魂の分離
「私とゲゴ、ベフォセットは操縦場所の検討を行いたいと思います。今操縦場所としてはさそり型のものがあるけど、あれを飛行型に使うのは難しいでしょうし」
「そうですな、あれは地に近い場所にそれなりの面積があるさそり型だからこそできるものですな。あれをそのまま持ってきてしまうと、非常に大きな機体となってしまいますし、そもそも下が見えませんな」
「まあ視界に関しては我らの仮面魔術でなんとかなるやもですが、大型の機体になってしまうのは好ましくありません。魔力の消費がとんでもないことになりかねません」
「今ピキーンと発想がきました。けどこれは飛行型が完成してからですね。いえ、こちらのことです。飛行実験機よりは小さくしたいですね」
「主腕の廃止を行いたいところではあるんやけど、そうなると武器の使用が難しくなるのが厳しいところなんや」
「空を飛ぶので究極的に格闘戦能力はいりませんからね。そこら辺はちょっと考えていることがあるのですが、まずは術者の搭乗をなんとかしてから、になりますね」
「術者の搭乗については案があります。この間偶然手に入れることが出来たリザードマンたちの魔法技術を応用すれば、従来型よりずっと安全に術者を搭乗させることができるかもしれません。今のところ問題と言える箇所は【専用機化する】というところだけですが、それの解除再登録の時間を短縮する方向で開発を進めようかと」
「ふむ。それは利点にもなり得る特徴ですね。一体どういった案なのですか?」
「得た技術は生まれ直しの魔法技術ですが、基本的に私達では生まれ直しはできません。卵から生まれる生態でないといけないためです。ですがその魔法の解析を行い、魂の分離維持をする段落を発見、独立させることに成功しました」
「え? 魂を発見したのですか?」
「今だそれが魂かどうかははっきりとしませんが、記憶を維持した自由意志を分割保存する方法を発見しました」
「ええ?! それって寿命が永遠になったりしない?」
「残念ながらしません。分割保存できる期間がかなり短いためです。また現在のところ分割に時間をかければ、ある程度その状況の維持を長くできることが分かっていますが、割には合わない数字で、これが改善される見込みは今のところ全くありません」
「分割された魂の片方をゴーレムに乗せるということよね? もしその魂、ゴーレムが完膚なきまでに破壊、消滅したらその魂はどうなるのかしら?」
「分割されたもう片方の魂が保存されているのでその者は無事です。どちらか片方しか意識を保つことが出来ないため、ゴーレム搭乗中の者の肉体は、出発地点で厳重に保存することになります」
「なるほど。十五号みたいに無線で動いてるような感じになるんやな。今の無線とは比べもんにならんレベルでの操作性能で。距離は?」
「今だ実験中で、今のところ無限大ではないかと思われます」
「無限大! そらすごいな」
「それが実現したらすごいことになりそうね。実用化できそう?」
「実は少し詰まっていたのですが、こちらで見た別の場所で作られたと思われるゴーレムの解析でいろいろと思いつきましたので、かなり早くできそうです。プロトタイプはすでにライクーンで組み立てられつつあるはずです」
「なんと、それはそれは。魔属にもなかった恐るべき開発物でございますな、ゲゴ殿。我輩は貴女をパサヒアス様とリン様の次に尊敬することにしますよ」
「そう、ですか? 私はただ得られたものからより安全にゴーレムを操作する方法を考えただけのつもりなのですが……」
「生まれ直しの存在は我輩も知っておりましたが、それをこのような手法に変換するその知力、たいへん感服する次第ですな。ぜひともその知力を我が主パサヒアスにも使ってほしいものです」
「何かしらの問題があってリン様がお認めになるなら考えることぐらいはいいですわよ。けどそれってわたくしが魔族に誘われている、ということではないですよね?」
「魔属にはなれませんなぁ。それは生まれついてのものです。ですから魔属なのにそれに相応しくないものも大勢おります。我が主パサヒアスも、それの創造物である我輩も、そうですな」
「そうですか、それを聞いて安心しました。わたくしはジュシュリのゲゴですから、魔族に属するのはごめんこうむりますので」