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ゴブリンの立場

「移住先を探していると聞き及びまして、我が帝国へ来られるのはどうでしょうか?」

ヒュージアント大量襲撃のあった晩、こちらの夕食会に招いたハームルさんが私にそう話しかけてきた。


おそらくハームルさんに移住の話をしたガギはというと、人間の兵士と私の実家から持ち出したお酒で一杯やっている。ただハームルさんが私に話しかけているのは見ているようなので、私に任せる、ということなのだろう。

「ありがたい申し出ではありますが、それはいったいどういうことなのでしょうか?」


「まずはリン様の保護、そしてリン様が発案されたというあのゴーレムたちですな。そしてゴブリン族、そのものにも帝国にとっては価値があるのです、実際前例もございます」


ガギめ、ペラペラと話してしまったようだ。けどガギほどのものが、いくらハームルさんがやり手でもやり込められるとも思えない。何か考えがありそうだ。実際今のこのジュシュリの状況でなら、ゴーレムや私を売りつけてでも帝国へ行った方が良いのかも知れない。


「その……私は帝国というものそのものを知りませんし、人間との交流も覚えがありません。それにゴブリンたちが帝国でどのような立場におかれているのか知りません。まずそのへんを教えていただかないと返答いたしかねます」


「それもそうですな。このへんで帝国は我が帝国以外ありませんので、帝国で通じます。レザントという名がありますがさして重要ではないでしょう。現在はエドワード陛下の治世であり、私はその帝国が抱える軍団の一つ、第四軍の将軍付きの参謀であり、今は陛下の命で動いております故、それなりに独断でことを進められます」


そこで一旦区切ってお酒を飲んだ。ハームルさんは私の横近くに席を作ってもらったので、小さい声でも聞こえる。もちろん間には護衛のザービが立ち、すぐ近くにブゥボもいる。


「ゴブリンたちですが、帝国の北の街で一時期ゴブリンの部族が帝国に組み込まれました。しかし一般的にはハイゴブリンは別として、ゴブリンたちはモンスター扱いではあります」

けっこう正直に言ってくれたようだ。……そうか、モンスターか、亜人ですらないのね、扱い。


「ハイゴブリンは私も初めて見たレベルですので、帝国での一般的な扱いは言えません。だからこそ今後次第でゴブリンの地位を変えることも出来るかと思っています。少なくともここジュシュリのゴブリンはよく統率され、他のゴブリンより知能も高く見えます」

そうなんだ? この世界でのゴブリンの平均とは、ジュシュリのゴブリンは違うのかもしれない。


「その、北にいたというゴブリンたちはどうだったのですか?」

「直接見たわけではないので伝聞ですが、指導者層のゴブリンは我ら人間なみですが、下位のものたちは粗暴でモンスターと変わりなかったと聞いております」

うーむ、そうなのかー。ジュシュリのゴブリンにモンスターを感じたことないなぁ。知能も人間とそう変わらないと思うし。


「受け入れてくれますかね? モンスター扱いされている部族を?」

「少なくとも帝国の法的には問題ありません。ちょっとこれは正直に言うのもどうかと思うのですが、ジュシュリのゴブリンたちをリン様の持ち物と規定すれば保護の対象にすら出来ます。あとは人間と変わりませんよ。ゴブリンたちが、ジュシュリが役に立つ、とわかれば否定的であった者も手のひらを返すでしょう。そのための力、ゴーレムもありますし、そのへんは私はまったく心配しておりませんよ」


ゴーレムの力か、もともと私の思いつきで開発してきたものだけど、そこまでのものになったのかな? けど実際、ゴーレムはともかくとして今の私の義足、これが帝国に普及したら困っていた人が多く助かるのも事実だと思うし。ガギは神話の時代から知識を受け継いでいると言っていたし、それがあってのことだったら、人間にもそうそう真似はできない優位性はありそうだ。


「リン様が行く末をご心配なされるのは当然かと思いますが、私は楽観視しておりますよ。無責任にではなく、ね」

なんだかとても私やジュシュリを高く評価してくれているようだ。悪い気はしないけど、部族の命運がかかっていることだから、うかつにほいほいとのるのも怖い気がする。


「検討、させてもらえますか?」

「ええ、もちろんですとも。こんなこと即断は求めませんし、私もジュシュリに滞在していろいろと見聞きしたいですしね、調査がありますのでその時間もありますし」

「ありがとうございます、ここを離れるにしてもやっておきたいことが山ほど残っておりますので……、返事はなるべくハームル様がおられる時にしたいと思いますが……」


「ええ、ええ、リン様の自由意志に任せますよ。正直ついでに言いますとリン様の保護以外、ジュシュリやゴーレムはいわゆる【めっけもん】っていうものですしね。残念なことにジュシュリを帝国に組み込めなくても、もともと帝国にとってはなかったもの、何の不利益もございませんしね」

本当に正直すぎる。正直すぎて逆に勘ぐってしまうレベルだ。私以外はどうでもいいということ? 私にどんな価値があるというのだろうか? 帝国に行ったら政変とかに巻き込まれるとかそんなレベルなの? うーん。

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