表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/243

反転

「グゲ! ありがとう、助かりました」


グゲが他に迫っていた異形を吹き飛ばす。異形は吹き飛ばされた先で脱皮し、復活するけど後方から支援してくれた魔将アンテリモウの炎魔法で燃え尽きた。


「よくやったベフォセット、しばらくは私が変わろう」


そう言って私の前に立つのはレオだ。


「ああ、頼む。ラキーガめ、よくも我輩とリン様をなぶってくれたな、焼き尽くしてくれるわ」


ラキーガはこちらに駆けつけた二人を見て、後ずさった。さすがのラキーガも不利すぎることに気づいたようだ。けど攻撃はしてきた。今まで通りのある程度誘導する黒い弾を複数投げつけてくるものだ。私は勝手に闇弾と呼んでるけど。闇っぽいので当たったらいろいろとやばそうだけど、今までは全部フォースフィールドで受けるか、ベフォセットが受けている。ベフォセットも闇っぽいしね。多少のダメージは入っているみたいだけど、致命傷にはなっていないはずだ。


その闇弾は今度はレオが雄叫びを上げると大半がこちらに届く前に消失した。たぶん音の攻撃だと思う。前使ったときは自分中心全周だったと思うけど、前方放射範囲にも出来るようだ。残った僅かな闇弾はレオが剣で撃ち落としてしまった。……相変わらずこのレベルの戦士はやばいことをする。まあそんなのレオとグゲしか知らないけど。


グゲが飛び出してラキーガを攻撃しようとしたので、グゲの名前だけ呼んで、止めた。なぜならべフォセットが詠唱していたから。

それだけでグゲは悟ってくれて待機してくれる。


思ったより短かったべフォセットの詠唱が終わる。


「プロミネンス」


ラキーガの足元から凄まじい炎が吹き出す。名前のとおりプロミネンスのように。その炎はラキーガ全体を巻き込んでおり、吹き上がった炎は空中で進路を変え、再び地面に目掛けて落ちてくる。そこには複数の異形や蟻がいた。異形は一瞬で灰となり、蟻は数瞬耐えたけど、溶けるように燃え尽きていった。


プロミネンスの炎が消えたあと、ラキーガがいたところには黒炭が一つ立っているだけだった。異形は一瞬で、蟻も数瞬しか耐えられなかったあの炎を受けて、形が残っている?


『パサヒアスが他者に貸し与えた魔将ごときの魔法で、私がどうにかなるとでも? どうにかなるのならどれほど楽だったことか!』


恨み節でも狂人の戯言でもない、全周囲の念話が届いた。ラキーガの声で。あの状態で生きている?!


と思った瞬間黒炭がひび割れて、剥げ落ちていくとラキーガが以前と変わらぬ姿で復活した。

確かに炎に弱いはずというのはラキーガの眷属だと思われる異形がそうだったからの予測に過ぎなかったけど、あれほどの炎魔法で実質無傷は想定外だ。どうする? どうすればいい?


思わず硬直して考え込んでしまった隙にグゲがラキーガに斬り込んだ。さっきまでこっちにいたはずなのにいつの間に。

一瞬でラキーガは縦横に切られて、四等分されて崩れ落ちた。斬ったグゲは軽く跳ねたように見えただけで私たちのところまで戻ってきた。


「ダメなようです、リン姫様」


え? 何がダメなの? と思った瞬間に分かった。四等分になったはずのラキーガは一つの部分から復活し、残りの三つの部分からはラキーガにそっくりだけど確実に違う、というか劣化している異形が生まれた。腕が少なかったり羽がなかったりで、どこかを欠損しているラキーガのようだ。


「タイムプリズン」

向こう側からやってきた魔将アンテリモウと思われる大型のゴリラのケンタウロスがラキーガたちに向かって使った魔法のようだ。

その魔法により足の数が少なかったラキーガだけが動きをほぼ止めた。他の三体にも同時に魔法をかけたはずだけど、効いたのはその一体だけだった様子。


四方から狙われていて動揺しているのかラキーガの動きは少ない。今度は羽の数が少ないラキーガが魔将ヴァイガンヌが放ったと思われる矢に貫かれ、動きを止めた。傍目には麻痺しつつ意識を失ったかのように見える。たぶんグゲも食らったトリニティシュートだろう。確か麻痺にマナクラッシュの効果もあったはず。状態異常やマナ枯渇は効くのか? それともこの個体だけ?


残りは本体を含め二体。二体だけど倍にはなってない程度の密度の攻撃はまたこちらに向けて来た。こっちは今度は私の影に潜り隙を伺っているべフォセットを除いた三人、レオ、グゲ、私でなんとか防ぎきった。私の魔力がフォースフィールドでいくらか減ったけど、アルゴスが散ったこの地ではパサヒアスの指輪の回復力がすごく高いので、問題ない。


攻撃してきた隙をついてか、数度爆発がラキーガ付近で起こった後、さらに大きな爆発が起こった。直後近くに十号機が下りてきて着地した。結構な勢いで着地したのであれ、絶対足関節にダメージいってるだろうなぁって感じだ。まだ特殊爆槍は二本残っているけど、もう使わないだろうね。副腕が空いているので魔法攻撃をしてくれそうだ。


先程の十号機の攻撃で残っていた頭がないように見えたラキーガは消滅して、けど隣にいたラキーガ本体は黒炭にもならず生き残っている。あとはラキーガ本体だけなんだけど、本人が言ったように何やっても死なない様子だ。


いよいよ先程思いついた手を使わないといけないか。アルゴスも癒やし、ラキーガも癒やすのに、それは結果的に相手を殺す方法となってしまうというのは、どんなに素晴らしい技術や慈愛あふれる行動でも、使い方次第で相手を害せる、ということなのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