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休憩

今度の人はだいぶ言い含められているようで、初対面だけど私を侮った風はなかった。……考えてみたら私、今は貴族なのか。砦長でも貴族出身の人はあまりいなかったと思うだから、そりゃそうなるか。

元の世界だったら例えば自分の務める会社の社長の娘みたいなものか。うーん、それは面倒臭い。私はできるだけ面倒臭くないようにならなきゃ。


『リン様、ルオンです。このテルビウムにはリン様の脅威となるようなものはないかと思われます』


「ありがとう。ルオン、さすがいつも早いわね」

と小声で返した。ルオンの偵察が入っているならある程度安心できる。



そんな受け答えをしてからテルビウム砦長の人に話しかけた。彼はまだ三十前後と思われる壮年だった。顔に傷があるから叩き上げなのかも。その割にはすごく丁寧だけど。


「皇帝陛下から聞いておりますか?」


「はっはい。直接にではありませんが、陛下の指示は承っております。陛下は到着が遅れており、リン様にはしばらく自由にしておくように、と。わたくしテルビウム砦長レックドであります。一年ほど前からここの砦長をさせていただいております」


「分かりました。ではレックド砦長殿。飛行実験機をメンテナンスしておきたいのでゴーレム工房へ向かっていいですか?」


「はい、そちらも聞いております。帝都から派遣された技師がきておりますので、出来るかと思います。……申し訳ないのですが、そのゴーレムの移動はお願いしてもよろしいでしょうか?」


「ええ、もちろん自分で動かして行きますわ。ありがとう。しばらく工房にいると思います」



そう言って、再び飛行実験機に乗り込む。……ベフォセットは貴族の姿で何やら砦長と話してから乗り込んで影に入った。もちろん私以外にはその様子は見えない。


たぶん工房の人なんだろう。誘導棒を持った人が飛行実験機を誘導してくれる。誰が使い出したのか知らないけど、赤くて弱い光を放つ魔法の棒だ。元の世界の警備員とかが持っているアレそのものだ。

ゴーレムは術者がゴーレムから離れていることが多いから声での誘導はしにくいしね。今の飛行実験機みたいな乗り込むタイプでも誘導棒での誘導は助かる。


ゴーレム工房の所定の位置まで誘導してもらった。技術者が何人も出てきて、驚いている。まあ実際こんなゴーレムは今までなかったしね。けど今のところゴーレムの技術はジュシュリのものしかないはずなので如何に見た目が違っていても使われている技術は同じであるから基本は同じだ。


「特に足回りをお願いします。足以外はほとんど使っていないので問題はないはずです。あ、属性石にはあまり触れないで」


飛行実験機から降りながら言う。



属性石技術はまだ一般では使われていないはずだから、技術者といえど一般ではまだ扱えないだろう。今後使うことになったら広めていかないとだけどね。


「私がここの責任者の工房長です。こちらに休憩室を設けておりますのでどうぞ、こちらへ。若いやつを一人つけますので何かあればそいつに言ってください」


普通のおっちゃんっぽい人が出迎えてくれて、個室に案内された。私とベフォセットはその個室に入る。元から休憩室だったのだろうけど私が来るということで急遽体裁を整えたという感じの部屋だった。そこまでする必要性は私は感じないけど、一般的にはいるのかもね。私としては椅子さえあればいい感じなんだけど。


部屋には二十代ぐらいの女性が待っていた。


「マグダレーナです。こちらにくる方のお世話をするように言われました。……あの、私ただの平民ですので、失礼があるかもしれません。申し訳ございません」


いかにも着慣れていないといった服装で、手に細かい傷があるように見えるので、たぶん本当はここの工房の職人さんなのだろう。今度来る貴族が若い女性ときいて、慌てて用意させられたのだろう。非常に迷惑な話である。元の世界でただの研究員に客の世話をさせるなよ、と何度も思ったこともある。まあうちの部署で客対応専門の人とか雇えるわけがないというのも分かったけどさ。彼女も同じなんだろう。

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