蹂躙?
レッドドラゴンたちの上を取り、その場で旋回する。ゴーレムたちが弓で狙ってくるけど、空を高速に動く相手は慣れていないようで、当てられる気配もない。ただこちらのボルトは現在対ドラゴン用にゴブグレ搭載のものしか持ってきていないので、ゴーレムを排除しにくい。ゴーレムのすぐ近くにゴーレムを操っている操者がいるからね。ゴブグレボルトだと過剰火力で殺してしまいかねないから、なかなか撃てないのよねぇ。覚悟してきたつもりだったけど、やっぱり相手を殺さずにすむならそうしたいって思ってしまう。
なのでもっぱらゴーレムの排除にはベフォセットの魔法に頼っている。最初対ドラゴン用の魔法だからと【デーモンフォール】系の魔法の使用を言ってきたけど、それは即座に却下した。あれは確かに威力あるし範囲も大きいので、おそらく一発で戦局をひっくり返せはするけど、虐殺することになるからね。ドラゴンだけでなくゴーレムの操者も一般兵士も皆巻き込んでしまうから。
だから今ベフォセットに許可している魔法は、エネルギー系だけだ。魔力を直接ぶつけるのと同等クラスの効率の悪い魔法だけど、何にでも効くし、周りに影響を与えにくいので、特にゴーレム相手の場合は、【エネルギージャベリン】で一体ずつ潰してもらっている。操者や一般兵士の攻撃はこちらに通用していないのであえて無視している。
問題はレッドドラゴンだ。あれから何発かゴブグレボルトを当てているが、全然戦意喪失をしない。すごくタフでかつ炎が効かないようなので相性が悪いみたいだ。ゴブグレは基本熱による攻撃が主で衝撃や破片などの物理攻撃もドラゴンの鱗には大きな影響を与えにくいからだろう。
そこを分かった上でべフォセットが提案してきたのが【アイスストーム】だったんだけど、ドラゴンたちの間にゴーレムとかいるので、今それらを排除し、範囲内にレッドドラゴンしかいない状況にようやくできたところだ。
しばらく前にこちらに追いついてきた飛行先行量産型08には警戒飛行をしてもらっている。いつまたイエローなどの空飛ぶドラゴンがこちらにこないとも限らないので。イエロー自体はだいぶとやっつけたはずなので、もうそうそうこないと思うけど。
テルル側の味方は、今は私達の戦いを見守っている、という感じで、こちらには一人たりとも通さぬといった姿勢ではいるけど、反撃は控えているようだ。こっちが何をやるのか、やろうとしているのか分かってくれていて助かる。
ベフォセットの【アイスストーム】が発動し、目下のレッドドラゴン3体が巻き込まれる。即座に付近のおそらくゴーレムの操者から魔法解除の【アンチマジック】が飛ぶけど、べフォセットの魔力を打ち破れる人間がそんなにいるとも思えない。その結果、こっちはしばらく旋回しつつ待機していただけでレッドドラゴンの体力を大幅に削り、実質やっつけることに成功した。もうブレスで反撃するのも、竜の咆哮でこちらを威嚇するのもやめたようだ。
レッドドラゴンたちは次々とさっき知ったドラゴンの降伏の姿勢を取り始めた。それを見たゴーレムや兵士たちは後ろに下がっていく。今回はあのレッドドラゴン3体のみだったようだ、ドラゴンは。
周りに襲ってくるものがいなさそうなのを確認してから、フライを切って、レビテーションに切り替え、レッドドラゴンたちがうずくまる場所に降りることにした。降伏を受け入れるためだ。
後ろに引いていたはずの鉄製の屋根を持った馬車が一台、こちらに駆けてくる。他のものは全員撤退をそこで止めていた。まだレッドドラゴンのブレスも届かず竜の咆哮も無効化できる高度なのでそこで止まって様子を見る。
攻撃してきたり、レッドドラゴンたちになにかするつもりではないようだ。なんだろう? 害意は感じないので、降りることにした。べフォセットは念の為フォースフィールドの魔法を準備しておくらしい。
馬車からなにか大声で言っているのは分かっていたけど、何を言っているのかまでは聞き取れてなかった。降りてきて距離が近くなるとさすがに分かるようになってきた。結構素の言語はこちらのものと違うけど、少しきつめの方言程度の差しかないようなので、問題はなさそうだ。
レッドドラゴンたちは降伏の姿勢を崩さないけど、やってきた馬車を気にしている感じだ。影響力のある人が乗っているのだろう。こちらは着地し、コクピットを開き、こちらの姿がある程度見えるようにする。08はレビテーションを使って上空で待機だ。べフォセットがわざと見えるレベルで強力なフォースフィードを一瞬はった。魔法を、フォースフィールドの魔法を知っているなら、生半可な攻撃じゃ通用しない、ということが分かったはずだ。だからこちらは静観する。
馬車から降りてきたのは3人、2人は明らかに護衛だ。ということは真ん中の彼がメインということね。
「レッドドラゴンを殺さずにいてくれて、感謝いたします。話し合いをしたいのですが、持ち帰ってくれませんか? 私はこちらの軍師、人間の立場ではナンバー2の、ジョージというものです」




