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竜協会

「さて。たぶん納得いってないと思うからもう一度言っておくわ。わたしはジュシュリのリン、副隊長をやってて空飛ぶゴーレムの術者よ。一応ここはわたしの支配下でわたしが一番偉い、ということになっているから、あなたの名誉が傷つくことはないわ」


「リン・ジュシュリ、だと聞き及んでおりますが?」


「うっさい、ベフォセット」


先ほど捕らえたドラゴンライダーのファゼンさんは呆気にとられた顔をしている。まーこののりはベフォセットがいるときだけだしねぇ。


ファゼンさんは拘束はされていない。けど魔法的には縛られている、という状況らしい。こちらを攻撃してきたり、ダッシュして逃げる、とかは出来ないそうだ。逆に言えば穏やかに動けば普通に話し合う分には自由に動ける、と。まあわたしにベフォセット、他に二人の兵士が見張っているからこの状況では何かが出来るはずもないはずだ。


「さて、わたしが聞きたいことはひとつよ、ひとつかな? なぜあなたがた神聖クテーヌス王国軍はわたしたち帝国の領土を攻撃してきたの?」


「私はただの前線指揮官の一人であり、詳しいことは聞いていない。ただ帝国への攻撃はゴア大司教と大地竜ザダリオによるものだと噂されていた。……保証はできぬ」


「えーっと、クテーヌスは王国、なんだよね」


「ああ、エルクマン国王陛下の統治下にある。が伝統的に竜協会が国王と同等、というか国王陛下ご自身が竜協会に所属されておられるため、竜協会の指令と考えられる」


ああ、宗教国家だみたいな話もあったし、神聖なんて名乗ってるし、それもそうか。



「その……ゴア大司教と大地竜ザダリオ、とは?」


「なんだ、知らぬのか? ……まあ調べられたらすぐに分かるだろうから話そう。ゴア大司教は最近代替わりされた竜協会の人間側のトップだ。大地竜ザダリオは竜、ドラゴン側のトップだ。竜協会にはドラゴンも所属している」


「ドラゴンのトップ、以前は颶風竜だったと記憶しているのですが?」


ベフォセットが口を挟んでくる。まあわたしも聞いておきたいし、いいか。


「そうだ。大颶風竜レクバルスト様だった。彼は数百年我らの地を守護されてきたが、近年失われた。そのあとに居座ったのが大地竜ザダリオだ。六大竜は全て失われ、エレメンタルドラゴンの中でもっとも長寿だったのがザダリオであっただけだが」


「……あまり好ましく思われていないようですね」


「……あー、隠しても仕方がないな。そうだ、私はザダリオを好ましくは思っていない、どこのライダーが大地竜を好ましく見るだろうか? 大地竜は火竜と並んでもっとも攻撃的な性格をしているし、ザダリオはその上いけ好かない性格と行動をする」


ふむ、ライダーというからには竜に対して理解のある人のはずだけど、そんな人がいけ好かない、か。どんだけ嫌われているんだ、とも思えるほどだ。



「でも、命令には逆らえない?」


「命令ではない。形式上はな。お願いだ。だから私は私の上の者も含んで自由意志で帝国に敵対した。そして降伏してこのようにしゃべりまくっているのだ。私はもう王国に帰ることはできないだろう。だが竜に罪はないのだ。彼らカラードラゴンはまだライダーに逆らえるほどの自己は確立していない。いや十分に個性はあるのだが、なんと言えばいいかな、他国では」


本当に分からない、といった顔で悩みだして、結構すぐに思いついたようだ。


「そうだな、とても大きく賢い犬がいたとして、それにはっきりとした飼い主がいるのならばその犬は飼い主に逆らうことはないであろう? そんな感じだ」

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