側仕え
火竜ドゴスゾーラと戦いに行って、その火竜に乗ってちゃんずけで呼びながら帰ってきたんだから、わたし以外のトップの人たちは呆れるやらびっくりするやらでたいへんだった。
帰ってからはガギ主導で全身をくまなく検査され、実際足の裏も火傷していた。靴履いてたんだけど、熱は貫通していたようで、靴はもう修理不可なレベルまで傷んでいたそうだ。
「片方だけだし、痛くないから気付かなかった」
「痛くないのは当然です、そういう魔法をかけているので。ですが痛みというものは負傷や不調に気づくためにあるものです、それを無理やり抑え込んでいるのですから、そこは気をつけていただかないと……」
靴がそんなことになっていたから義足も傷んでしまったかもとゼルンに渡した。軽いチェックでは大丈夫そうらしいけど、詳細にチェックするとのこと。
予備として以前に使っていたものを渡されたけど、正直今となっては使い勝手が悪いのでつけたくない。それはイコールわたしは歩けないなのだけど、怪我をしているのも確かなので動かないことにした。
足の裏にはやくそうを貼り、痛み止めは長時間持つが効力が弱いものだとすこし痛むので、短時間だけだけどとてもよく効く方を何度もかけてもらうことになった。今ではハイゴブリンでも痛み止めの魔法を使えるのもいるし、ガーランド団長やセルウッド師団長、領主様からも一部の特殊技能持ちの兵士が医療従事者として派遣されてきている。
君たち過保護すぎない?
まあありがたいし、足の裏の火傷とか重症だとかなりやばいのも確かだけどさ。軽症で良かったよ。でないとテオン様を連れてくるために皇帝陛下まで来そうだし。
次の日、ぐっすり寝れて、手足の方も痛み止めの魔法なしでも痛くなくなっていた。やくそうすごい。ただまだ念の為、ということで両手足の裏には新しいやくそうが貼り付けてあって自由はない。昨日夜や今朝の食事もあーんで食べさせてもらう形式だったし。
あーそうそう、テルルに2年前までずっとお世話になっていた側仕えの女性ゴブリン、デゥズが来てくれていた。
わたしが眠りに入ったあとは、もともと仕えていたゴガのもとにいたけど、わたしのお世話役として再び来てくれたらしい。今までは人間のメイドさんに頼っていたからね。
彼女は若干痩せていたけど以前通りで、忠実で優しいおばさんゴブリンだ。
デゥズによるとわたしの元側仕えは全員元気にしているらしい。特に料理人だったゾダィは人間とのやり取りが増えたため、ゴブリン側の料理人として大活躍して、今は弟子をたくさん抱えてゴブリン料理人の育成に励んでいるらしい。
そんな話を食べさせてもらいながら聞いた。
食べ終えたあと、外で御輿が待っていると言われた。 ?を飛ばしていると足の裏がまだ安静ということなので自力での移動は禁止。御輿での移動になる、とのこと。ベッドから御輿まではザービが運んでくれるとのこと。ザービも久々だ。ハイゴブリンの護衛だったが、今は護衛というか戦士の仕事はやめたらしい。あとで会った時に聞いてみるか。
と思っていたらザービが来た。彼女も人間の近くで生活しているので人間っぽい服を身に着けている。けっこう高級っぽい。一応帯剣はしているみたいだけど格好はお嬢様みたいだ。なんでも人間のところで訓練をしていたらしい。言葉を濁していたが、いつか復活するであろうわたしの侍女になるための。
確かにゴブリンとしては侍女にあたるものはいなかったはずだし。側仕えはいたけど。人間側の礼儀作法を知っているゴブリンとかいいところガギぐらいしかいなかったからね。
今回は皇帝についてきて戦うって話だったので、まだ侍女や側仕えはいらない、むしろ邪魔になるかもと
控えていたけど、わたしが怪我をしたと知らされ慌てて送り込まれてきたらしい。……やっぱり過保護だな君等は。けどガギは今こちらにいるし、誰の判断なんだろう?




