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初めてのゴーレム起動

二つあるベッドにはどちらにも私の寝ていたベッドのように今は仮面となっているカバーが備えてあった。あーやっぱりこれ、対策だったっぽいな。文様は私のと同じようだし。仮面の予備として使えそうだ。


寝室には他に箱があったので開けてみたら、服が入っていた。普段着だろう服と、普段着にはできそうにもないやたら豪華な服だ。貴族だったって話だし、その時の服かな? 良い仕立てだしハイゴブリンなら着れるだろうから喜ばれそうだけど、誤解もされかねないよなぁ。

しばらく悩んでそのまま蓋を締めた。

誰も入れないんだし、カバーと一緒にこのままここにおいておこう。もし必要になったらまた取りに来ればいいや。


もう一つの部屋も覗いてみる。こちらには窓はないようで、どうも倉庫のようだ。木切れがたくさんと、箱が二つと樽が何個か置いてあった。

一個目の箱にはたぶん私の服と靴が入っていた。ファンタジー世界では一般的な木靴ではなくちゃんとした革で出来た靴だった。けど高そうではない。……まー革製ってだけで高いんだけどね。服はさっきの箱同様高そうな服も入ってたけど、着替えとなりそうなものや下着なども入っていた。高そうなのはともかく着替えや下着は持っていってもいいかな。


二個目の箱には操り人形と普通の人形、それと櫛が二つ入っていた。櫛は一つは豪華なもので、一つは質素なものだった。それと人形は簡素な出来だけどちゃんとした布の服を着せられているもので、操り人形は紐も操るためのところもついたままの立派なものだった。ゴブリンに髪をとくという概念はないのか、後ろから見える髪はぼさぼさだったりするし、櫛自体を見かけたことがなかったので助かる。仮面で隠してしまうからかなぁ?


樽は大きさがまちまちで小さなのから大きいのもある。大きいのから蓋を開けてみる。

中には根菜っぽいのが複数入っていた。まだ腐ってはいない。ほかはどうだろう? ……こっちは乾燥肉か。まだ食べれそうだ。

小さいやつは液体が入ってるっぽかった。匂いからしてワインとかのお酒かな。食べ物がまだいけそうなんだからお酒ならいけるよね。外に持ち出せたら持って帰れると思う。根菜はジュシュリでは食べた覚えないし、ぜひとも持って帰りたい。


思い切って樽を倒して転がそうとしてみた。大きいけどなんとかなるよね、の精神で頑張ってみた。でも無理だった。根菜入ってるから重すぎ。うーん、ブゥボだけでも入れたらなぁ、とか考えて思いついた。

基礎は習ったし、ゴーレム作ってみよう。幸いこの部屋にはたぶん薪なのだろう、木切れがたくさんおいてある。


念の為、広い最初の部屋に戻ってから開けたところに木切れを置く。本当なら接触しておいたほうがいいらしいんだけど、この足、この状況では何か起こったら取り返しがつかないかもしれないので巻き込まれないように安全に行く。

木切れに魔力を少しづつ送り込みながら教えてもらった呪文を唱える。木切れが一瞬で膨張したので焦って魔力を絞る。膨張した木切れはゆっくりと人型へ変形していく。呪文を唱えるのに必死でゴーレムの見た目を想像していなかった。


そのせいか出来上がったゴーレムは先程見た操り人形、ただし太っているというかガタイがいい、みたいな見た目になっていた。暗いせいか私の手からゴーレムへ伸びている魔力やゴーレムの中に根をはっている魔力が光って見える。


変形が終わったので頭の中で命令をしてみる。さっきの樽を持って、と。ゴーレムは猫背な感じで歩き出し、ゴーレムにとっては狭い入り口を体を斜めにしながら器用に入っていった。そして根菜が入った樽をひょいっと軽々と持ち上げる。

おおおー、このゴーレムすごい、とてもわたしが今初めて作ったとは思えない。


……このままゴーレムを外に出すとセキュリティにひっかかって戻れないかもしれない。手だけ出して樽を外に出すようにした。

外から「リン姫様?!」と狼狽えたガギやゲゴの声が聞こえた気がするけど、もう怒られるのは目に見えてるので、こっちのやりたいことをやってから戻ろう。薪以外の倉庫の荷物と、竈近くにあったおそらく調味料が入った小さな壺たち、私の着替えを持ち出してからゴーレムにのって外に出る。


