搭乗
「ゼルンは分かるけどベフォセットも?」
「ああ、これは言葉の綾、というものですな。我輩はゴーレムには携わっておりませんが、あれの足元には関わっております」
そういってべフォセットが指さしたのは、飛行試験型の足のスカートだった。
「足のスカート?」
「はい、あのスカート部分と足裏に風の属性石を仕込んでおります」
「もしかして属性石で風を起こしてる?」
「さすがでございます。正確には風のような力であって風ではありませんが、下向きと斜めにその力を発揮するようにしております。するとどうなると思います? 我輩はこれで空が飛べると思ったのですがね」
「力の加減にもよると思うけど、たぶん飛べないでしょうね」
「即答でございますか……。我輩には分かりませんがなにか大きな問題が残っているのでしょうな」
「うちにもわからん。羽も生えてて飛ぶための力も出てるはずなんやけどな。羽を満足に動かせてないからかね?
」
「一度ゴーレムの法則に則って、鳥の動きに精通しているハンターにゴーレムを動かしてもらおうと思ったんですが、魔力が足りなかったのか、動かせませんでした。ただその方によると鳥の羽の動かし方は非常に複雑で自分が動かせたとしても真似できるとは思えない、と言われましたし、あの羽では各所が固定されているので動かせても飛べないのではないか、と……」
「羽生えてたら飛ぶもんやと思ってたわ、作ってみるまではな。こんな玩具作ったことも研究したこともなかったからなぁ。鳥の動きとかも」
まあそうかもねぇ。この世界ではまだ見たことないけど、ドラゴンとか元の世界の理屈でいえばあんな羽では絶対に飛べない程度に小さいし、仕組みもおかしいもの。けど飛べるのなら別の仕組み、たぶんフライの魔法とか、があるんでしょうからね……。
けどゴーレムは消費魔力を抑えるために構造をもっと適したものにしよう、ってだけのものだから。適していない構造なら消費魔力を抑えたり出来ないし、出来ないなら普通のゴーレムでいいしね。
「ともかくその風の属性石の力がどんなものか分からないと、なかなか指摘もできませんね」
「乗ってみるか? 飛行試験機に。リンならいざとなればフライで飛べばいいだけだから事故も起きんやろ? もともとリンが乗る用やしな」
「え? いいんですか?」
「まあ帝都じゃ飛べんから、レニウムに運ばんといかんから、ちょっと都合してもらわなあかんけど、まあいけるやろ」
そういってサキラパさんは人を呼んで伝令にした。
「小一時間はかかるやろうけど、その間はとりあえず乗ってみて動かしてみるか。飛ばんのやったらここでもいけるからな」
「リン姫様がゴーレムを動かすのを間近で見られるのですか! とても参考になります!」
「我輩もサポートとしてお付き合いいたしましょう」
乗ることは決定している感じだ。まあ嫌ではない、というか興味津々ではある。