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ハイゴブリンとゴーレム

持ち上げられて視点が高くなって初めて気づいたけど、ベッドの左側に白い塊が見えた。塊と表現したけどうずくまっている人に見えた。けど人があんなに白いはずがないし人型に見えただけだよね。けどなんだかいいようのない違和感を感じた。


ゴーレムはそのまま扉をくぐって外に出る。外には大きな仮面で武器を持った人が二人のゴブリンを連れて先に出ていた。ゴーレムの後にガギがついてくる。


「五神官の三、グゲが先導させていただきます」

戦士っぽく見えた、もうひとりいた大きいの、グゲも神官であると名乗った。顔は大きな仮面で見えないけど、後ろ頭は欧米人もびっくりというレベルの金ピカな髪が生えていて、ほとんど頭髪のないゴブリンたちとは違って見えた。体格や姿勢も人間っぽい。


小一時間ほどお姫様だっこされたまま進んでいった。こんなに遠いとは思わなかった。自分で歩くとか言わないで良かった。小さな山を一つ超えた感じだし、片足ならもちろん両足でもつらかった気がする。


道中いろいろと見たけど、生えてる木や草は特に代わり映えのしない普通のそこらにある木や草だったように見えた。鳥や虫も飛んでたし、田舎の一風景にも見える。けど田舎でも、こんな人間いないし、こんなロボットを目の前で作れたりしない。私も私じゃなくなってるし、やっぱり異世界に転生とかしちゃったんだろうなぁ。

二人のゴブリンは先触れと先行偵察のためと言って、先に行ってしまっていて、周りにはガギとグゲがいるだけだ。


見た目があまりに違うので、思い切ってグゲに聞いてみた。

「あの……、先程のゴブリンとグゲさんやガギさん、それに私も、あまりに見た目が違うんですが、ゴブリンなんですか?」

グゲが歩きながら振り返る。

「はい、我々五神官はゴブリンと言ってもハイゴブリンですので。五神官以外にもハイゴブリンはいます。我らジュシュリは古い部族ですので、ハイゴブリンが多数残っているのです」

ハイということは上位ってことか。人間の様に見えるグゲの姿は確かにゴブリンよりずっと体格が良い。しかし金髪の人間はいても緑色の肌をした人間はいない。まあ髪の色に関しては私は真っ赤なようなので困るんだけど。とそこまで考えて、思わず聞いてしまった。


「え? ということは私もハイゴブリンなのですか?」

「違うのですか? その大きな仮面、ちらりと見えた緑色の足、それに我らの言葉が分かることから同族だと思いましたが?」

おおっと、やばい。私としては自分は人間であると思ってるので、相手がこちらを同族だと思ってくれているのは都合がいい。大きなカバーのおかげで人間の手は見えてなかったようだ。


後ろを歩いていたはずのガギが横並びになるまで来ていた。

「姫様はどうも人間に育てられていたようですから、ハイゴブリンをご存知なくとも無理はありません。むしろ姫様ご自身は自らを人間だと思われているのかもしれません」

と、ガギは私よりもむしろグゲにそう言ってくれた。それでグゲは納得してくれたようだ。


ガギがすっと手を伸ばし、グゲに隠すようにして私に小さな壺を渡してきた。何も言わないので疑問に思いながらも受け取って、壺にされた封を取ってみる。中にはなにかドロリとしたものが入っていたので掌の上に出してみると濃い色の緑色の何かだった。匂いを嗅いでみたけど何の匂いもしなかった。なんだろうなと思って指で触ってみたら指が緑色に染まった。

これって、そういうこと? ガギの方を見ても仮面をかぶっているので表情は分からない。けど、あんな話をしたあとで緑色に染まる軟膏みたいなのを渡してきたということは、そういうことなのかな。ガギはわかった上で私をゴブリンの姫として扱ってくれているということだ。


