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一ヶ月

事故から一ヶ月が経った。


空間識失調が根本の原因かと思われたが、肉体がないはずの02無人機でそれが起こったのは何故か、との問いにゴガがある程度の答えを出した。

正確にシミュレートしすぎたのだと。実際に乗っている【魂の座】があまりに正確に人としてのシミュレートが出来すぎていたため、肉体由来である感覚も、肉体由来の誤動作も引き起こしてしまったのだと。よって実際は下降しているのに上昇してると勘違いしたり、右に傾いているのに左に傾いていると感じることがあるのだ、と。

その感覚の差を埋めなければならない。肉体由来の誤動作を修正するのはほぼ不可能。そもそも何をもって誤動作とするのか、という話になってしまうので、外部の状況をモニタリングできる魔導知能を乗せ、外部から見れば非常に危うい状態の場合警告を発してもらい、緊急時にはそのモニタしたほうの感覚に一時的に変更するという機能を付け加えた。現代で言えば自動操縦みたいなものだけど、感じている感覚と違うものが感覚として入ってくる、というのはとても怖いことだとも言える。けど今のところそれぐらいしかこの事故を防ぐ方法が思いつかないとして、セカンドソウルシステムの呪文は書き換えられた。まあ敵からの感覚阻害や乗っ取りに対しても有効だからいいか、ということで。

むしろ空間識失調は生身で乗っているわたしこそが気をつけないといけないものとなった。魔族であるベフォセットにはほとんど効かないらしいのがなんかムカつくけど。



01は次の日には修理が終わっていたのでテストを繰り返すことが出来た。02の修理は見送られて緊急魔導を発動したうえでの破壊状況を念入りに調べるため、ライクーン送りになった。


03は以前の02のパーツ取りに使われたため欠番。わたしがテストするのは04となるはずだったけど、02が完全に失われることになったので、急遽04はドワイトとジェイムスのテスト機となった。04ではメインパイロットとコ・パイロットが入れ替わりとなり、ジェイムスがメイン、ドワイトがコ・パイとなって活躍してくれた。


次の納入となった05と06は今までのテストなどで分かってきたことを踏まえたうえで作られたものとなったため、かなり画期的なものとなった。


今現在は07と08でテスト運用している。05、06は飛行型訓練機としての改造を受けて、飛行型の術者を増やす予定だ。


飛行テストは07.08で終了予定で、09からは主に【魂の座】とセカンドソウルシステムでの運用を前提とした飛行初期生産型として現在量産中である。偶然だけど量産型ゴーレムとして最初の機体、九号型と番号が同じなため、飛行九号型とも呼ばれている。


05.06から採用されたフラップ、エレベータ、方向舵、そしてそれらを効率よく活用するための三枚の尾翼がかなりの効果を発揮し、生産難易度やコストは上がったものの、性能は著しく向上した。


07,08は、どうやっても高級機な05,06に対する廉価版を目指して開発が進められた。ただし飛行性能の向上は必須でなおかつ制作難易度を下げ、コストも下げるという難しいやつだ。

結果的にエレベータと尾翼の性能向上型であるスタビレータを開発でき、また機械式もこなれてきて、全自動クロスボウも二機に減数し、さらに全体的に小型化もされたため、それなりに安く高性能にできたようだ。テストを繰り返しているが今のところ問題は発生していない。


07の段階で有人コックピットの居住性はかなり向上し、08の【魂の座】も小型化している。また魔法もそれにあわせてアップデートされ続けているので、かなり良くなっていると思う。


07で有人コックピットが良くなったのは、なんでも今までに予定のなかったものを作り出したかららしい。それが今日、テルルに届く。


届いたのは、十三号改対空タイプ戦時量産型という長ったらしい名前のものだった。

ライクーン製で魔法投射型である十三号型を改装したもので、基本は十三号だけど、主腕の代わりに対空バリスタを装着し、さらに両肩にも対空バリスタを取り付けた、対竜用とも言える機体だ。十三号型だった部分はかなり安く簡易に作られているらしい。


元の十三号は有線タイプなのだけど、それをさそり型や01や05と同じ有人型に変更。さらに対空バリスタにはゴンドラを脱着可能とし、パイロットの技量が劣る場合、そのゴンドラに人が乗り、対空バリスタを制御できるようになっているらしい。最初の二号型や十号型と同じ形式だね。各砲塔に一名が基本だけど、二門ずつ、さらに全四門全体を制御できるようにも変更出来るらしい。


対空バリスタは対空とついているだけあって、上方向に強く打ち出せる機能つきだそうな。レビテーションの魔法を応用した射出支援機能がついているらしい。その代わり、一発の弾代がかなり高く付くらしいけど。まあこれだけ小型で移動可能なのに、設置式バリスタ以上の射程と威力があるらしいから、そこは仕方ないかな。

わたしの感覚で言えば自走式対空ミサイル発射機、みたいなものだ。

対竜仕様なのでブレスに対する対策もバッチリされている。


この一ヶ月の間にも少数のドラゴンや少人数の偵察隊みたいなものは来ていた。しかしどれも大したことも出来ず、わたしやテルル防衛の部隊に蹴散らされている。ウォータードラゴンももう一度来たけど、それすらちゃんと警戒して対策もいろいろと行っていたため、大した被害もなく退治はできなかったものの、追い返すことは出来た。


今日のわたしは、おそらく明日に攻めてくるだろう大軍に備えての準備中である。特にライクーンからたくさんの援軍が来ているのでそれの出迎えとか。


ライクーンからは先程話した十三号改対空タイプ戦時量産型が術者と護衛兵を含めて三機分、普通の十五号がコミコミで六機分、それにゴブリン機動偵察小隊という、犬を含んだゴブリンレンジャーたちの小隊も来ている。彼らの副隊長はクザナだ。


明日、というのはルオンが竜王国方面からの大軍を察知したからだ。テルルからも偵察が出て確認されている。前回を上回る大軍でおそらく竜王国の総力であろうと推察されている。……そんなに魔族が憎いのか。

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