迎撃戦
偵察からテルルへ帰還して、休憩しているととうとう竜王国軍の姿が見えたと報告があった。
すでに食事は終えて魔力回復のいつものタブレットも服用している。足も外していたのでほぼ制限時間いっぱいつけられる。現状魔力は全快にはなっていないけど、十分に残っている。
こちらは今回うって出ず、籠城している。民間人の退避は終わっているし、野戦はあのドラゴンの数じゃあ危なすぎるから。
真のゴーレムであるカマエルは片手剣と盾以外にも七本の投槍を持っているらしいけど正直七本じゃ足りない可能性があるので、カマエルにとっては少し小さいけどこちらの特殊爆槍の余っていた分を貸与して、先に使ってもらうことにした。七本の投槍は神話の時代の武器みたいなので消費するのはもったいないかな、と思って。
術者のおじいさんともお会いしたけど、すごく愛嬌のある、今となっては小さな白髪と白ひげの塊みたいになっちゃってるけど、昔はすごい魔法戦士だったそうだ。なので剣も盾も投槍も扱い方は分かっているらしい。まあだからカマエルの術者になったみたいだ。
わたし達は緒戦は待機で、テルル上空にドラゴンが来ることになったらスクランブルがかかって迎撃に向かう、ということになっている。
テルルは北側は運河が流れているので天然?の堀となっているし、唯一の門にかかっている橋は当然巻き上がっている、というか普段は降ろされないのですぐに敵兵が乗り込んでくる、という状況にはならない。
もちろん港部分には壁はないので、そこからテルルの中も見えるし、そこからが一番入りやすいだろうけど、運河をどうやって渡るか、にかかってるのよね。こちらも当然それは分かっているから、かなりの戦力をそこに配置しているし、近づくだけで設置式の大小あるバリスタから打たれるし、ゴーレムも多数配置されている。
壁の上にもゴーレムやバリスタを配備して迎え撃っている。第二軍の人たちは突撃したがってたけど、今回のトップ、第一軍のセルウッドさんはそれを許していなかったようだ。
しばらく様子をうかがっていると、どうも何らかの手段で強制的に橋を下ろすことに向こうが成功したようだ。門もすぐに破られそうだ。
そんな時にスクランブルの指令が来た。ドラゴンが飛んでこっちに向かってきているそうだ。わたしの07とジェイムス、ドワイトの08が出撃した。
二人には無理はしないよう、わたしの補佐をお願いした。一緒に行動し、基本的に同じように攻撃するように。
こっちに向かってきていたのは、ブラックドラゴン一体に、グリーンドラゴン一体、イエロードラゴンが二体、陣を組んで飛んできていた。遅いブラックドラゴンに合わせて飛んでいたのでまだこちらにはたどり着いていない。
わたしの見立てではイエローが戦闘機、グリーンがマルチロール、ブラックが爆撃機、といった運用のように見えた。グリーンにだけ人が乗っているのでやりにくい。
なのでイエローは街の上を飛ばれても問題はそんなにないけど、グリーンのブレスは確か毒ガスなので対空には使えないけど地上への攻撃としてはとんでもない。ブラックのブレスは火でこれも地上へは致命的な攻撃となるけど空中に放たれてもそれほど脅威ではない。
なので優先目標はグリーンとブラックなんだけどイエローがもちろん邪魔をしてくる。イエローのブレスはライトニングと同等なので空中戦に強い。から結局最初に排除すべきなのはイエローとなる。
現在の高度は高め。おそらく地上からは並のゴーレムクロスボウやバリスタでは射程の問題もあって届かない。
イエローから先制攻撃。しかしこれは簡単に避けれた。彼らのライトニングはブレスなので、開いた口をこちらに向けないと撃てない上に発射される時に輝くので察知が容易でしかも狙いが正確すぎるので、攻撃の前兆が見えたら即座に回避行動をすれば外れる。
こちらのクロスボウより射程が長いので先制攻撃を許したが、こちらも高機動なのですぐに射程範囲内に入る。入ったらすぐにこちらのクロスボウをイエローに放つ。
コパイロットによって魔力付与されたボルトは誘導され、イエローに突き刺さる。イエローとてドラゴンなので鱗は硬いけど、他のドラゴンよりは劣るので、魔力で強化されたボルトは容易に突き刺さる。
それなりに体も大きいので、本来であればこの程度の攻撃で倒すことは無理だけど、今回のボルトはゴブリングレネードが仕込まれている特殊なものだ。突き刺さると同時に爆発し、突き刺さった部分を焼きつつ、さらに矢尻部分をさらにめり込ませ、場合によっては貫通させる。当たりどころによっては一撃死もありうるという非人道的ではある武器だ。実際この武器は対ドラゴン、ゴーレム、魔獣用としている。人に向けては使わないということ。
わたしの07は一撃でイエローを撃墜、08は撃墜とはいかなかったものの、急旋回後に自軍へ戻り降りていった。
その際残ったグリーンとブラックとすれ違ったけど、グリーンに乗っていた人間が魔法を放ってきた。たぶんエネルギーボルト。これがわたしの07の方へ飛んできた。普通であれば避けられる速度ではないのだけど、すれ違いざまだったので、エネルギーボルトがわたしを追いかける形になったので、振り切った。




