機械
「では私はこれにて」
しゅしゅーとリザードマンのファエイス殿が言って部屋から出ていった。元【言語】のゴガであるゼヌカもそれについていった。確かにリザードマン語を話せる人材は他にはいないだろうし、リンクを使える者がついていかないとだめだろう。
「ちょうどよいところに、リン姫様に来ていただけました。彼らリザードマンが使う魂を保存する魔法は、生まれ直しの儀式というものに使うようですが、我らは卵生ではないので生まれ直しはできません。そこでその魔法を解析したところ、姫が以前言っておられた【機械】なるものを再現できました」
おお? 確かにゴーレム用のクロスボウを作るときにそんな話をした気がするけど、結局できなくて副腕で作業をすることになったのよね。それが出来る?! それは画期的だわ、私の想像するものの多くが再現できるかもしれない。
「素晴らしいわ。とりあえず今は何ができるようになったのかしら?」
「はい、棒を捻るように高速回転させることが出来る機械と、力強く棒を打ち出し、また引っ込めることが出来る機械です。ただし魔法の記述を使っておりますので魔力を使用します。現在はおそらく非効率ですので若干見合わない消費魔力量ですが、すぐに効率をあげます」
軸の回転と押し出し、あるいは引き寄せが出来る機械ね。どちらも今すぐ、何にそれが使えるとか考えつかないけど、それらが出来るなら組み合わせ次第でほぼ何でも出来そうだ
「そうね、そうしてちょうだい。あとその機械の応用は、人形師と水車職人に聞いてみればいろいろと出来るかもしれないわ。皇帝陛下に頼んで来てもらいなさい」
「人形師というのは以前見せていただいた紐で人形を操る職人ですね。あと水車職人ですか。水車が何なのか分かりませんが、そう伝えればよいのですね」
ああ、水車自体が分からないか。そういえば水車とかなかったね、村に。付近にそれを利用できそうな川もなかったし。
「ええ、水車自体の基本原理はゲゴには簡単だと思うから、少し教えてもらうと良いわ。今の私達にはあまりいらない技術だけど、その基礎や考え方は大いに役立つと思うから」
実際軸の押し引きとかも回転でなんとでもなるんだけど、その仕組なくそれが出来るのであればかなり優秀な機械になりそうだし、機械工学の第一歩をゲゴが学べばすぐに応用してくれそうだ。
私は元の世界の常識程度にしか機械工学なんて分からないし、マニュファクチュアとか単語ぐらいしか知らない。けど自頭のいいゲゴやガギ、錬金術師のサキラパさん、この世界での今の手工業の極地をいってそうなギグやゼルンたちなら、私以上のアイディアが出ると思う。サキラパさんとかはこの世界での材料工学のトップだと思うし、私達なら機械を使いこなせると思う。リザードマン、ありがとう!
「とりあえず、ゴーレム用クロスボウの自動弓引き、自動装填の仕組みからお願いしたいわ。それが出来れば今の副腕による発射機構よりずっと早く、強く出来ると思うから。他はそれが出来てからでいいわ。ああもちろん省力化もお願いするわ、そこはゲゴにしか出来ないことだからね」