褒美
わたしの手のひらの火傷は落ち着いた。火傷だからひどい痛みがあるはずだけど今は痛み止めの魔法でほぼ傷みはない。本当は痛いんだろうなぁ、みたいなむずがゆさがあるだけだ。
しばらく火竜ドゴスゾーラの前足の爪にやくそうの葉っぱを挟み込んで触れたままでいる。わたしの癒やしの力もやくそうで増幅されているのか、あるいは火竜ドゴスゾーラの回復力が著しく高いのかもう魔力が押し返されてきた。
あれだけどぱどぱ血が出た傷がもう完全に塞がって、どこか欠損していたとかはないようだったので元に戻った、回復しきったようだ。魔力がもういらないならと半分ぐらい回復したところでパサヒアス様の指輪は停止する。
火竜ドゴスゾーラはあれから黙っているので、わたしも話しかけず辺りを見回す。ここは草原だったのだけど、周囲は焼け焦げている。実際火竜ドゴスゾーラの付近は暑く、たぶん戦闘ともなると草が発火するほどなのだろう。
しかしそんな焼け野原だったところに火竜の血が流れ込んだせいか、新たな草が生えてこようとしている。さすがに目に見えるスピードではないし、まだ火竜がいるので芽吹きだけだけど。
火竜ドゴスゾーラが長い首を曲げて足元にいるわたしに頭を近づけてきた。わたしなんか一飲みに出来る大きさだ。さっきわたしが頭の上に乗れるほどだしね。
『そうなるとは思ってもいなかったが、わしは負けた。わしはただ戦いたかっただけじゃったから、わしが勝ったときも何も要求はなかった。ので深くは考えておらんかったがリンがわしに勝った褒美をくれてやらんといかん。何が良い?』
「ああ、そういうことならドゴちゃんが神聖クテーヌス王国との窓口になってくれない? 引き上げていったとはいえ、これからいろいろとあると思うし」
『ドゴ、ちゃん? はっはっは。わしをそんな風に呼ぶものは流石に今までにもおらなんだなぁ。分かった。わしがとりなしてやろう。わしは竜協会に所属しているが、お前の、リンの味方だ。お前のバックにも気を使うようにしてやろう』
『ようやく戻ってきおったな。トーガだ。わしのお付きの竜導師じゃな。こやつは頭が硬いが辛抱強いので認めてやっている。そうじゃ、リンだけだといろいろと面倒なこともあろう。そこの緑色のつがいともわしと話す権利をくれてやろう。まずはリンが緑に説明せい。トーガがここにたどり着くまでまだしばらくかかるじゃろうから』
確かに火竜の向こう側から先程の騎兵が駆けてきている。おじいさんも乗っている。あのおじいさんがトーガね。
ん? なにか違和感が。
えっと、ガギもドゴちゃんと話できるようになるのね。……違和感はそこか。
「ドゴちゃん。彼は、ガギはつがいじゃない。わたしの後見人よ」
「リン姫様? 確かに私はリン姫様の後見人でもありますが」
「ああ、いや、ドゴちゃん、火竜ドゴスゾーラが念話で話しかけてきていたの。これからはガギにも念話で話しかけるってさ」
その直後からドゴちゃんに話しかけれたようで、なんかいろいろ言っていたけど、まあいいか。




