ガウォーク
「で、どないするんや。まず頭に何をどうするか決めてもらわんと動けんぞ」
サキラパさんにたしなめられた。ちょっと話の流れが飛んでいってしまっていた。
「そうですね。皇帝陛下の意は、飛行型ゴーレムを量産しろ、です。まだ飛行型のノウハウも溜まっていない段階なのに。ですが渡りに船ではあるので、ここで一気にノウハウを溜め込んで飛行型を実験機ではなくちゃんとした制式として確立したいです」
「したいです、ではありませんね。リン様。確立させます、ですよね」
ずっとガギにリーダーを任せてきたつけがここで出てきたのかもしれない。ガギが無理な今私が頑張らなくてはならない、例え性格的に向いていなくても。
「そうですね。確立させましょう」
そんなにかっこよくはできないが、覚悟は決めよう。私がリーダーだ。今までもそうだったけどいつも手伝ってくれていたガギがいた。今はいない。金輪際会えないというわけではないのだ。いずれきたことだ。私がここでうまくやっていくには。
前の人生でも流されまくって自分で判断したことは少ない。研究職方面に行くというなんともあやふやな指針だけでなんとか流れに乗ってやっていっていたのだ。学校でももちろん職場でもリーダーシップを振るうようなことはやったことはなかった。けどこの世界でガギにいろいろと実地で教えてもらったのだ。うまくやれるはず。
「よし、ではまずギグとゼルン、ライクーンでガギと風洞実験はいろいろとやったわね?」
「はい。風の属性石のおかげで簡易に出来ました。空気というものはなかなか奥が深いなと思いましたよ。ゴーレムぐらい巨大なものならそりゃ考えるべきだとも。あと姫から教わっていた翼の形状も、利点が分かりました。それらを元に考えていくべきでしょう」
うんうん。
「ただ、今までのゴーレムとはかなり違う、そうですな、鳥の鷲に手が生えたもの、みたいな感じになりそうで、そこはどうしたものかと」
あー、まーそうよね。人型と飛行機の翼は相容れないように思えるよねぇ。けどそれは無茶でもなんでもないことが元の世界では常識となっていたからいけるはず。いやまあ、空力的に足はともかく手はじゃまで仕方ないとは思うけど、そこは馬力か魔法でなんとかなるでしょ。
「そこは大丈夫。気にしないで進めていいわ。今の飛行実験機でも飛べるんだからなんとでもなるはずよ」
と無理やり納得させた。納得は大きいのよね、この世界。魔法に直接影響を与えてくるからさ。
「あとサキラパさん、技工の二人とよく打ち合わせをして、ベストだと思う形状とその素材を選定してもらえますか? 空を飛ぶものなのでできるだけ軽く、かつ丈夫というかなり矛盾をはらんだものになりますが」
「よっしゃ、任せとき。素材っちゅーんは形にもよるねん。それを分かって二人と組ませたか?」
はっはっは、分かってなかったけど、サキラパさんが一人で納得しているなら僥倖。