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襲撃

新しい牛型は時間がかかるので、今ある牛型で切り株の引っこ抜きをする方法を考えた。力が足りないならてこの原理を使えばいいじゃない、という感じで、抜きたい切り株の近くに杭を打って、それを支点にして長くて丈夫な丸太をおいて両端を切り株と牛型に繋いだ。それで引っ張ってみた。


最初の回は半ば引き抜いたと同時に丸太が折れてしまった。用意した丸太が細すぎたようだ。二回目以降はもっと太い丸太を使ったので問題なく引き抜けた。事前準備に手間がかかるからそれほど時間効率が良いとは言えないけど、今までは雄牛が使えない場合、切り株の周りを丁寧に掘り返して、根っこを切ったあとメジャーワーカーが何人も集まって引っこ抜いていたので、効率以外はいい。特にメジャーワーカーを集める必要がないのがいい。メジャーワーカーは細かい作業こそノーマルなゴブリンに負けるけど、力仕事とかならゴブリン数人分の能力がある。切り株抜きだけで使うのはもったいないのだ。とても疲れるみたいだし。


作業を終えた牛型を自分で歩かせて工房へ持っていってチェックしたけど、関節は多少すり減っているものの、少し樹脂を足してやるだけで問題なく使えるとのこと。私の魔力も作業前と後とじゃ、関節周りに若干魔力が集まる程度でほぼ消費量とか変わってないし、てこを使えば関節を痛めるほどの負荷はかからないことが分かった。もちろん負荷自体はかかっているのでメンテナンス自体は必要だけど。


あと魔樹のつるで出来たロープを使った遠隔操作は大変うまくいった。ただ魔樹のつる自体が魔力を吸ってしまうので、魔力使用量の増加が問題だ。私には問題ない程度の量なんだけどハイゴブリンには負担になるかもしれない。魔樹のつるをそのまま使うのではなくなんらかの処置を施して吸わないようにしないと私以外には使い物にならないかもしれない。これはまだ私のおもちゃだね。まだまだ改良しないと成功した、とは言えない。




なんだかんだで充実した日々が過ぎていった。

畑は無事開墾でき、工房は充実していった。金属の関節をもった牛型ゴーレムは量産されてハイゴブリンによるテスト運用が開始されている。今のところ良好な結果が出ている。魔樹のつるも意外と簡単な方法で魔力を吸わせない方法が見つかった。


私の義足も金属、しかもミスリル製の関節になって新たに作られた。またソケット部分の網もミスリルらしい。魔法金属だからか魔力の通りがよく、より少ない魔力で動かせ、また摩耗もしにくいという優れものだ。でもここまで改良されていても基本構造は同じだから、ゼルンに言わせると、これで三・五代目で、四代目と言えないらしい。


あと、さすがにこれの牛型ゴーレムへの転用は見送られている。そこまでミスリルのストックや発掘量はないのと、加工が他の金属よりもずっと難しいためだ。今のところギグしか作れない、それだと今後困るのでハイゴブリンの弟子たちに伝授している最中だ。加工に魔力を使うため、ハイゴブリンでないと難しいらしい。


また今は牛型ゴーレムの量産がいったん終了したのでテスト機として人型の大型ゴーレムを開発中である。体格はメジャーワーカーを模したパワー型で、手を大きくしているので指にも関節を仕込んでいっている。正直メンテナンスが大変だとは思うけど、この手の部分が一番魔力を消費したため、手を全部ちゃんと形づくればどれほど魔力消費を軽減できるかのテストのためだ。結果次第では省略も考えないといけない。実際あまり独立して動かすことのない中指、薬指、小指などは一つにまとめてもいいかもしれない。事実手袋にそういうタイプは多くあったし。


また二本足なので股関節などの強度がどの程度必要か、体の関節はどこまで必要か、をテストしていかないといけない。なので今建造している人型の大型ゴーレムは牛型ゴーレムと比べると大量の関節が仕込まれている。その作成労力に見合う魔力消費削減が出来るかどうかのテスト機である。

あとそのゴーレムに見合う超重量の大型アックスも作ってもらった。木を切り倒すのに使えないか、ということと、最近ヒュージアントの目撃例が増えてきているためだ。非常に大きく重いため、ジュシュリの誰も、グゲでさえ、使えないものだけどゴーレムなら使えるというものだ。初の専用武器ってとこだね。

