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人体を模した義足

あと二日はかかるかもしれないということなので、その二日間は私が義足にゴーレムの魔法をかけるための基礎勉強と呪文の制作をゲゴの指導の元、行った。


それは極めて順調に進んだ。私はゲゴにとって良い生徒のようだ。ゲゴは私にとってよい先生だった。

「リン姫様ならすぐにでもゲゴとなれそうですね」

一緒に勉強しているゲゴの後継者も物覚えが悪いとかそういうわけでもないようなんだけど、確かにいまいち勉強ということ自体に慣れていない感じだった。けどしばらくすると私への対抗意識が芽生えたのか積極的に勉強するようになってきた気もする。表情が見えないから本当にそうなのかわからないのだけど。


グゲは勉強二日目に部下のゴブリンたちと帰ってきた。戦死者はいなかったらしいが戦闘があって何人かのゴブリンが傷ついて帰ってきたようだ。今はやくそうの手当を受けているので大丈夫らしいが。報告はそこまで急がないといけないことではないということで、明日の朝に行うことになった。


その朝、グゲからの報告があった。

見慣れない魔獣を森の中で見たとの報告があったので普段は立ち入らない森の奥にまで調査しにいったらしい。普段よく遭遇するオオトカゲには一度も遭遇せず、代わりにヒュージアントと遭遇したとのこと。ヒュージアントはジャイアントアントより比較にならないほど大きく、普通のゴブリンでは歯が立たない相手らしい。しかしヒュージアントはそれ一匹だったためなんとか退治してきたそうだ。食い荒らされた形跡はなかったものの、一匹だけとも思えないので警戒はしておいたほうが良い、とのこと。あと最近警戒していたジャイアントアントは、そのヒュージアントを恐れてこちらまできたのかもしれない、とのことだった。


巨大な虫が闊歩してる世界なのか……、どうか遭遇しませんように。ヒュージクラブなら食べれるのに。

「ヒュージアントなら良い素材が取れるであろう? 当然討伐したやつは持って帰ってきたのであろうな」

「ああ、もちろん。昨日のうちにギグに渡しているぜ」

「大量の装甲と良質なギ酸が手に入りました」

ギグが報告する。蟻は丈夫だというイメージがあるし、大きくなってもその体は頑丈なのだろう。蟻酸も元の世界でも何か利用法があったはず。見返りはあったってことか。

「しかしジャイアントならともかく、ヒュージが大量に湧くと対処しきれんぞ」


「ヒュージが大量に湧くことがありますかね? 奴らがもし大量に沸いたら森がなくなってしまいますよ」

「うむ、文字通り草木一本残らぬ有様になりかねん、大丈夫だとは思うが、我らもあの森の奥の先のことは知らぬしなぁ」

「ジャイアントアントのこともあるし、森の中にも偵察を入れたほうがよいかもしれんな」

「奴らは妙な連帯感があるからな、ジュシュリの蓄えなどを蟻に知られたら集まってくるやもしれん。ジュシュリにたどり着くまでに殲滅せんといかんからな」

「しばらくは偵察を常駐させ、迎撃部隊を即応できるよう準備しておこう。万一ヒュージが現れた場合、ゴブリンでは荷が重い。せめてメジャーワーカー、できればハイゴブリンの部隊を用意すべきだがな、人員が足らんなぁ」


ガギとグゲが戦いのことを相談している。何を言っているのかだいたい分かった。まさかアニメの知識がこんなところで役に立つ日がくるとは……。知識は取捨選択してはいけないのかもしれないね。何がどこで使えるのか分かったものじゃない。

「というわけで、リン姫様。俺は当分姫様の護衛につくことはできなさそうです。しかしブゥボやザービは優秀な奴らです」

いきなり私に話を振られてびっくりした。

「ええ、存じております」

なんとか受け答えする。しかしグゲも自分の言ったこと気にしてたのね。律儀な人だ。


「私にはジュシュリの防衛は荷が重いのでグゲとガギにお任せします」

などといいつつ、ゴーレムが役に立たないかなぁとか考える。ゴーレムなら戦闘にも使える、というかそれが本来のはずだ。万一にそなえてゴーレムになる大きな人形を作ってもらっていてもいいかもしれない。緊急時は普段のゴーレムを出せばいいだろうけど、魔力的に長持ちしないだろうから防衛用はすでに身体があるゴーレムの方がいいはず。まーまだ人形で試してみただけだから大きな人形でゴーレムが作れるのかどうかは分からないけど。たぶん出来るとは思うんだ。とりあえずゼルンはまだ忙しいだろうけど、ギグなら手が開いてるかな? また相談しておこう。


