別視点:ジョージ2
「凡庸な魔術師 ローロの事務所」
営業時間は午前9時から午後3時
今、ローロは*在室中*
この世界に24時間の概念あったんだ。時計とか見たことないし、ないと思ってたよ。まあ今はお昼食べたばかりだから午後1時頃かな? 在室中、ってなっているし、ここにローロという老魔法使いがいるんだな。
実際のところ俺はまだ魔法というものを見たことがない。いや多分最初に会った大きなドラゴンや偉い人は魔法を使って俺をこの世界に召喚したみたいだったから、魔法があるってことは分かっていたけど、魔法使いという人にはあったことはなかった。冒険者ギルドの中や町中にもそれっぽい人たちがいたのはいたけどさ。
張り紙にはよく分からない文字らしきものも見えるがはっきりと意味が認識できる。頭の中で勝手に翻訳してくれているみたいだ。皆の話もそんな感じだしな。
護衛の人にうなずいて、扉にアクセスしてもらう。護衛がノックした。その動きや行動は俺の元の世界と同じだったか。
「あいとるよー」
扉の向こうから声が聞こえた。
護衛がこちらに頷いた。俺が扉を開けて、一歩中に入りながら。
「失礼します」
「いらっシャイまセー?」
人間大の木製のマリオネットみたいなものがスカートのはしを持って挨拶してきた。メイド服っぽい服を来ている。しかし頭はデッサン人形のような形だけ人間っぽい卵型にへのへのもへじみたいなブサイクな顔の絵が墨で描かれているだけで、頭頂からはケーブルみたいなものが生えている。そのケーブルの先には……。
ケーブルの先にはそのケーブルがつながっている何の装飾もついていない白いキャップの頭頂につながっていた。そしてそのキャップをかぶっているのは、明らかに魔法使いっぽい年老いた男性だった。おかしいのはこの老人も人形と同じようにスカートの端を持って挨拶をしているかのような姿勢をとっていることだ。
「誰ジゃお前?」
その老人が喋ったように見えたけど、声は人形から変な声として聞こえてきた。年老いた男性の声を無理やりボイスチェンジャーで女性っぽくしているかのように聞こえた。
「あー、えっと……」
どう対処していいのか、困り果てて護衛の方を見る。
「私は竜騎士団の者です。この方は聖竜協会のメンター認定されたジョージ殿です。本日はジョージ殿がローロ師の活動を拝見したい、と」
「ほう、ハーフエルフとは珍しいのう。わざわざワシに会いに来た、ということはゴーレムに興味がおありか?」
眼の前の人形が両手で頭を抱え込んだと思ったら、そのまま動きを止めた。老人がキャップを取ったためだろう。
「残念じゃが今のワシにはゴーレムの自律行動部分のみを抽出することは出来ておらんでの。このようなマリオネットしかまだ無理なんじゃ」
そういって老人、ローロ師は自分の椅子に座って、俺等にも椅子を勧めた。
「ま、話を聞こうかの」