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領主代行

思う存分テオン様と会話が出来て楽しかった夜は過ぎ去り、朝になった。

少し寝不足だけど、仕方ない。以前のジュシュリにいた頃ならしばらく職務放棄してうたた寝してたと思うけど、今は陛下が近くにいて、顔を出さないといけない。子供の体に寝不足はややきつい気もするし、元の世界ではそのせいで死んだのだから、気をつけねば。といってもテオン様と十分に会話できる機会など滅多にないし。……とかなんとか堂々巡りの思考で招かれるがまま席についた。


陛下が上座についてその近くで微笑んでいるのはテオン様。テオン様からな寝不足な様子は一切見えない。さすがだ。そして第四軍の将軍ゴウエイ様に、見知らぬ女性、二十代半ばかもう少し上、ぐらいに見える貴族の女性が席についていた。


「お初にお目にかかれて光栄です。リン様。わたくしはここテルルの領主、の代行、セレナ・ブレゲと申します。リン様のお噂はゴーレムマスター、そして義手マスターとして伺っておりました」


「テルルの領主は現在エカテリーナ・ブレゲだが、体調が悪いらしい。ので、娘のセレナ・ブレゲが最近のテルルの領主代行を行っている。そんなときに戦乱に巻き込んでしまってすまんな、セレナ」


テオン様はだからあんな話をしてくださったのかな、と思った。私の父と一緒に逃げた人じゃないですか。それが貴族に復帰できて領主代行なんだ。娘なのに領主代行とかにもなれるのね。


「いえ、陛下。そもそもブレゲ家が存続できているのも陛下のおかげですので」


「はっは。世の奴らがなんと言おうと、エカテリーナもセレナも有能であろ、先帝によって潰されるのは惜しかったからな。わしの目に狂いはなかった、ということだ」


先帝は私の父が逃げたことにたいそう怒ったとは聞いていたから、一緒に逃げたセレナさんが家ごと潰されるところを、陛下がなんとかして守った、ということかな。


「運河が開通してから忙しすぎて、少し母が体調を悪くしてしまったことは残念ですが、お陰様でテルルもブレゲ家も潤っています。最果てのせいで我らも困っておりましたから。……その最果てを滅ぼし、帝国の一部としたとされるライクーン領主リン様にも感謝を」


食べながらぼぉーっと聞いていただけだったので、急にふられてびっくりした。「あ、はい」としか言えなかったよ。私はそういう風に伝わっているのね。


私は聞いているだけで会話に参加はしなかったけど、なんか街と軍のすり合わせ、主に補給とかの話をされていたようだ。聞いている限り陛下はテルルに、ブレゲ家にかなりの負担を強いているように聞こえた。ゴウエイ様がセレナ様に助け舟を出していたぐらいだ。まあでもその代わりに利益もたっぷり用意しているみたいだし、セレナさん的にはどんとこい、みたいな雰囲気だったので、私は何も言わなかった。


聞いていると、どうも今日はうって出る予定みたいだ。街の近くにある丘に敵陣地があるらしい。元々ここらは国境に近かったけど、竜王国とそれほど仲が悪かったわけでもなかったので、関所の一つもなかったようで、むしろテルルが関所代わりみたいなものだったようだ。


「ゴウエイのゴーレム兵団の練度は高いはずだが、実戦はさすがにまだだろ?」


「人間相手はまだですな。熊や魔獣などの討伐で実戦はさせております」


「魔獣?! どんな魔獣なのですか?」


思わず質問してしまった。熊は、まあ魔法があれば多少楽に倒せるかもだけど、前の世界のやつでもやばいやつはやばいと聞いていたけど。


「クァールや、マンティコアとかです。リン殿は知っておりますか?」


「えーと、たぶん、だいたいは」


クァールは大型の猫科みたいなやつでなんか触手とか生えてて幻覚を使ってくるんだっけ? マンティコアも大型の猫科だけど顔が猿とか老人とかで尻尾がさそりみたいになっているやつだった記憶がある。


「帝国領に魔の森とされている場所がありまして、そこで訓練を行ったのです。どうせ魔獣はある程度狩らないといけませんし」


普段は冒険者と呼ばれる人たちがそこで貴重な素材とかを集めているそうだ。……そういえば最果てにも以前は冒険者が入っていったって話があった気がする。すぐに危険とわかって立入禁止になったみたいだけど。私はゴブリンの居住区にずっといて、そこからいきなり帝都とか宮殿とかだったから、冒険者って見たことないんだよね。まあジャイアントアントとかジャイアントクラブとかもいたから、それらに対処する冒険者がいても不思議ではない。

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