アイスストーム
テルルの北門まで飛んでいくと向こうに大きな赤を見ることが出来た。……あれが火竜ね、大きいな。んー、周りに、というか橋の近くの水路にも竜がいるね。あれは水竜? それともブルードラゴンかな? 結構大きいから水竜かな。
さすがにエレメンタルドラゴン二匹同時は厳しい、そんな話ではなかったはずだけど。と思っていたら、火竜の近くに先程の騎兵を見つけた。おじいさんの竜導師も一緒に乗ってるみたいだ。
いきなり襲ってくることはないと思うけど、一応警戒しつつ近づいて降りていく。近づくとすぐに二匹のエレメンタルドラゴンはこっちを向いた。強い視線を感じる。……特殊能力とかじゃないよね、ただ見られている、というだけだよね。……圧が強い。
降りた瞬間、ふっと強いフォースフィールドをガギがはってくれた。使うだけならそこまで魔力かからないからいいけど、警戒してくれているようだ。様子を見ながら恐る恐るキャノピーを開け、顔を見せる。
「失礼します、申し訳ありませんがゴーレムに乗ったままで。なんだかエレメンタルドラゴンがニ体いるんですが?」
もちろんお互い拡声の魔法を使っている。魔力を使うのは嫌だけど、まあこれは仕方ない。
おじいさんは火竜と話ししている感じだ。翻訳してくれている感じかもね。残念ながら火竜の声は聞こえなかったので、わたしは何を言ったのか分からない。
「水路にいるロミンティス、水竜のことですな。あやつは見届け役なだけでして、手出しは一切させぬ、とのことです」
「おじいさん方はどうされるのですか?」
「わしらは始まったらもっとずっと後ろに下がります。邪魔にならないようにね。あとどちらかが著しく劣勢に見えたら止めるかもしれません。火竜ドゴスゾーラは殺すつもりはない、と言っておりましたので」
「? 殺す気でこないの? なぜわたしたちを指名したの? 恨んでるとかじゃない?」
「はい、あの雷竜クーヴァリエンをなすすべなく屠ったというあなたと思いっきり戦いたい、と。強さだけが肝心とのことです。ご納得いただけないかと思いますが、あれはそういったモノなのです」
と遠くからでも明らかにため息をつき、肩を落としながらそう言ってくる。やっぱりバトルマニアのたぐいか。そんなのに絡まれるのは嫌だけど、グゲのことはバレていないようだから、このままやるしかなさそうね。
「分かりました。影響が無いようできるだけ離れておいてください。わたしの行動半径は広いので。では開始のタイミングはどうしましょうか?」
またすこしごにょごにょと火竜とおじいさんは話をしている。
「はい、そちらが再び浮かび上がり、こちらに攻撃を仕掛けてきてから、だそうです」
「先制攻撃を許す、と? ずいぶん舐めてくれていますね。まあ文句を言っても聞かないでしょう。分かりました。ではお二人は離れてください。見えなくなったら始めます」
わたしの言葉を火竜に伝えてから、おじいさんを乗せた騎兵は去っていった。去っていくまでの間にガギと作戦会議をしておく。とりあえず初手はアイスストームをガギが放つことになった。
望遠の魔法を一応使って、それでも騎兵が見えなくなるまで待った。さすがにもういいでしょう。
レビテーションでふわりと浮かび上がり、フライをかけて火竜の上をぐるりと回る。上から望遠でも騎兵は見えなかった。大丈夫そうだ。一度テルルの方へ戻り、火竜に向かって飛ぶ。アイスストームの射程はそれほどないから、結構な低空飛行になる。
「では発動させます」
火竜がいた辺りが白い霧に包まれ、その中で氷の嵐が吹き荒れた。