すり合わせが終わったけど、ガギはともかくゲゴも私の側にずっといる。まあここ数日こんな感じだったから違和感はないんだけど、ゲゴのお仕事いいのかしら。今だとグゲへの協力とか仕事ありそうだけど。

そう思ってゲゴに聞いてみた。

「あるかもしれませんがグゲがわたくしに頼まない限り、わたくしが勝手に仕切ることはできませんわ。それが許されているのは全体を統括しているガギと、立場がより上のリン姫様だけですわ」

ごもっともな意見で返された。

「それに今日はもうすぐゼルンが来るでしょう? わたしくもリン姫様の義足がどうなるのか気になっておりますの」


とか言ってるうちにゼルンがきた。

まだ周りには片付けをしているゴブリン達がいるので人払いの術をガギが使ってその中でとなった。

「完成いたしました。どうかおおさめください」

「ありがとう、ゼルン。さっそく付けてみたいと思います」


普段は服で見えない右足を出す。この時だけはガギは体ごと動いて見えない角度に立ってくれる。蒸れてないから別に見られてもいいんだけどね。

義足はさすがに金属部分が増えているし一本の棒に比べて体積も複雑さも上がってるからけっこう重くなっていた。

それと固定用ベルトが一本増えてて、ソケット部分が網状のものに変更になっていた。足をソケットに入れてベルトで固定していく。追加されたベルトはソケットに巻いて締め付ける用のようだ。固定対策かな。


ソケット内には言われていたようになにかの樹脂っぽい感触のものが詰められていた。ちゃんと固形になってるけど弾力があって柔らかい。感触はいいけど性能はどうなんだろうね。

固定してから足をぶらぶらと振ってみる。膝と足首が動く。しかし動きすぎない感じだ。これなら慎重に動かせばゴーレム化させなくても普通に膝や足首を動かして歩けそうだ。デゥズから松葉杖を受け取ってまず立ってみた。


右足にかかる負担は前のよりも小さい感じだ。樹脂が思った通りの効果を出してくれているようだ。右足を動かしてみる。……若干重い。前は軽々で重さを感じなかったけど、今回のは明らかに重い。手で持った時より重く感じる。

 

松葉杖を使ってるけどあまり松葉杖に体重を預けず、自力で立つ感じにして歩こうとしてみよう。

右足を一歩前に出す。おー、自然と膝が曲がってくれる。前に進んで右足を下ろす。右足にひびく衝撃も前回のに比べるとないも同然レベルで小さくなっていた。優秀な樹脂だ。そのまま右足に体重を移して左足を前に出す。バランスを崩すことなく、勝手に膝が折れることもなく、無事に二歩歩けた。

次は松葉杖の補助無しで歩いてみた。……残念ながらバランスを崩して松葉杖に頼ることになった。さすがにこの義足だけで完璧に歩くには練習が必要のようだ。けどだいぶと良い。前のでは松葉杖なしで歩こうとも思えなかったからね。


その場でくるりと回って椅子に戻る。無事に戻って松葉杖をデゥズにまた持ってもらう。

「大変素晴らしい出来です。膝や足首の関節とか完璧じゃないかしら。今の所ソケット部分にも違和感は感じません」

「ありがとうございます。あとはソケット部分ですが……通気性は良いはずですが、完全に熱が排出される仕組みはありませんので、いずれは蒸してしまうと思われますので、適時外して換気してくださるよう、仕様としてお願いいたします」

まー、それは当然だ。通気性が良いといったって、何も付けていないわけじゃないし、完璧に固定することも不可能のはずだ。

「分かっております。外せる時はなるべく外すようにいたします」

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