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リン・ジュシュリ

帰宅すると何故か応接室に案内された。


大人しく待っていると、ガギが入ってきた。本当にスッと入ってきたので、久しぶりだとか迷惑をかけたとか一切考えもつかず、今までの普段通りに接してしまった。



「あ、ガギ、報告?」


ガギはガギで、そんな私に付き合ってくれる。


「はい、リン姫様。パサヒアス様と今後のことで話し合いをしておりましたが、基本的に我らの自由に動いて良いことになりました」


「そう、それは良かったわ。私自身がちゃんと会ってパサヒアス様と話をしたいところだけど、時間があまりないのよね」


パサヒアス様が渡してくれた指輪で念話みたいに会わずとも話すことは出来ると思うけど、それだとなんか、ねぇ。



「はい、それもパサヒアス様は把握しており、その日が来るのを待っている、との伝言も預かっております」


「そっか。帝国との戦争相手、パサヒアス様が出てくるといろいろとややこしくなりそうだから、あまり出てこないようにしているのよね? それなのに私が起きる直前までそばにいてくれたらしいし」


「そういうことのようです。きっとリン姫様なら理解してくれるだろう、とも言っていましたよ」


むむう、さすがというべきか。私がどういう考えを持ち、どういう判断をするのか、だいたいバレてる感じだ。



「そういえば、ガギにはなにか変化はないの?」


そう自分で言ってから、約二年ぶりに会ったのだと気づいた。



「私自身にはあまりありませんね。ずっと後悔していて、けど今このように姫様とお話できる日が来ると信じて、その準備を忙しくしておりました。……今思えばあっという間でしたね」


……ずっと後悔……。この文脈なら間違いなく私の状況に対してだと思う。そんな目に二年もさせてしまったのか。本当に申し訳なく思う。回避できるものなら回避したかったけど、できたとも思えないんだよねぇ。だからといって許されるものでもない気がしたので。



「ごめんなさい。ガギ……」


「いえ、リン姫様が気にする必要はないかと。先程も言いましたが忙しくしておりましたので。おかげさまで良い感じになっていると思います」



「ええ、そうね、私の名代をやってくれているのよね。そのおかげか、今日はたくさん街を見て回れたけど、すごくいい街だと思うわ。ゴブリンと人間が共存できてる感じだし」


「人間に関してはラキウス殿のおかげですな。この二年ですごく成長されたかと。私も頼りにさせてもらっています。あとジュシュリ隊長ハームル殿が帝国内でいろいろとしてくださっていることもお伝えしておきます」


「ラキウスかぁ、最初の頃の頼りないイメージが強いんだけどね。それにハームルさんにはいつまで経っても頭を上げられないね」



「あと私、皇帝陛下の命令でテルビウムまで行かないと行けないから、まだもう少しガギたちに任せるわ。そういえばグゲはどこにいるの?」


「グゲはテルルに派遣されております。この街についてはお任せください。またゴーレムに関してもゲゴと共に改良を加え続けさせていただいています」


あらグゲは最前線に行ってるのか。



「あとひとつ、姫様にはお伝えしておきたいことが」


「何かしら? いいことのようだけど」


珍しくガギが微笑んでいるので、きっとそうだと思う。



「はい、以前言ったこともあるのですが、ジュシュリを分けました。我らは現在、リン・ジュシュリとなっております。正統ジュシュリは以前の村があった場所で復活ということになっております」


「おお、あの場所に戻ったゴブリンがいるのね」



「はい、私が育てていたセノンが正統ジュシュリのガギに、次期ゲゴだったクットゥーがゲゴとなり、他の神官もゴガ以外はおります。ゴガのみリン・ジュシュリのゴガが就任して数年でしたのでまだ後継が育っておりませんので、現在正統ジュシュリとリン・ジュシュリのための二名以上を育成中です。また蛇亀と若いゴブリンが中心となって正統ジュシュリに行きました。リン・ジュシュリのゴブリンはほぼ職人ゴブリンです」



「ところでなぜこちらには私の名前がつけられているの? ちょっと照れくさいというか……」


「口伝では過去分けられたジュシュリには分けられた当時のゴブリンキング、もしくがガギの本名の名前がつけられていましたので、我らならリン姫様が該当したからです」


「その……、ガギの本名じゃだめだったの?」


「だめ、ということはありませんが、我らの頭領はリン姫様ですので」


「そうかもしれないけどさ」



「それに私の名はハワードと申しますが、ハワード・ジュシュリは何やら合わないでしょう?」


「?!! ハワードなんだ」



「はい、人間にも通じる名前を、と当時流行っていたようです。グゲ、ゲゴもそんな感じみたいです。世代が違うギグやゴガはまた違うようですが」


五神官の本名を知ることになにか意味はあるのかしら? 以前の仮面文化だった時は顔を見せるとかに重大な意味があったりした記憶があるけど。けどあっさり言ったということは特に何もないのかな? ガギになる前は普通にその名前で呼ばれてたんだろうし。

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