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ゴーレム化義足

この日もバタンキューだった。体の年頃を考えると仕方ない気もするけど、ずっとこんなんでは無理が効かない。なんとか体力の増強を図らないと。


子どもらしく夜はすぐに寝て、次の朝は元気に目が覚める。こんな生活は向こうでは本当に子供の頃以来な気がする。朝が気持ちいい。起きるとデゥズとジーゼが入ってきて、私の身支度を整えてくれる。ただ髪の毛の手入れをするという概念というかやり方を知らないし方法も分からないようなので臭くない油を見つけないといけないな。向こうではそれが面倒でショートだったってのもあったし。仮面のおかげであまり見えないとはいえボサボサなのはなんか嫌だ。


朝食のあとさっそくゼルンが訪れたので、先日の装着テストでの使い心地とか改善点などを上げていった。まあ改善点なんかほとんどなかったんだけどさ。例えば足に固定するのを支援するためのベルト、ここは強く締めないと意味がないんだけど、今の革だとそこが蒸れるのでなんとかならないか、とかその程度。義足部分に関しては今回は何も問題ないように感じる。あとは使い続けての耐久の問題だね。足首の滑り止めとかは削られやすいとは聞いてるけど他の可動部分とかもね。このへんは使い込んでみないとわからないし。


今日はゼルンも控えるということなので、ゼルンに直接義足を付けてもらってから、ガギ、ゲゴ、ゼルンの前で義足に魔法をかけていく。まずは重量軽減のディクリーズウェイト、次に吸着のアゾロプションをかける。まだ靴下は出来ていないのでソケット部分に直接かけた。うん、いい感じ。そのままで少し歩いてみたが、どちらの魔法も抜群の効果だ。ただ義足が軽くなったからちょっと可動部の動きが以前と違う感じになったのは気をつけないといけないかもしれない。


さて、次はいよいよゴーレム化の魔法だ。基本的に操作設定で、バランスとかは自動設定だ。そのへんのイメージはちゃんと魔法に取り込まれるようなのでちゃんと出来ると思う。

呪文を唱えていくと私のふとももから魔力が義足に伸びていくのがはっきりと見える。魔力は特に関節部分に溜まっていく。まず膝にたまり足首にたまり指先部分にまで広がっていった。

座ったままで右足の太ももを上げ、膝を曲げてみる。おおー、思ったとおりに曲がった。足首もこきこきと動かしてみる。その方向に可動部はないはずなのにちゃんと動いた。ちゃんと自分のイメージ通りに義足が、まるで自分の足のように動いてくれた。これはすごいな。元の世界でのSFがこの世界では実現できるんだ、とか思った。

さっそく、その足で歩いてみる。まったく違和感がない。吸着の魔法で足に固定されているせいか、その部分にも全く違和感がない。

これはいけそうだと軽く走ってみたけど、全く問題なかった。楽になるとは思ってたけど、これはいい。調子にのって飛んだり跳ねたりもした。足があった頃のようだ。いかにゴーレム化してもここまで追従性を得れられるとは思っていなかった。想像以上の馴染み具合だ。


ゴーレム化の結果に満足して椅子に座る。あれ? 足に違和感が。なんかソケットの中が痛い気がする。それを伝えると慌ててゼルンが義足を外した。うわ、ガギが見てるのに。ちょっと振り返ってガギを見てみると、ちゃんとそっぽ向いてくれていた。

「ああ、赤くなって熱を持ってしまっています」

ゼルンがおろおろしている。ゲゴが側仕えに命じて布と水を持ってきてもらって、赤くなった足を冷たい濡れた布で拭いてくれる。

うーん、そんなに長い時間つけてなかったはずなんだけどなぁ。あれ、なんか触られてると痛いな。前みたいな擦り傷の痛みじゃない感じだ。

それを皆に説明してみると、ガギが理由を推察してくれた。


「おそらく足に伝わる衝撃をその部分でもろに受けてしまったのでしょう。樹脂がある程度衝撃を吸収してくれているのでしょうが、衝撃を吸収しきれなかったというわけではないでしょうか?」

