申し入れ
「私はこちらの軍師、立場で言えばナンバー2の、ジョージというものです」
おお、この人が軍師のジョージさんか。これはいいタイミングかも。
降りるわ、という一言でベフォセットは嫌悪のオーラ? 気配を出したけどすぐにそれはなくなって、従ってくれた。のでふわっと三頭のレッドドラゴンが頭を垂れている先に着陸した。
拡声魔法を使ってから、ジョージさんにこちらの都合を押し付ける。
「私はテルルでトップ5に入り、おそらく意見は聞いてもらえますので、私でいいですか? その際は人払いの魔法を使用したいのですがいいですか?」
「え? あ、はい。お聞き入れいただき感謝します。人払いは、分かりました。ただこちらの護衛2人はいてもいいでしょうか? 言葉は分かりませんがレッドドラゴンも」
「いえ、申し訳ありませんが護衛2人には下がっていただけませんか? 御者の方も。レッドドラゴンはいいです。もちろん攻撃その他、そちらへ危害を加えないことは約束します」
べフォセットが人間の姿で先に降りて、私が降りるのを手伝ってくれる。私がトップの方だって少しは納得してくれるかもしれない。
三人は少し話し合ったあと、護衛だと思える二人と御者の人が下がっていって、範囲外になった。
「私も人払いが使えますので、私が制御していいですか?」
ジョージさんが言ってくれた。私は使えないのでべフォセットに頼むつもりだった。……特に不都合なことはないと思えるので、お願いした。
ジョージさんはポーチから何かを取り出して、放り投げた。それを中心として人払いの魔法が発動したことが感じられた。
「ありがとうございます、ジョージさん、でしたっけ? お噂はかねがね」
「ははっ、やはりご存知でしたか、ならば話は早いですね。あなたは帝国製ゴーレムを開発したとの噂のお嬢様ですよね。まさか前線に出ているとは思いませんでしたが。お話したいことは二つあります」
なんだろう? こっちのこともバレてたようだけど妙な安心感がある人だ。同じハーフエルフだからだろうか? いやテオン様にそんなものは感じなかった。テオン様自身が良かっただけだ、ということはこのジョージさんも基本良い人?
「一つは戦争の中断を申し入れたい。停戦ですね」
「は? いえ、失礼。少し調子が良すぎませんか? こっちは攻められたので反撃しているだけですが」
「申し訳ありません。非常に自分勝手だと解っていますが、理由も2つあるのです。一つは非常に個人的なことではありますが」
まあそんなところだとは思ったので今話し合いに応じているんだけど、本当に軍師なのか?ってレベルだなぁ。
「個人的な理由からお話させてください。えーと、この空飛ぶゴーレム、|可動膝関節による有翼地面効果支援兵器、ですよね? もしかして日本という国をご存知ではないですか?」
ああ、やっぱり。
「やはり人払いをしておいて正解でしたね。はい、私は日本出身です。どういうわけか、この世界にいますけど」
「やはり、ですか?! 私はもしやと思っただけでしたが、そうでしたか。積もる話もありますが、まずはこの決着をつけたく。同じ日本人なら解っていただけると思いますが、戦争は嫌なものでしょう? 戦争を起こすこと自体を止められなかったのは私の不徳ですが、そこまでの力は持ってないんですよ、私はただの会社員だったので」
「私も今の見た目はこんなですが、会社員でしたよ、研究職でしたが」
「研究職?! それはすごい。だから|可動膝関節による有翼地面効果支援兵器なんてこの世界で作り出せたのですね」
同じ日本人に素直に褒められるのはくすぐったいが、実際研究職なんてものにつくぐらいには知識はあったつもりなので、そこはそうかもしれない。謙遜し過ぎは日本人の悪い癖だ、と思っておいて。
「ほとんど幸運に恵まれたおかげですけどね。研究職と言っても末端でしたし」
「なるほど。会話する機会を多く作りたいですが、今はお互い立場もありますし、なにより状況が悪い。ので、少しでもよくしませんか?」
「理由は2つある、と聞きました。今一つは聞いて納得しました。もう一つは?」
「はい、こちらも非常に自分勝手であれなのですが。本国と連絡が取れなくなっています。原因は不明ですが、今まで本国の命令に従って、そちらを攻めていました。その命令が止まった今は、私どもとしてはあまり貴方がたを攻撃する理由がないのです」




