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重作業用人型ゴーレム

「リン姫様、義足の装着テストを見て思ったのですが、仮面用の魔法が義足にも使えるのではないでしょうか? 例えば重量軽減や吸着などはお役に立ちそうです」

ずっと立ち会っていたグゲがそう提案してきた。

おー、なるほど。私が自分で仮面に魔法をかけたわけじゃないので気づかなかったよ。さすが魔法の専門家だ。確かにそんな便利な魔法があるなら使ったほうが良さそうだ。


「ええ、そうですね。吸着はなくても問題ないぐらにはフィットしてますが、あったほうがずれによる摩擦はより少なくなりそうですし、重量軽減はほしくなるほど重くなっていますから」

「はい、多少維持に魔力がかかってしまいますが、怪我の心配や体力が削られるよりは良いかと。完全に接している部分への魔法となりますから魔力供給に関して考える必要もありませんし」

「仮面ではありませんがリン姫様ご自身が魔法をかけたほうがよろしいとは思いますので、ディクリーズウェイトとアゾロプションの魔法をお昼までに覚えましょうか。どちらもそれほど難しい魔法ではありませんので」

勉強しないといけないことが増えたけど、自分でかけれる方が良いのも確かだ。


「それではしばらく魔法無しで装着してみて、つけ心地などのテストも行いたいと思います。ゼルンへの報告は明日でよろしいですか?」

跪いてこちらのやり取りを見守っていたゼルンが答える。

「はい、こちらは問題ありません。また明日にこちらへ聞かせてもらいに来ます」

そう言ってゼルンは下がっていった。


「というわけですので、本日は魔法無しでつけてみます。が、魔法は教えて下さい」

「はい、もちろんですわ。ではご教授させてもらいます。講義の途中でも足に違和感を覚えたらいつでもおっしゃってくださいませ」

しばらくは義足を付けたまま、座って講義を受けた。

そのまま歩き回ることなく、お昼の時間までに魔法を二つ覚えてることが出来た。前の火の球よりずっと簡単だった。重さを軽くするとかくっつきやすくするとかはイメージしやすかったからかもしれない。

けっこう長時間つけっぱなしだったのでお昼前に一度外してみる。ガギは途中でいなくなったからいるのはグゲと側仕えだけだから気にせず外せる。


痛みもなく取れて、それほど蒸してはいなかった。前と比べて明らかに良くなっている。赤くも熱を帯びた感じにもなっていないし、もちろん痛くもない。ただ若干汗はかいていたようだ。もうこれは仕方ないね。念の為デゥズに足を濡れた布で拭いてもらってから乾いた布で拭き取ってもらった。そのまま右太ももを動かして風を当ててみる。うーん、気持ちいい。うちわみたいなのがほしいな。足を動かさなくても風があてられるように。

しかしこうやって汗をかいてしまうのなら、専用の靴下みたいなのがあってもいいかもしれない。吸着の魔法をその靴下にかければそれほどこすれとかも気にしなくていいと思うし。蒸れに関しては今はこうやって事あるごとに取り外して風を当てていく他なさそうだ。


お昼は外したままいただいた。

昼食を取るために戻ってきたギグにうちわと靴下の概要を説明して作ってもらうことにした。

午後からはゴガも私のリハビリに付き合ってくれるようだ。


お昼が終わって用事がある五神官と片付けのゴブリンたちがいなくなってから、歩く練習を始める。義足のゴーレム化はそのあとにすることにした。ゴーレム化の具合がよくってそれに頼ってばかりだと万一の時歩けない!とかになったら嫌だからね。


まずは松葉杖を持って、それに頼ることなく歩く練習をする。前の一本棒の義足と比べると本当に随分歩きやすい。膝が曲がって足首のクッションがあるとこんなに歩きやすくなるのか、と驚くほどだ。

ある程度まっすぐ遅延なく歩けるようになったら、次は松葉杖なしで歩いてみる。両サイドにはジーゼとゴガがつきそってくれる。完璧なリハビリ体制で本当にありがたい。


しばらく練習して松葉杖なしでもそれなりには歩けるようにはなった。もちろん記憶にある右足があった頃に比べると考えながら歩かないといけないので完璧ではないけど。あとそれとやっぱり疲れる。義足が足よりも重いのもあるだろうけど、この子供の体じゃ元から体力はそんなにないようだ。


ある程度は歩けるようになったのでいったん休憩することにした。義足を取ってみると、今度はちょっと蒸れていたし赤くなって熱ももっていた。あーやっぱり付けてるだけとは違って、足に負担があるようだ。ゴガに見てもらいながら清潔にしてもらって熱を取る。長時間の利用が予想される時は足を冷やす手段を複数持っておいたほうが良さそうだ。ここなら水もきれいな布もあるけど、外に出た時にはそれらを持って歩かないといけないかもしれない。


「お疲れではないでしょうか? 慣れないことと足に負担をかけることですので、本日はこれで止めることをお勧めします」

ぐ、仮面つけたままなのにゴガに私が疲れていることを見抜かれてしまった。実際疲れているので少々名残惜しいけど今日の義足についてはこれで終わることにした。ゴーレム化は明日に持ち越しだ。まーゼルンに話しすることはそれなりにあるから、明日ゼルンが来ても無駄足にはならないはず。


足を休ませるため、後半は座学になった。でも基本的なことはすでに終わっているので復習だ。

復習をしている時に雑談として聞いてみた。

「そういえばゴーレムって何に使われているのですか?」


「なにに、と言われれば主に戦いですね、あと大きな荷物運びなどでも使いますかね」

「あれだけの魔法、ほとんど使ってないんですね」

「と、おっしゃると?」

んー、なんか具体例があったほうがいいかな。

「例えば牛を飼ってますよね。その牛は畑を耕す時に使ったりしてますよね」

「はい、牛は主に乳を取るためにいますが、雄は労働か食べるかしかありませんから。かといって増やすにも雄がいないと困りますし、けどこれ以上雄を労働力として数は増やせません。牛の食べる量はすさまじいようですから」


「その労働に使う牛の代わりにゴーレムを使うとかどうです?」

「牛の代わりのゴーレムですか。魔力的なコストが……、ああ、なるほど。今リン姫様が考えておられる魔力コストが低いゴーレムでしたら、それは良いかもしれませんね。どれだけ魔力が抑えられるか、ですが」

「どれぐらい抑えられたらいいのでしょう?」


「せめて一般のハイゴブリンの魔力でそれなりの時間動かせないと見合わないでしょうね。ただ実現できれば労働する牛のための食料を確保する必要がなくなるのでだいぶと楽になるとは思います」

仮面の向こうで顔に手を当てて考えながら言っているようだ。仮面の文化があってもそういう仕草までは変化してないようだ。

「牛に限らず、重労働用のゴーレムもあると嬉しいですよね、まあ前提にメジャーワーカー以上の力がある、ということになりますが」

元の世界の重機みたいな感じでゴーレムが使えたらいいと思うんだ。重機と違ってゴーレムなら簡単に人の模倣ができるみたいだし、重機以上に便利にできると思う。


「面白い話をしていますね」

しばらくいなかったガギが戻ってきて一言。ちなみにゴガは座学になったタイミングで離れている。

「人口を増やさずに労働力を向上できるのは、今のジュシュリにとってかけがえのないことです。リン姫様の考案なされた牛型ゴーレムの開発を行っても良いですか?」

ガギがとても食いついてきた。たしか人口増大で苦慮しててこのままではジュシュリを分けないといけないとかいってたしなぁ。

「ええ、もちろん。それがジュシュリの役に立つとガギが思うのであれば」

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