監視
第二軍の増援の将であるというガーランドさんと合うことが出来た。来いと言われたわけではないので、少々待たされたけど、それは仕方ない。
「そなたがリン様か。お初にお目にかかる。わざわざの挨拶痛み入る。私が先程テルルへの増援として、また神聖クーテヌス王国への反撃を指揮することになる第二軍第三団を率いるガーランドだ」
「ジュシュリの副隊長でゴーレム術者のリンです。新しい将がテルルへ参られたとお聞きし、挨拶に参りました」
あれ? 私のことリン様、って様づけ? 格下だと侮っているなら様とかつけないよね。それとも慎重って聞いてたし、とりあえず下手なだけかな?
「帝都で噂は聞いていた。そしてテルルで大戦果をあげたとも。頭の中では結びつかなかったが、そういうことか」
「そういうこと、とは?」
「いや、こっちのことだ。申し訳ないが我らが来たからにはリン様は出撃を控えてほしい」
「え? どういうことですか?」
「みなまで言わせないでほしいですな。我が第二軍第三団にお任せいただきたい」
少しむっとした。まさか手柄が欲しいからって言ってる? そんな甘い相手ではないと思うけど。
「お任せできる戦力があるならぜひともお任せしたいですが。ドラゴンと戦ったことはおありですか?」
「ないが、我が団には十五号型が三機も配備されている。リン様はただの一機で大戦果をあげられたのだろう? ならば余裕だろう」
あちゃー。この人、ドラゴンのこともゴーレムのこともよく分かってないかも。……それが普通なのかな? 皇帝陛下が知らないわけもないし、もちろん私はゴーレムの生みの親でドラゴンとも何度も戦っている。ドラゴンが舐めていい相手ではないということも知っている。その上私のゴーレムは特別製だ。
「魔法投射型のゴーレムは見たことありませんか? 私のゴーレムは魔法投射型の上位機である上に私自身も並ではありませんので」
「魔法投射型? 聞いたことはあるが見たことはありませんね。しょせん試作機なのでしょう? 最新量産機である十五号型が劣るとは思えませんね」
うん、これは言っても無駄だ。
「そうですか。しかし私も皇帝陛下から直接テルルを守れと言われている身ですので、そちらが苦労されていると感じたなら出させていただきますよ」
「むむ、陛下が。そうでしたら仕方ありませんな。緒戦は見守ってくれるとのこと、忘れませんぞ」
「分かっております。私とてこう見えて忙しい身ですので、行けるのでしたら全面的にお任せしたいぐらいですから。では今後ともよろしくお願いいたします」
悪い人ではなさそうだけど、敵を舐めすぎ、もしくは味方を信じすぎだわ。
念のために用意したカードは、今切る必要もなさそうだ。しばらく様子見ね。
「グゲ、もう少し付き合ってください」
「はい、あやつはどうされるのですか?」
「どうもしませんよ。ただ監視はつけてほしいですね。第三団の動きは逐一把握しておきたいです」
「分かりました。我が配下を使って私が把握しておきます。動きがあればお伝えします」
「あら、グゲもそういうことできるのね。知らなかったわ」
「私も【戦技】ですので、戦いに関することは承知しているつもりです」
ああ、そうだったわね。グゲ自身が強すぎるから、どうしても自分が強いだけの人と考えてしまいがちだわ。ごめんね。