かった。ハイゴブリンとゴブリンは食性も違うのね。わたしはハイゴブリン扱いされているからきっと焼き肉だろう。生肉出されても食べれないからね! いや、新鮮な一部の肉なら食べられるんだろうけどさ。さすがに血がしたたってるようなのは無理。

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