あーありうる。なんか骨に響いてるような痛みだし。

「あまり跳ねたり走ったりなどの、足に衝撃を受けるような行動は控えられた方がよろしそうですね」


「ということは、歩く分にはそれほどって感じかな?」

「おそらくは。しかしながら、以前のダメージにもその衝撃は含まれていたのでしょう。ただ前回はそれ以外でもダメージを受けていましたので見逃してしまったようです」

そうかもしれない。人体、というか生き物の体ってすごいんだな。代わりになる道具はなかなかちゃんとしたものは作れないようだ。


「分かりました。なるべく走ったりはしないようにします。ゼルン、この問題は解決できそうかしら?」

「は、はい。いくつか改善案は浮かびました。ただ今のこれに改善案を仕込むのは難しいかと思いますので、新造させてください」

私はガギの方を見た。私の【お願い】は命令に近い。まずガギに許可をもらったほうが良いに違いない。


「ガギ?」

「新造自体は構いません。しかし次は牛型のゴーレムを作ってもらいたく思います。それをテストベッドにするとよろしいかと。新造の完成は遅れますが、姫様のお体のことを考えますと、より慎重を期したく思います」

「はい、分かりました。まずその牛型のゴーレムの方を優先し、新造は設計図を慎重に書きます」

「牛型のゴーレムはギグにも頼むつもりだ。協力してより良いものを作って欲しい」

「はい、より良い義足を作るためにも」


現時点でこの義足に手を加えることはできないのでゼルンは置いていった。足が治ったら無理しない程度に使わせてもらおう。足に衝撃を与えず、長時間つけっぱなしにしなければ、本当にいいものなんだし。


今まで不都合が多かった、自分ひとりでは移動しづらいという点は解消されたと考えて良さそうだ。時間制限と行動制限付きだけどね。それでも出来るようになったのは大きい。


これで私の大きな問題は一つ解決したってところかな。次の問題は私のやること探しだね。ガギに頼ってもたぶんそのままここにいてください、とか言われそうだから自分で見つけないと。まあ当面はゲゴから有用そうな魔法を教えてもらおうかな。せっかく魔力が高いらしいし、魔法にどれだけの価値があるのか知らないけど、今のところジュシュリで魔法を使ってるのを見たのはゲゴとガギだけ……、あー、あとゲゴの跡継ぎとされているハイゴブリンもいた、だし、たぶん希少なんだと思う。ゴブリンの多くは魔力がほとんどないとか言ってたし、魔法が使えるというだけで私に価値がつくはず。ゲゴの領分を侵さない程度には魔法を使えるようになって役立たないと。


とりあえず今日の残り時間は、ガギとギグのところへ行って、牛型のゴーレムのことをギグに説明して作ってもらうようにしないといけない。ただまた足を痛めてしまったので義足は今日のところは封印して、今日はガギのゴーレムで移動することになった。ゲゴは牛型のゴーレムの作成について呪文を研究すると言って、自分の建物に戻っていった。


ギグの工房まで来るとギグが出迎えてくれた。先に下がったゼルンが伝えてくれていたようだ。今日はゴーレムごと工房に入ったけど、床にゴミは落ちていなかったし、何人かの職人ゴブリンが控えていた。

「話はゼルンから触りは聞いております。どのようなものを作ればよろしいので」

最初に私が構想したことを話すことにした。


「ええ、簡単に言えば牛に模した人形を原寸大で作って欲しいのです。ただし、足は義足や操り人形に使われている技術を使って、本物の牛のように稼働するものを、です。素材はまずは木で作りましょう。蹄は石突と同じ感じで良いかと思います」


「概ね、リン姫様のとおりでよいのだが、付け加えて頭に鉄製の角をつけて頭も上下には動くようにしてほしい」

「え? 何故ですか? 別に頭は動かなくてもいいですし、牛に似せるといっても角を付ける必要はないと思いますが」

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