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ニ年の間

食事が運ばれてきました。オートミールみたいな、おかゆみたいな、何だかよくわからないけど、とにかくそういったものでした。まあ二年間食事せずだったらしいけど、まだ特にお腹は空いていないし、これぐらいがいいかもね。



味は甘辛いという予想外のものだったけど、優しい薄味だ。けっこう美味しく感じる。


「リン姫様のご回復を最大の目的としていたので、今後どうなるかは分かりませんが、パサヒアス様は今まで我らにも良くしてくださいました。リン姫様を帝都の皇城に移動されたのも、リン姫様がご回復したあとのことを考えてで、パサヒアス様がしてくださいました。その際わたくしゴガが通訳としてパサヒアス様と皇帝陛下の仲介役をさせていただきました」



わたしはよくわからないけどおいしいものを食べながら聞く。


「現在帝国とパサヒアス様のミリシディアは同盟、という形となっております。期限は姫が意識を取り戻されてから三日後まで、となっております。しかしながら関係はずっと良好で、三日以内に改めて取り決めるとなっておりますが、リン姫様がお望みいただけるなら今後も継続できる気がいたします」


「パサヒアス様はミリシディアを名乗るようになられたのですね。支配する気はなかったみたいですが、わたしのためにしていただけたのでしょう」



わたしが至らないせいで必要がなかったかもしれない決断をパサヒアス様にさせてしまったようだ。機会があれば謝ったほうがいいかも。



「ミリシディアはどうなったのでしょう?」


「はい、現在ミリシディアはパサヒアス様を主とした国となっておりますが、実態は村複数程度の規模でしかなく、帝国以外からは元々あった王国と同一の国とは認められていない様子で帝国の一領土といった感じで捉えられているようです。住民は、村はすべて獣人で、街、我々がラキーガとの決戦前に占領したあの街です。ライクーンと名付けられております。その街は帝国に組み込まれたので、我らジュシュリと帝国からの移住民がすでに暮らしております。村で生産された物資を帝国で流通させ、不足していた一部物資を村へ供給する経済がなりたっております。また村周辺の土地も再開墾されつつあり、それなりの実りを見込まれているようです」



「ああ、もう街に人間が入っているのね。大丈夫だった?」


「はい、ラキーガ討伐により無事デバイスは消えたようで、石灰化、もしくは巨人化の報告はありません。各地に点在していた石灰塚も人間の手により供養されたと伺っております。ただ未だ獣人たちの人間への不信感は完全に拭えておりませんので、ライクーンでの物資は我らジュシュリか魔将キリカーンテ殿が一時ミリシディア王都へ運び、そこから各村へ流通しております。ミリシディア王都には我らジュシュリと魔族しかおりませんので街とは数えられておりません」


「二年もあったらそうなるよね。まあ不信感はそうそうなくならないだろうし、そこはゆっくりでいいわ」



「現在はリルテさん他数名が留学生としてここ帝国帝都で勉強されておられると思いますので、時間さえかければ間違いないと思われます」


「ああ、リルテちゃん、念願が叶ったのね。また会いたいわ」


リルテちゃんはミリシディアの村で世話役になってくれていた猫獣人の少女だ。彼女は落ち着いたら村の外へ出てみたいと言っていた。



「私もリルテさんに教えたことがあるのですが、彼女は天才に近いですね。もうすでに我らのゴブリン語も人間の共通語もなんなく話せるようになっているようです」


「リルテさんとは私も会ったことがありますよ。猫耳のかわいい人、獣人でしたよね。確かに共通語で会話しました。帝都には見たことがないものばかりで大変勉強になるとおっしゃっていました」


テオン様とも会ったことがある、ということは皇帝陛下がかなり協力していただけたようだね。



「ライクーンは周辺の土地とともに帝国の一領土として組み込まれています。この街は親衛隊であったラキウス殿が代官として治めております。名目としては今の領主は皇帝陛下で帝国の直轄となっているようですが、リン姫様がお目覚めになられたら、ここをリン姫様の持つ領地とすると伺っております。そのラキウス殿もほぼガギに丸投げしています。名前を貸しているだけだから実質現在もガギが治めたほうがいいだろう、と。ですので今現在ガギはライクーンにいるはずです」


ああ、ガギにまた大きな負担をかけてしまっているようだ。でもわたしだって街を治めるとか出来ないし、ガギに頑張ってもらいつつ、街を治めるための人材を陛下に頼んでみよう。陛下に借りができてしまうけど、もう今更だろうし。二年も寝てたのを看護してもらってたみたいだからね。


甘辛いお粥みたいなものを食べ終えたら、すぐに今度はお茶が出てきた。陛下も愛飲している体に良いお高いお茶らしい。……若干渋い。前の世界のわたしならこの程度の渋さはおいしいと感じていたと思うのだけど、子供の舌ではまだ厳しいみたいだ。

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