ただいま
わたしは二年間寝ていたらしい。ここはどこなのだろう。皇帝陛下がうかうかと外出するとも思えないけど、ここにはまだ紹介していなかった魔王パサヒアス様までいた。
皇帝陛下がいるのでテオン様がいるのは不思議ではないし、パサヒアス様がいるならゴガがいるのもおかしくはない。けど他の神官、ガギとかはどこだろう?
「ただいま、陛下……」
夢を思い出して少し胸が痛んだ。前世ではわたしが言えなかった挨拶だから。
「一ヶ月で終わらせると言って、二年以上もかけおったな、帰ってくるのに。まあよい。こうして無事に帰ってきたのだからな」
「今のところ体に不備はないと思います。もう一度精査しますね」
癒し手のテオン様がわたしの体を調べてくれている。わたし自身二年も寝ていたというのなら体がどうなったのか怖いから助かる。
「リン、落ち着いて聞いてくださいね。現在二年、正確にはレニウムを出発してから二年と三ヶ月、経っております。倒れておられる間、一切食事等できませんでしたので、パサヒアス様がリンの体に魔法をおかけになって、ずっとそのまま体を維持されておりました。ですから二年経ったとはいえ、リンは当時のまま、成長も変化もしておりません」
テオン様が説明もしてくれます。そんなテオン様は声も若干変わっておられますし、さらに美人となられて、身長も胸も大きくなられた様子。二年寝ていたと言われても実感が無いので、動揺も今のところはない。
「まあ目覚めたばかりだし、しばらくはゆっくりするがいい。食事を運ばせよう。積もる話もあるのだが、わしはあとでいいだろう。テオンとゴガから、この二年の話を食べながらでも聞くといい。わしは放っておいてきた仕事を片付けてくる」
そういって陛下はこの部屋から出ていった。ということはここは帝都にある皇城か。ゴーレムの説明をしにきて、初めて皇帝陛下と会った場所だ。
「お食事が来るのを待つ間も、もう一度状況を説明しますね」
ゴガが説明してくれるようだ。テオン様は私の手を握ったままだ。
「まずパサヒアス様は私たちに任せると、先程退出なされました」
そういえばさっきまでいたはずなのに、いつの間にかいなくなっていた。転移でどこかに行ったのだと思う。
「リン様はラキーガを討伐直後、倒れられました。その時には原因不明でしたので、直前に参られていたパサヒアス様によって保護されました。ジュシュリからはその場にいたグゲがついていっております。まずはパサヒアス様の居城にて姫は寝かされました。そこで詳細を調べて、原因が判明し、対処が行われました。矛盾が時間経過によって解消されるしか方法はなかったらしいです」
「リンの体に変調は見られません。よかったです」
テオン様が手を離しました。
「その後、戦闘時の本陣にグゲとパサヒアス様がきて、状況を私やガギ、ギグ、ゲゴに説明し、我ら全員居城へ転移しました。そこで五神官全員が状況を把握、ガギが五神官はパサヒアス様と手を組むことを決めました。リン様の復活を最大の目的として、復活なされるであろうリン姫様のための態勢を整えるために、互いに最大限の協力をする、というものです」