興奮していたからか、ずっと立っていたからか今まで気づかなかったけど、義足を付けている部分が結構痛い。いろいろと質問してくる皆をあえて無視する形でガギとブゥボ、ガギの護衛に言う。

「申し訳ありません。ちょっと痛いのでここで義足を外します。ですので、男性の三人はしばらく離れてもらえますか?」

私自身は別に足を見られても、例え切断面であっても気にはしない。けど相手は気にするかもしれない。実際慌てて三人は離れていった。……それに危惧することもあるんだ。


ザービに手伝ってもらいながらゴーレムの腕の上で義足を外す。

……うわぁ、やっぱり。擬音でむわぁって音が出そうなぐらい、蒸れていた。さすがに蒸れた足は男性に見せたくない。

蒸れた足で動いたからか擦れて赤くなっていた。これは見るからに痛い。一部すりむいているかもしれない。

確か持ち出した着替えの中にタオルのような清潔な布が何枚かあったので、それをザービに取ってきてもらって慎重に拭う。あいててて。軽くこすっただけなのに痛い。それに熱がすごい。とりあえず冷やした方がいいとは思うんだけど、どうしよう。


そういえば小屋の方に水があったはずだ。容器は……石の建物にあったはず。私が取りに行かないといけないけど、触らなければ痛みはないので、二人に説明して、ゴーレムは入れないのでけんけんで深めのお椀? 皿をとってきた。これに水をくんできてもらう。最初ザービが汲みに行ったけど、そのまま戻ってきてゲゴと交代した。なにかあったのだろうか?

ゲゴは無事水を汲んできてくれた。しかもなぜか氷が浮いている。食器でこういうことをするのは気がひけるけど仕方がない。その氷水に布をつけて、その濡れた布を足につける。


「ひゃ……」

思わず声が出た。よっぽど熱くなっていたのか、最初は刺激を受けたけど、すぐに気持ちよくなっていった。

「ふぅー」

思わずゴーレムの手の上でリラックスしてしまう。まだ三人は心配そうに見ているのに。

「ああ、すいません、気が抜けてしまいました。もうたぶん大丈夫です。もういいですよ、ありがとうございました」

ゲゴが戻ってきた三人に事情を説明してくれる。ザービはもう一枚布を氷水にひたして交換してくれた。すでに結構冷えていたのでちゃんと冷っこく感じた。

ゲゴがガギから葉っぱを受け取って戻ってきた。男性三人はまだ近づく気はないようで、遠巻きの位置で待っている。もう蒸れてないからいいんだけどなぁ。次は乾いた布で足をきれいに拭いて湿気をなくしてからグゲが葉っぱを足に当てた。

あー、これ薬草か。怪我をしたゴブリンにも使ってたな。葉っぱを貼り付けて乾いた布で軽く縛って固定した。


そこまでしたらようやくガギは近づいてきた。

「まったく無茶をされる。正直今まで大人しかったので、こんな無茶をされる方だとは想像しておりませんでした」

おおげさに肩をすくめてみせるガギ。

「ごめんなさい。以前住んでいたところでしたので興奮してしまいました」


嘘は言っていない、ここに住んでいたはずだし。別の理由で興奮したんだけどさ。

「私は私のゴーレムに乗って帰ろうと思いますので、出来ましたら先程持ち出した荷物を持って帰りたいのですがいけますか?」

「はい、私もゴーレムを出せばいけるでしょう。これらは何なのですか?」

「着替えなどの生活用品もありますが、大部分は食料ですね。ジュシュリでは出たことがないものもありましたので、是非持ち帰ってあちらでも食べたいのです。あとそれとお酒もありました」

「ほう、酒ですか。いいですね。もちろん振る舞ってもらえるのですよね?」

ガギが仮面の奥でにやりとした気がした。

「ええ、私は飲みませんし」

飲めないことはないんだけど、この体で飲んだらどうなるか怖いし、あっちでもそれほどお酒は飲んでなかったし。車通勤だったからね。だからあえて飲みたいとは思わない。

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