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馬と癒やし

「リン姫様にはこやつを診ていただきたく」


そう言われたのは馬だった。やせ衰えていて立つのもやっとといった感じだった。



「こう見えてこやつはまだ寿命を迎える年齢ではない功労馬でして、なんとか生かしてくれないか、と頼まれたのですが、力及ばず。おそらく内蔵の病気だと思われるのですが、そうだとテイマーでは手のつけようもなく。もしよければ姫様のお力をお貸し願えれば、と」


そう聞いたので馬に近づく。どうもこの世界に獣医などはいないみたいだ。人間の医者ですら見ないものね。薬師はいたけど。動物のための薬師とかもたぶんいないと思う。


見知らぬ私が近づいても気にしていられないのか、馬に動きはない。耳は動かしているけどね。確かに異常だ。



クザナの方を見るとうなずいたので、そっと手で首筋に触れる。さすがに気になったのか、こちらを見るけど、やっぱり元気はないようで、目もなんとなく濁っている感じ。これは確かに、と思って魔力を流していく。

よく魔力が流れる。主にお腹の方に魔力が集まってるから、内臓疾患だという見立ては当たっていたようだ。


馬は馬型ゴーレムを作った後減っていったので、後ろめたい部分もあるし、功労馬ということで可愛がられていたのだろう。たまたま私が復帰できたタイミングでクザナが預かったから治療できるのだし、この子は運がいいはず。なんとか助けてあげたい。


怪我ではなく病気なのでどうかと思ったけど、猫とかでも病気の子を癒やしていたと思うので、これで間違いはないはず。

それにテオン様は病気も癒せたはずなので皇帝陛下は病気知らずというか病気になってもすぐに癒やされるので元気そのものだし。そのために四六時中ずっと皇帝陛下のそばで控えているんだしね。


そんなテオン様とおそらく同じ力を私も持っていて、今それを使っているので癒えるはず。ただ馬ほど大きな動物に癒やしをしたのは……ラキーガが寄生したアルゴスぐらいだ。そのアルゴスだってだいたい癒せたので、きっと上手くいく、はず。


しばらく魔力を流し続けた。私の魔力はこの世界でも最大級みたいだから、動物に流す程度ならそれほど疲れもしない。むしろ絞らないと攻撃になりかねないので、そこは気を使う。かなり長い時間流し続けたけど、ようやく魔力が押し返された。手のひらで触る位置を変えて流してみるがすべて押し返された。そうしているとき、馬はこちらに首を伸ばし鼻先で私の頭をつっつき始めた。それを無視して魔力を流そうとしていると、私の髪の毛をもぐもぐし始めた。



それはさすがに困るので、魔力を流そうとするのはやめて、ゆっくりと咥えられた髪先を取り戻し、離れた。馬は離れた私を見て首を上下に上げ下げしたり、前足を踏み鳴らしたりし始めた。


「おお、元気になったようです。お陰様で力が溢れてきているようです」


クザナが何やらすると、興奮していたような馬が落ち着きを取り戻した。



「この子も賢いですな。きちんとリン姫様のおかげで元気になったと認識できておるようです。ありがとうございました」


「馬のことをよく知っているゴブリンはジュシュリにはおりません。こやつの世話をして馬のことを知ろうと思います。馬型ゴーレムのさらなる発展につながるかもですし、人間たちにとって馬は欠かせない動物のようですから」


確かにジュシュリには牛はいたけど馬はいなかった。ゴブリンにとっては大きすぎて乗れないしね。ハイゴブリンのためだけに飼うには労働力が足りていなかったし。


しばらく元気になった馬とスキンシップしたり、レクスやその子どもたちと遊んだりした。遊んでいたらすぐに日が暮れてきた。これ以上遅くなったら心配をかけるだろう。



クザナは私に追いすがろうとする馬や犬たちを抑えるために残ることになって、ランク老と護衛のハイゴブリンと自宅らしいところへ戻った。こんな大きな屋敷が自宅とかなかなか慣れないと思う。なんか屋敷に務める使用人たちが挨拶してくるし。

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