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変わり異なる

ラキーガはこれまでもずっと呪詛みたいに、私達や魔将、パサヒアス様にこの世界、全方位に対して恨み節としか思えないようなことをぶつぶつと言っていた。それはずっと攻撃的だったのに、先程の脱皮のあとから弱気になった様子で、なぜ自分だけが苦しまなければならないのか、みたいな感じのことを言い出した。


ラキーガの行動基準はどうやらこれのようだ。多少可哀相には思うけど許せるかといえば……。ラキーガは魔将基準だと弱いらしく、己の貧弱さと体の痛みを訴え、それをパサヒアス様のせいだと喚いていた。パサヒアス様がラキーガを作ったのだから、確かにそうかもしれない、そうとも言えるだろうけど、わざとそう生み出したとも思えない。聞いてみないと分からないけどね。


『私のせいだと言われても困る。私の属性は変異だからな。私にもどうしようもない変異が生み出した魔将にも起こりうる。私自身変異で困ることがあるのだからな』


急にパサヒアス様から自己弁護の念話が届いた。パサヒアスの指輪を使ったからかな? まあたぶんずっと見てたし聞いていたのでしょう。


パサヒアス様、聞いておられたのですね。ということはラキーガが言うことも一面の真実である、と受け取っていいのですね。あと属性とは?


『ラキーガの中ではそうなんだろうな。だが私がわざとラキーガをあのように生み出したという事実はない。属性は私たち魔王が持つ特徴、みたいなものだな。概念をそれぞれ持つのだ。私が知っている私以外の魔王には死や狂乱、矛盾や裏切りなどがおったな』


なかなかひどい概念ばかりだ、さすが魔王を自称するだけはある。変異もやっかいだねぇ。


では、ラキーガは倒してしまいますよ。たぶんこのままならいけると思うので。


『あやつの不死性は変異に因るものだが、それゆえか常時体内でも変異しておって、苦しいようだ。しかし我らに癒やしの術はないのでどうにもしてやれなかった。だから私には特にラキーガに対する遺恨はない。あやつが裏切っていたのは許せぬがな。だからラキーガがラキーガであった記憶は私の中に残しておこうと思っている。それゆえリンの声に答えたのだ。どうせ私はここに現れるからな』


そうなのですか。では私がラキーガを癒やしたらどうなるのでしょう?


『おそらくリンのやり方では死ぬだろうな。最後に見た時、やつの体の半分は異常増殖する何かに侵されておった。今見てみるともう頭以外全て侵されているように見える。頭も一部やられておるようだし。その異常を癒やしてしまうとやつの体はなくなってしまうのではないかな』


死んでしまうのか。異常増殖ってがんみたいなものなのかな? 脱皮して復活してもそれが残っているのは確かに苦しそうだ。けどその異常が通常になってしまっているんだろうな。だから死んでしまう、と。


物陰に隠れていたけど、ラキーガは執拗に私を狙っている。ベフォセットがいなかったら防ぎきれていないかもしれない。けどそれも終わりのようで、アルゴスが九号十号の攻撃によって倒されたようだ。助かった。アルゴスの目のせいで隠れられる場所がとても限定されていたけど、それがなくなったし、アルゴスが討伐されたことで、十号機がこちらに専念できるようになるし、魔将ヴァイガンヌもこちら側に専念してくれるようになった。魔将アンテリモウの姿は見えない。どこにいったんだろう?


まあこうなったら驚異はほとんどない。ラキーガ自身はそれほど強くない(けど私よりは強い)から、私には無理でも魔将ヴァイガンヌが倒してくれるかもだし、グゲやレオが来たら終わると思う。とどめは十号が来たら終わるだろうから、私は攻撃を受ける役を続けていればいいだけだ。


「ベフォセット、また貧乏くじ引かせちゃってごめんね」

自身のフォースフィールドもあるだろうけど、身を持ってベフォセットは私を守ってくれている。


「なんの。召喚者を守れるなど、魔将の誉。そもそも我ら魔将が魔王以外に召喚されること自体まれですからな」


再びラキーガに特殊爆槍が撃ち込まれた。立て続けに二発も。しかしそれでもラキーガは脱皮を繰り返して生き残る。

私はその隙を見て、隠れる場所を変える。ラキーガは襲ってくる十号機やヴァイガンヌを無視して私だけを狙ってくる。ラキーガは唯一の勝利条件が私を殺すことだと分かっているようだ。まあ例えそれが出来たとしても残った皆に殺されることは分かってると思うけど、あれだけ恨み節を垂れ流しているのなら、パサヒアス様への意趣返しになるだろうしね。


私も事情を聞いて少しだけラキーガに同情したけど、彼を倒さなければ、ここに人間が入り込めない。デバイスを全て排除するという方法もあるけど、ゴブリンだけでは膨大な時間がかかるし、一個でも残ったら危険なので現実的ではないんだよねぇ。


パサヒアス様もラキーガが裏切ったことだけに怒っているし、他の魔将はパサヒアス様の意向を無視するということはしないだろうし、やっぱり殺すしかないよね。私のこちらの世界の両親が死ぬことになった直接の実行犯はラキーガだし、私も彼を許すということは出来ないんだよねぇ。せめて苦しまずに、と思わなくもないけどラキーガの特性を考えるとそれも無理っぽいし。


「ぬう」

え? べフォセットが私をかばった。まったく予想外の位置に蟻がいて、こちらに襲いかかってきたからだ。アルゴスの足元にいた異形や蟻は、アルゴスと戦うようになったころにはほとんどいなくなっていたはずなのに、なんか増えてる?


遠くの方でこちらを囲んでいるケンタウロスが見えた。その中に魔将アンテリモウも見えたので、彼がうち漏らしていた蟻や異形をこの場に追い込んでいるようだ。一度に全部まとめてやってしまおう、ということか。その中に蟻にも負けかねない者がいるとは思っていなかったのでしょう。


異形にも気づかれた。普段なら相手にもならない敵だけど、今はそのタフさが困る。異形には炎魔法がないと無限に時間を使わされてしまう。私は炎魔法は覚えていない。使えるのはベフォセットになる。しかしラキーガの執拗な闇弾攻撃を防ぎながらはやっぱきつい。ラキーガに反撃の炎魔法を使ったりもしてるんだけど、めちゃくちゃ警戒しているせいかまだ炎魔法がラキーガに当たっていない。


また死角から蟻が襲ってきた。回避が間に合わない。フォースフィールド削られる!と思ったらグゲが滑り込んできて蟻を一太刀で真っ二つにした。


「姫様! 遅くなりました!」

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