ドラゴンスレイヤー
サンダードラゴンの動きは緩慢だ。コールライトニングを使ったせいだろうか? なんでもいい、チャンスだからね。
ぐぐっと高度を上げてから、サンダードラゴン目掛けて急降下する。ゴーレムバリスタを撃っておきたいところだけど、グゲの邪魔になりそうだったのでやめて、近づくだけにした。サンダードラゴンは驚いたように少しだけ動いたけど反撃はなかった。上方向に対する攻撃方法がないと見た。
サンダードラゴンの上に飛び降りたグゲが背中にずっぽりと剣を押し込んだ。たまらずサンダードラゴンは落ちたようだけど、生きているようだ。完全に中心を捕らえたように見えるんだけど、だめだったか。暴れるサンダードラゴンから剣を抜いて、地上にグゲが降りた。
地上で暴れる、というか悶えているサンダードラゴンに容赦なくゴーレムバリスタを撃ち込む。万一グゲに当たってはいけないのでべフォセットの強化誘導付きで。巨大な翼を地面に縫い付ける。
周りにいた兵士やゴーレムが寄ってくる。けどサンダードラゴンが暴れまわって尻尾や頭も振り回しているので接近できないようだ。グゲもその攻撃に晒されていて、うまく攻撃できない。
「我輩の攻撃魔法ではまた逃げられてしまうでしょう。どうしましょう?」
「戦闘継続時間は短くなるけど、私がやるわ。防御はお願い。グゲは離れて!」
グゲに退避してもらう。
飛行実験機を再び急降下させ、左腕で持っていたゴーレムランスをサンダードラゴンへ突き立て、再び飛ぶ。グゲは退避どころかその瞬間に飛行実験機に取り付いてくれた。これなら安全だ。
そこから飛行実験機の副腕を使って呪文を完成させる。
「アーススパイク!」
突き立てたゴーレムランスを媒介にして地面から岩で出来たランスみたいな大型のトゲを何本も生やす魔法を使った。対あり用に学んだ魔法だけど、結局使う機会がなかったやつだ。相手が地面に伏せているし大きいからだいぶと効果的だろうと思って使ったけど。
やりすぎてしまったようだ。翼を含めて何箇所か大きなトゲが貫通して、たいへんグロい真似になってしまった。ドラゴンに恨みはないんだけど……、ごめんなさいとしか言えない。いや向こうも謝られたって困るだろうけどさ。
敵集団で一番強そうなのを倒してしまったせいか、敵の士気はガタ落ちしたようだ。残りのブラックドラゴンは飛んで逃げる暇もなく、こちらのゴーレムに打ち倒されていたし、相手のゴーレムはこちらが温存していた騎兵が突っ込んでいって、線を切って回ったので無力化していった。唯一強固に抵抗したのは敵騎兵だったけど、こちらの十五号には太刀打ちできず、落馬していく。敵兵士たちには厭戦気分が蔓延したのか、半分は早々に降伏した。残り半分は抵抗したけど、こちらのゴーレム&騎兵に太刀打ちできるはずもなく。
結果としてはこちらの圧勝となった。最初にブラックドラゴン一体とサンダードラゴンを倒せたのが大きかったようだ。サンダードラゴンは本当にやばかった。もし私を無視して軍勢に攻撃されていたら勝つには勝てただろうけど、多大な犠牲を払うことになったと思う。
やっぱり空を飛べるのは反則気味だね。けどますますこの飛行実験機を実験でなくすようにしていかなきゃだね。相手にはドラゴンという強大な空戦力があるんだから対抗できるようにした方がいいのは確かだから。
ドラゴン、勝ち目なくなっても戦う素振りを辞めなかったから手を抜けなかったのよね。手を抜いたらあっさりこっちもやられそうだし。殺さずに済むならそうしたいんだけど。