独自技術
出撃から八日経った。
私はテルルにいたゴーレム技術者ゴブリンたちとともに鹵獲した敵ゴーレムの解析を続けていた。それでの現時点での結論は「独自技術である」だった。一部関節などにはパクられた形跡があるものの、基本は独自概念による設計にしか思えなかった。
ジュシュリのゴーレムは私の発想なしでは出来ないと言われていたけど、そうでもないことがはっきりと分かってきて、がっくりきた。異世界に来たってそうそう独自のものとか作れませんよねー、と。
関節部分もどうもドラゴンの素材で出来ているようで、元世界の技術でいうとポリキャップみたいな部品を使っていて、しかもトゥン・ティタールみたいにある程度再生も出来るようだ。正直関節部分の性能では負けている。素材の差が大きいと思うけど。あちらでは竜がたくさん生息しているみたいだし、手軽に使えるのかもね。
逆に魔導線の性能は劣っているようで、結構魔力が減衰しているので術者には大きな負担がかかっていると思う。こちらでは勝っている。これも素材の差かもしれない。向こうでは魔樹はいないのかもしれないしね。
起動魔法もそこまで優秀ではないと思う。ただの私の見立てで完全に読み解けているわけではないから、ライクーンでのゲゴの解析待ちではあるけど。ただやっぱりマスタースレーブなのであまりむずかしい術ではないと思うし、マスタースレーブだと術者を厳選しないといけない。
弓の使い方が分からない私でも、あっちのゴーレムを起動させ動かすことは出来た。けど弓を引くことは出来ても、まっすぐに飛ばすことすら出来なかった。
すなわちあの砦で捕らえた術者は、弓が扱えてなおかつこのゴーレムを動かすだけの魔力がある、ということになる。まあ魔力は人間であるならまあなんとかって程度で動かせそうだから、ただの兵士や猟師などかもしれないけど。
正直これを量産されて砦などに引きこもられたら厳しいことになると思う。けどマスタースレーブなら野戦はかなり厳しいと思うから、攻めるのには向いていないと思う。実際攻められはしてたけど、あんまり脅威ではないとローガンたちも言ってたしね。
この十日で街の破壊された場所の復興は滞りなく終わっている。桟橋も結局ベフォセットに作ってもらったし、倉庫もライクーン仕様で経費がかかるが、冷凍庫にもなるやつを設置して、さらに保管に便利になったし、港そのものにもバリスタが移設されたり、防御壁が新造されたりして防衛力が上がった。
他にも要所に対空用バリスタが現在建設中だし、どんどん要塞化している。すでに入港は始まっており、今のところ再度ドラゴンが攻めてくる様子はない。けどやろうと思えば出来るはずなので、警戒は強めに行われており、対竜にも使える軍艦が帝国の予算に挙げられたとのこと。よほどテルルの貿易が美味しかったと思われる。貴族の反対もあまりなかったようだし。軍艦って作るのも維持するのもかなり高額なはずなんだけどね。でも貿易港を守るにはそういうのもいるに違いない。敵は竜だけとも限らないしね。