さっそく立て掛けて落ちないようにしていたカバーの裏でその軟膏を腕や顔に塗りたくる。顔は仮面のおかげで見られないと思うけど念の為だ。手だって見えないのに渡してきたんだから警戒しておいた方が良いに違いない。耳にも塗ったけど私の耳、尖ってて大きくない? 私、本当に人間なのかしら? 元々緑色に染まっていた左足も乾燥してひび割れてきてる感じがしたので塗っておいた。右足は……太ももの下からがない感じで、傷口はちゃんと処理されているようで痛くないし、切断したところであろうところを触ってみてもつるつるの肌だった。大きなTシャツみたいな服に隠れて見えないと思うけど、そこにも念の為塗っておいた。


ほどなく簡素な壁に覆われたところについた。壁には門があり、槍を持ったゴブリンが門の横に立っているのが見えた。ジュシュリに着いたようだ。


門をくぐると未開の村と言った感じで、木製のしっかりとした建物はそれほど多くなく、テントみたいなのが多数見える。神官の二人とウッドゴーレムが帰ってきたのを見て、ゴブリンたちが集まってくる。大半は最初にいた二人みたいなゴブリンだったけど、そんな彼らより腕や足が大きくて太い、末端肥大症みたいなゴブリンや、仮面をつけてるからはっきりとは言えないけど、体は人間にしか見えない、けど緑色な女性がいたりもした。ちょこちょこ髪の毛が長くて胸のあたりも布で隠しているゴブリンもいるので普通の女性ゴブリンもいるようだ。

その全員に言えるのは、なんらかの仮面をつけているということと、こちらを見た瞬間跪くってところだ。……どれだけ大きな仮面に権力あるのさ、って感じ。まあそのおかげで助かりそうだからいいけどさ。


神官二人とウッドゴーレムはジュシュリのおそらく中央にある広場までやってきて止まった。神官二人の周りにはガギと同じような服装と同じぐらい大きな仮面をつけたものが三人いた。五神官って言ってたし、彼らがその神官なんだろうな。他にも広場にはたくさんのゴブリンたちが集まってきている。


ゴーレムの周りに五神官が立ち並び、ガギがゴーレムの前に立った。ウッドゴーレムが私の姿勢を座れるように調整してくれた。私は仮面をもって、座り直す。


「諸君、我らジュシュリは新しい指導者を得ることが出来た。我らジュシュリにゴブリンキングが生まれなくなって久しい。が、今新たな指導者を得たということは、我らの知識を未来へとつなげとの神の御心であると言えるだろう。新たな指導者の名をリン様と言う、リン様は見ての通りとても大きな仮面をお持ちだ。それによりリン様の魔力の大きさが伺いしれよう。ジュシュリの発展は約束されたのだ」

なんか私を持ち上げつつ、ジュシュリを纏めあげようとしている感じだ。


「リン様は慣れない土地で疲れておられる。謁見は後日改めてとしたいと思う。本日はこれで解散だ」

そう言われて集まっていた普通のゴブリンたちは散り散りに去っていく。私の周りには五神官だけになった。


「こちらの三名を含めて五神官、今のジュシュリを治めているものです。我ら五神官はハイゴブリンプリンセスとしてのリン様にお仕えし、忠誠を尽くす者です」

「えーっと、ガギとグゲはともかく、他の皆さんは今さっき会ったばかりの私に忠誠で、いいのですか?」

三人が進み出て、答えてくれた。


「はい、我ら五神官を束ねているのはガギですので、ガギを信用するのはリン様を信用するのと同じでありますゆえ」

「それにその大きな仮面を所持されているのは間違いなく我らを治めるために神が遣わされた方であると思えます」

「仮面の大きさは尊さ、そして魔力の大きさの指標となります。実際リン様をご拝見するとその魔力の大きさに圧倒される思いです」

三人のうち二人が女性の声だった。女性の地位が低いってこともないようで良かった。


それにしても私は魔力が大きいのか、もちろん魔法とか使えないし、そもそも魔力ってなんだ?状態だけど、大きいならいいや。それを知って勝手に信用してくれるのは本当に助かる。だって私は人間なのだから、たぶん。

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