もう一つ、専用武器、というかある武装を思いついているけど、ここで工房の生産能力が尽きてしまったので、何かが終わってからになる。


ただ工房がフルに動くようになって、木も金属も需要が上がっているので、それの収集用作業員を増やしたいところなんだけど、今は食料を優先しているので手つかずだ。特にメジャーワーカーをそっちの方に向けたいのだけど、最近ようやく開墾が終わったところなのでこれから再編成である。ガギには苦労をかけるけど頑張ってほしい。


ギグとゼルンとで工房でお茶をしているとき、一人のゴブリンが飛び込んできた。

「リン姫様、新畑にヒュージアントが現れました。近くにいたゴガ様が今向かっているところです。ガギ様はいずこで?」

今グゲはジュシュリにいない。ガギは自分の部屋で編成を考え中のはずだ。それを伝令にきたゴブリンに伝え、ガギも呼ぶように言う。

「ギグ、ゼルン、私達も向かいましょう。せっかくの新しい畑を潰されるわけにはいきません。私は建造中の大型でいきます。あなた達は修理の終わった牛型があればそれで来てください」


人型の大型ゴーレムは左腕がまだ完成していないので左腕がないだけで他は完成している。バランスが悪いけどなんとか動かせるだろう。

魔樹のつるで作った魔力伝達ケーブル、魔導線を各所に取り付けていく。それを束ねた制御棒を私が持つ。取っ手部分も贅沢にミスリルである。魔力の伝達効率は高いはずだ。魔力を流しつつすでに構築してあった呪文を唱えて魔力を流す。大型に私の魔力がケーブルをつたって全身へ行き渡る。左腕に伸びるはずだった魔力が左肩から漏れ出す。術式を書き換えたほうがいいのだがそんな暇はない。魔力垂れ流しになるけどこのまま行く。寝かされていたゴーレムはゆっくりと立ち上がった。左腕がない分バランスが取りにくいけどなんとかなりそうだ。右手で専用の斧を担ぎ、工房を出る。


工房から新畑は近いほうだ。ぶっつけ本番で動かしているので慎重にかつ急いで駆けていく。ゼルンは牛型ゴーレムに乗ってやってきたけど、ギグは槍をもって一人で駆けてきた。調整の終わった牛型ゴーレムは一つしかなかったようだ。


新畑に向かっていると、怪我をしたゴブリンたちがジュシュリに運ばれていくのにすれ違った。現在ゴガとメジャーワーカーが二人、一人のハイゴブリンが牛型ゴーレムを使ってヒュージアントの動きを抑えているらしい。

到着すると【高さ】が二メートルはあろうかという巨大な蟻に正面から牛型ゴーレムが突っ込んで角を突き立てて抑え込んでいるようだ。しかしその後ろにいるハイゴブリンは苦しそうにしている。魔力がつきかけているようだ。ゴガは長い槍を持っていて突いているがなかなかうまくいっていない。両脇にはそれぞれ鍬をもったメジャーワーカーが油断なく構えていた。

牛型で直進を抑え込み、両脇に動こうとしたらメジャーワーカーに攻撃され、そうでなくてもゴガの槍を突き立てられるという状況にヒュージアントは陥っているようだ。ただこの戦術は上手く行ったけど、もう持たないようだ。牛型が魔力切れで今にも止まりそうだし、ゴガの槍ではヒュージアントにトドメの一撃を与えられないようだ。

今のうちにヒュージアントの後ろに回り込む。前は牛型が抑え込んでいるので後ろから殴ろうと思ったのだ。

しかしそれは出来なかった。新畑に隣接する森からもう一匹のヒュージアントが現れたからだ。


「えー?! 二匹目?!」

思わず叫んでしまった、間抜けなことにその声に反応した新たに現れたヒュージアントに狙われる羽目になってしまった。

なので目標変更、ヒュージアントB! ゴーレム殴れ! 振りかぶった大型アックスをヒュージアントBの頭に打ち下ろす。ヒュージアントBの頭部に命中し、そのまま引き倒し顎を地面に打ち据える。ヒュージアントBの頭部が無残なことになった。

けどヒュージアントBの動きが止まらない。そのままゴーレムに突進し引き倒してしまう。私はとっさに制御棒を手放し、一緒に引き倒されるのを防いだ。ゴーレムは動かなくなるが今の体勢だと仕方ない。

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