条件
御輿に乗せられて来たのは、ドラゴンとテルルの領主様との面会の場だった。領主様は最近復帰なされたエカテリーナ・ブレゲ様だ。今まで領主代行をされていたセレナ・ブレゲさんの御母上とのこと。確かにそっくりでセレナさんがあと2,30年ほど年を取ったらこんな感じになるだろう、と思わせる見た目の方だ。若い頃はセレナさん同様美人だったんだろうな、いや今も美人だな、と思える方だ。
セレナさんも同席されていて今は補佐という感じだ。他には第一軍第二師団のセルウッド師団長や第二軍第三団のガーランド団長も。
ドラゴン側はもちろんドゴちゃんで、ドゴちゃんは喋ってくれないので、代わりに竜導師のドーガさんがエカテリーナさんと話をするみたいだ。側には騎士のヘルマンさんも控え、捕虜のファゼンさんもほぼ自由の身としてドゴちゃん側で話に参加するようだ。
わたしはドゴちゃんを連れてきた責任として双方の立場、すなわち中立として立ち会うことになったっぽい。細かいことは無理をしてまだ居続けてくれているガギとそのガギから事情を聞いているゲゴも参加して対処してくれることになっていた。……二人には余計な仕事を増やしてしまって申し訳ない、とは思うものも、これを回避することは出来なかっただろうな、とも思う。
話し合いは特に大きな問題もなく終わってくれた。ガーランドさんが少し不満そうだったけど、まあ仕方ない。ドゴちゃんが神聖クテーヌス王国全体の権限を持っているわけじゃないんだし、ドゴちゃん自体に恨みを持っている人もいないので。だから話は終始、今後のこととドラゴンの遺体をどうするかだった。
ドゴちゃんとお付きの二人は当分の間、戦闘で負かせたわたしの配下としてテルルにとどまり、わたしが王国に進軍するならそのときもついていくとのこと。進軍しない場合は、テルルからわたしが離れると同時に王国へ帰還する、と決まった。わたしに負けたとはいえ、戦争で、ではないし、特にお付きの二人は別にこちらに悪いことをやったわけではないので。また捕虜であるファゼンさんと生きている竜二匹は竜導師ドーガさんの配下となり、釈放となった。
釈放と言うより解放かな。ドラゴンの遺体と交換、という形になったのだ。ドラゴンの遺体は全て鱗と爪、牙、角、トゲ、血液を回収し、残りの部分はドゴちゃんの血で染まった土地で焼却処分後、その場に埋葬となった。
それらの作業の技術はわたしの配下であるゴブリンに直接竜導師ドーガさんやファゼンさんが教え作業することになった。またテルル滞在中におそらく生え変わるということで、ドゴちゃんの逆鱗、すなわち火竜の逆鱗も提供してくれるとのこと。かなり価値のあるものらしい。
帝国ではドラゴンの鱗は激レアなので相当な資産価値もあり、テルルとしては十分な見返りらしい。さらに軍需素材としても優秀だから文句無し、だそう。王国としてはありふれた素材なのでパワーバランスが一変することはないだろう、とドゴちゃんは甘い考えを持っているようだけど、わたしはドラゴンの鱗が錬金術師のハイドワーフ、サキラパさんに渡れば、わからんよーとは思っている。
ただ、話し合いとは関係なく、わたしもそれまで忘れていたけど、王国に送った偵察のルオンの帰還が大幅に遅れていた。




