別視点:ジョージ3
「ふむ……。そなたのいうロボット、なるものにこのマリオネットゴーレムが向いているかも、か……」
奥に設置してあった対面できるソファに座りながら事情を説明した。ローロ師は長くて白いあごひげを整えながら考えている。
「そのロボットとやらに、そなたは何をさせたいんかの?」
「最初は土木建築などに使えると思うんです。こなれてきたら……」
「戦争か。まあ元々ゴーレムも戦闘用であるし、分かる。がのぅ」
「なにかご不満か、心配事でも?」
「ああ、不満さ。土木建築はいい。人の、皆の生活のためになると思う。しかしそのあとがのぅ」
「どのようなものであれ、使えるものは使うのが人間というものです。今師がなされているものでも普及すればそのような使い方をしてくるものがいることでしょう」
護衛の竜騎士団の人も説得を手伝ってくれる。
「そうなんじゃが……。わしは個人の楽しみとしてこのこっけいなあんぬちゃんで受けを取りたかっただけなんじゃがな」
後ろで起動停止しているあんぬちゃんをちらっと見る。確かに人を笑わせようとしている気がしないこともない。やろうと思えばもっとかわいくすることもできるはずだし。
「もちろんそちらの方にもフィードバックが入ってより発展すると思います。別系統でも伸ばそう、という話なだけですので。それに黙っていたってあんぬちゃんが公表されればいずれは、ということになると思いますが」
「それもそうなんじゃよなぁ……。わしは一介の、凡庸な魔法使いに過ぎん」
ローロ師は沈痛とも思える表情でこちらを見てくる。
「そなたが思いつき、基礎を築いたってことにしてくれんかのう。わしはあどばいざぁみたいな感じでの。魔法の分解再構築に関してはそなたの伝手で優秀なのをつけてくれるのだろう?」
「え? 大変な栄誉ですよ? それを俺に譲るのですか?」
「譲るというか押し付けたいのう。わしは、わしの名前を戦争をより悲惨なものとするものを作った者として残したくはないんでな。わしは凡庸なんじゃよ……」
ああ、元の世界の科学者と同じ感じか。……でも技術発展のためには誰かがそれをかぶらないといけないし、そもそも俺はそのためにこの世界に呼ばれたんだしな。汚れ仕事上等じゃないか。
「ええ、構いませんよ。俺なんかが礎になれるのなら喜んで。もちろんローロ師が望むならその栄誉は俺が受けさせてもらいますし、その恩恵はローロ師にも存分に。護衛の方」
「はっ」
「このようになりましたので、黙っておいてもらえますか?」
「もちろんです。墓まで持ってまいりましょう」
そのあとはトントン拍子だ。大きな竜やおじいさん、竜の大司教様は喜んで俺の提案を聞いてくれた。優秀な魔法使い、職人、人形使いが集められて、ローロ師の指導の元、より大きく頑健でパワーが出せる土木建築一号おりばーくんが作成されたのはローロ師と会ってから一年とかからなかった。
おりばーくんは思った以上に受けた。元々の目的である土木建築はもちろん、竜の世話にも使えたので、竜の協力者、も多く増えた。彼らは己の体を使った技術をいろいろと応用させて使わせてくれた。鱗は勝手に生え変わるし、爪や牙は街に住む竜は伸び放題で削らないといけないものだったから、それらの素材は使いたい放題だった。その竜素材により職人と魔法使いたちはより理想的な関節を作り出してくれて、よりマリオネットゴーレムは発展していった。
今はおりばーくんの孫に当たる民間用ふれっどくんと、二代目で派生した戦闘用しゃいあんくんが普及している。