よもやま話
テオン様の話題の多くは陛下のことだった。まあ身近だし話題にできる人だしね。
陛下は結婚もせず、世継ぎもいないため、かなり責められているらしい。
そして反抗してる貴族の大半は前の皇帝、陛下の父親に影響されすぎていて話が合わないらしい、なにもかも。
それで今まで特段に良いと思った相手もおらず、政略的にも適した相手がおらず、軽々しくも出来ない身なのでここまで縁がなかった、としてきているらしいが、どうも自分の血を嫌がっていて、自分の子供にも自分と同じ目に合わせたくない、というのが大きな理由らしい。
まあ陛下に子供が出来たらその子が継承権第一位だよねぇ。となると大帝国のトップになるわけだ。そして皇帝は自分が嫌だったから、ということね。実際敵も多いから暗殺とかに狙われやすいだろうしね、子供も奥さんも。……もしかすると皇弟となったはずであった私の体の父親の影響もあるかも知れない。おそらく継承権第二位を捨て去って愛に生きたわけだし。
そんな私の父親とは高い継承権持ち同士の割にはかなり仲が良かったそうで、お互いがお互いに、皇帝になればいいとすら思っていたらしい。しかし私の父は大恋愛の末に帝国をも捨てて去っていってしまった。
「恋とは恐ろしいものだな、と思ってしまった」
とのことらしい。陛下はそっち方面でもトラウマを持ってしまったのかもね。
私の父と一緒に逃げた貴族子女も今から五年前ぐらいに見つかったらしい。その令嬢セレナ・ブレゲは私の父に声をかけられ共謀したとのこと。なんでもセレナ嬢も身分の違いから一緒になるのが難しい相手がいたらしく、互いが互いを囮として逃げよう、と持ちかけられたそうな。
セレナ嬢は付近の街で私の父と別れ、そこで待っていた相手の町民と隠れて暮らしていたらしい。長らく幸せな時間だったらしいけど、見つかった一年ほど前にパートナーとなった男性が病であっさりと逝ってしまったらしい。パートナーの跡を継いで店を一人で切り盛りしていたけど、露出が増えたため、見つかって元の家に引き取られていったそうだ。ちなみに私の父に関しては本当に何も知らなかったのだろうとのこと。陛下自らも話をしたそうだ。
今はいい歳をしたおっさんでも、超売れ筋案件のはずだから相手はいっぱいいたはず。けどダメだったのは出会いガチャでよい結果を引けなかったのだろう。出会いガチャだけは確率を上げることは出来ても、確定させることは出来ないからね。それに陛下の立場なら最初から最高確率だったはずで。
逆に私の体の父親である皇弟はどうやってエルフの女性と出会って恋愛までいったのだろうか。まさに出会いガチャで最高の結果を当ててしまったのだろう。帝国を捨て去り、今までの自分をも捨てる代償を飲んでまでエルフの女性と一緒になったのだから。最果てが運命を変えてしまうまでは幸せだったに違いない、と思いたい。
この体に元々の記憶は一切残ってないけど、状況証拠から大事にされていたのは分かるし。そんな体を使わせてもらっているのだから、いろいろと頑張らなければ、とテオン様の話を聞きながら考えていた。
なんだか結局陛下の話題が多かったけど、テオン様の近況も聞けたし、私も近況を伝えれた。