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道端

えっと、誰だっけ? 見たことある気がするけど、明らかに兵士な人を数人引き連れた、声をかけてきたおじさんは?


「第一軍第二師団、テルル防衛隊の長であるセルウッドです。これからセレナ領主代行のところへ行こうとしていたところで、そっち方面から来られるリン様をお見かけしましたので」


「え、ああ、うちのローガンとサーチェスがお世話になっております」


そうだそうだ。この人は防衛専門でうって出たりはしない部隊の人だ。ウォータードラゴンに手ひどくやられてしまったのもここだったはず。まあ彼らがいなかったら蹂躙されていた、ということだね。


「もしやセレナ領主代行殿とお会いされていたのですか?」


隠すことでもないと思ったので肯定した。


「そうですか、少しタイミングが悪かったようですな。私もアポを取らずに来たので……。セレナ殿も休憩がほしいでしょうし、アポだけとってしばらく後にということにしましょう。そこでリン様、少しお付き合い願えないでしょうか? いえお疲れかもしれませんから無理は言いませんが、すぐそこにお勧めのカッフェがあるのですよ」


なんだカッフェって。喫茶店があるのだろうか? ここは港町でもあるしそういった需要があって店として成り立つのかもしれない。……甘いものは先ほど食べたばかりだけど、庶民の味、かどうかは分からないけど、特別製でない店売りの飲み物や軽食に興味があるのでお付き合いしたくなった。


「グゲ、いいかな?」


「私は一向に構いませんが、このお土産はどうされますか?」


「ああ、セレナ殿からお土産をいただいておられるのですね。問題ありませんぞ。こういうこともあろうかと冷蔵箱を持った兵士もついてきておりますので」


え? なにそれ? 冷蔵箱? なんかすっごくライクーン製っぽい名前なんだけど、なんでそんなのを連れているのよ。けど都合がいいのも確か。さっそく預けて管理してもらう。


「いやぁリン様とも話をしたかったのですが、きっかけがなくてですな。お付き合いしていただき感謝いたします」


「私とそんなに話をしたかった? なぜ?」


「リン様は皇帝陛下のお気に入りとなった数少ない方である上に、なぜそうなったのか分かるほどのご活躍をなされた方、なのにまだ子どもであり、つい最近まで二年ほど表舞台に現れず、お目にかかれた時は二年前と同じお姿だった、といろいろと興味深いですから」


ちょ、それ……。私、全然隠れられてなかった。まあ隠れたつもりもなかったけど、そんなに目立っていたのか。けどそんな話こんな道端で世間話みたいにされるのは。


「わ、わかりましたから、歩きながらそういうのはいいですから。お店に入ってからお話しましょう」


「落ち着いてくださいリン様。誰にも聞かれてはおりません。おそらく彼の配下の兵士も部分部分しか聞こえていないはずです」


すっと近寄ってきたグゲに諭されてしまった。少し動揺しちゃったか。図星というかバレテーラというか、そんな感じだったから。


「ここです、こちらですよ。私はここに赴任してきてからずっと通い詰めでしてな。こうやって部下にも奢ってやって、常連になるよう仕向けておるのです。良い店には流行って欲しいですからな」


あーうん、隠れ家的なお気に入りのお店って出来たら楽しいよね。そこが美味しい店とかだったらなおさら。ついてきているのはさっきの冷蔵箱を担いだ人と、そんな彼と中の良さそうな二人、合計三人だった。たぶん護衛も兼ねているんだろうけど、かなり緊張感はない。まあ確かにしばらくここテルルにいるけど、ドラゴンとかが襲ってこない限りトラブルにあうどころか見かけたことも聞いたことすらないぐらい、治安が良いからね。

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